表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第五部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

279/327

第276話 ◆天恵展覧武闘会5

「はぁっ!」


 試合開始の直後、【将校】飯田(いいだ)(はじめ)が全員の天恵を底上げする。

戦神(せんじん)番場(ばんば)(あつし)を皮切りに、【天騎士(てんきし)渡辺(わたなべ)(げん)、【サジタリウス】神田(かんだ)美鈴(みすず)、【大聖者(だいせいじゃ)堂本(どうもと)僚太(りょうた)、【将軍】武田(たけだ)隆堅(りゅうけん)がニヤリと笑う。

 これにより、全員の実力が第5段階近くなり、既に第5段階目である番場に至っては、日本有数、否、世界的に見ても有数の力を得る。

 しかし、【命謳】のメンバー、川奈、翔、山井はそれを見ても微動だにしない。

 それを見、不可解に思った番場と飯田が見合う。

 番場はクイと首を動かし、【将軍】武田に攻撃を促す。槍をくるりと回転させ、すんと鼻息を吐く武田。


「まったく、こんな出し物に何の意味があるのか……」


 そう呟き、武田が駆ける。

 直後、翔と山井の間、その奥に立っていた川奈が動く。


「集合っ!」


 大盾を構え、武田に対しヘイト集めを行う。

 これに対し、武田がニヤリと笑う。


(ふん、【天騎士】如きのヘイト集めで、底上げされた俺を釣る事は出来――――っ!? なっ!?)


 武田の考えとは反対に、その進路は川奈に向かう。

 川奈が立つのは翔と山井の間。

 左を見れば――鬼。


「おう、こら……シカトぶっこいてんじゃねーゾ?」


 右を見れば――鬼。


「かぁ~~~……お主、センスないのう~」


 翔と山井は川奈に向かう武田を通す訳もなく、ただただ拳と双剣を振りかぶり、


「「ぶっ飛べ……!」」


 殴り、斬った。


「っ!?!?」


 武田が吹き飛んだ先には、観客席を守る強化ガラス。ドコンと重く鈍い音の後、(ひび)が入るガラスに、全観客が沈黙する。


『こ……これは一体……!?』


 御剣の動揺の声の後、


『武田選手、失神KOです』


 荒神が司会代理を務めた。

 瞬間、どっと()く観客たち。


「「うぉおおおおおおっ!! すげぇえええええ!!」」

「はっ!? 今何が起こったんっ!?」

「しょぉおおおおおおおおっ!!」

「たっくぅううううううううんっ!!」

「ららちゃんだろ!? 今のららちゃん起点だろ!?」


 口を真っ直ぐ結ぶ番場が山井を睨む。


「ほっほっほ、おー怖い怖い……何と恐ろしき目か……」

「ガン付けたところで、てめーらの人数はもう6人にはならねーんだよ。無防備に突っ込むとかアホだろ、お?」


 翔の無防備という言葉に、【将校】飯田が反応する。


「今、何をしたんすかね(、、、、、、)?」


 その口調に玖命がピクリと反応を見せる。

 そんな飯田の言葉に、翔が小指で耳をほじる。


「あぁ? 何がだよ?」

「武田さんは、そこの【天騎士】に釣られないと確信して突っ込んだんす。決して無防備に突っ込んだ訳じゃないっすよ?」


 事実、武田は小手調べのつもりで翔、山井に仕掛けるつもりだった。それが川奈のヘイト集めに釣られてしまった。たとえ玖命が【将校】の天恵を持っていようとも、武田はそれを受け付けるはずがないと踏んで動いていた。

 後方にいる【サジタリウス】神田も武田の動きに合わせ、動こうとしていた。それが、最初から潰された。

 会場にいる誰もがそれを不可解に思っていた。

 無論、【命謳】メンバーを除き。


「ふむ、それを懇切(こんせつ)丁寧(ていねい)に教えてやる程、(わし)らが愚かとも思っておるまい?」


 山井の言葉を聞き、飯田も不快を露わにし、舌打ちしながらも口を(つぐ)む。


「……パワーアップ!」


【大聖者】堂本が杖を掲げる。

 魔力を温存するという選択肢が【インサニア】から無くなった瞬間だった。


「くっ!」


 直後、【サジタリウス】神田が素早く弓を放った。

 3発の矢は風を切り、音を超える。

 1、2発目の矢は山井が捌き、3発目を跳んでかわす。それが後方の川奈に向かうも、難なく大盾でカバー。

 その間、【天騎士】渡辺が動く。


「カァッ!!」


 渡辺のヘイト集め、弱体化も、翔と山井は涼しい顔である。


「こんなもん――」

「――屁でもないわ!」


 翔と山井が駆け、飯田へと向かう。

 そう、この試合において、鍵となるのが【将校】飯田(いいだ)はじめである。

【将校】は自身の天恵能力の底上げをする事は出来ない。従って、この試合の中で唯一第4段階目と言い切れるのが飯田である。

 そして、飯田を倒す事さえ出来れば、【インサニア】の実力アップを止められる。(すなわ)ち、番場をただの第5段階、他の3人をただの第4段階にする事が可能なのだ。

 だからこそ、翔と山井は、飯田に向かって真っ直ぐ駆けたのだ。


「くっ!」


【天騎士】渡辺が翔の前に立つも、


「しゃらくせぇっ!!!!」


 その大盾を強引に殴り、渡辺を吹き飛ばす。


「ぐお!? ば、馬鹿な!?」


 ミスリルクラスの大盾がひしゃげ、尚且つ吹き飛ばされる大男の渡辺。翔の拳にどれだけの威力があるのか、誰も理解出来ずにいた。


「ちょ、ちょっと!?」


 渡辺の巨体をかわし、【サジタリウス】神田がかがみながらも2発の矢を放つ。


「カァアアアアッ!」


 山井は小さく飛び跳ね、1発の矢をガチンと噛んで止めた。


「嘘でしょ!?」


 2発目の矢を、山井の双剣で弾き、


「アタックじゃ……!」


 神田へと跳ね返す。

 神田はこれを仰け反ってかわし、追撃して仕掛ける山井の剣を受けようと弓を正面に出す。

 しかし――、


「やはり、積み上げてない分……甘いのう」


 山井が振り上げた剣はブラフ。

 最初の剣を追うように迫った剣が狙う先は、神田が構えた弓――その弦にあった。


「ふんっ!」


 弦は弾けるように斬れ、武器破壊を成す。

 尚も追撃を仕掛けるも、【大聖者】堂本が回復させた【天騎士】渡辺が走りながらこれを止める。


「うぉおおおおおっ!」

「カ、カカカッ!!」


 助走をつけて受けたにも関わらず、渡辺の大盾は山井に押されてしまう。再び渡辺が弾かれた時、山井の視界の中で一番近くにいたのは神田ではなく、【大聖者】堂本だった。


回復役(ヒーラー)潰しは団体戦の鉄板……!」


 ぎらりと山井の視線が堂本に向かうも、その視線を塞ぐ男が降り立つ。

 試合場の床を打ち抜くその威力に、会場がどよめく。

 山井は正面に立つ男を見、ニヤリと笑う。


「何じゃ、もう出て来よったか……番場ぁ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ