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第265話 天才派遣所統括所長【荒神薫】2

 東京都中央区に存在する天才派遣所の統括本部賢日本支部。

 300mを超える超高層ビルを見上げ、俺は周囲の声を背に、立ち尽くしている。


「あれ……伊達じゃね?」

「何でこんなところにいるんだ?」

「派遣所の本部なんて、滅多に来るもんじゃないだろ?」

「いやいや、一応1階には派遣所設備もあるけど……依頼の受注は出来たっけ?」

「え、ここで伊達が出張(でば)るクラスのモンスターが出たって事?」

「それならニュースになってるし、伊達もあんなところで突っ立ってないだろ」

「あぁ、今スマホで調べたらやっぱり受注出来ないみたい」

「だとしたら……呼び出し?」

「もしかして、荒神に呼ばれた感じ?」

「伊達、やらかしたな……」

「お説教かー……可哀想……」


 そんな憐れみの声を背負い、俺は緊張しながらも歩を進める。

 KWN本部よりは高くないビルだが、やはり天才派遣所の日本支部なだけあって、かなり頑丈に造ってある。

 Aランクモンスターが群れでやって来たとしても、多少の籠城は出来るだろう。

 まぁ、それでもモンスターパレード相手には前に出るしかないのが現状だ。

 とはいえ、KWN重工の武器の件もある。

 今後は戦闘も変わっていくのかもしれない。

 たっくんが荒神さんへ相談に行き、川奈氏が【命謳】に対してKWN重工で最新の銃器を見せる。

 おそらく、そのタイミングを見計らって、荒神さんも電話してきたはずだ。

 なら、今日の話とは、今後の天才たちの行く末。

 日本での、天才と一般人の共生をどうしていくべきか。

 そんな相談………………………………俺に来るか?


 1階自動ドアを抜け、受付に話し、エレベーターに向かう。

 地上60階まで上がるのだが……止まらないエレベーターに2分近く乗る非日常に、俺は深く溜め息を吐いた。

 扉が開くと、まず見えたのは左右に二ヶ所、計四ヶ所の待合室。

 ……一体誰を待たせているというのか。

 いや、人の気配がする。

 どうやら待ってる人がいるようだが……?

 受付では『そのまま統括所長室に入ってください』って言われてるから……入って……いいんだよな?

 俺はノックをし、中から返事を待つ。

 すると、俺のノック音に反応したのは、中からではなかった。

 いや、中からではあるのだが、先に反応を見せたのは、「待合室1」とドアプレートに書かれたドアだった。

 待合室1から覗いた顔――どこかで見た顔だ。

 確か【中峰(なかみね)】っていう【防衛大臣(、、、、)】じゃないか? ニュースでよく冷や汗をかいて光るオデコをハンカチで拭ってる人だ。


「……どうも」

「どうも……」


 見合って数秒。パタンと閉じるドア。

 ……え、防衛大臣!?

 俺はようやく今起こった出来事に処理が追いつき、バッともう一度待合室1を見る。

 しかし、そこはしんとしており、ドアが開く様子もない。

 俺が開けよう事も出来ない……もしかして今のは白昼夢だったのではないか?

 そう思いながら統括所長室のドアからの反応を待つ。

 ……しばらくすると、それは自動で開閉した。

 これは入室を許されたという事でいいのだろう。

 俺は失礼のないよう慎重に歩を進める。

 すると――、


「あぁ!?」

「ひっ!?」


 そこには鳴神翔に負けずとも劣らぬ覇気を持った女性が立っていた。

 眼光鋭く、たっくんと同じ(よわい)78とは思えぬ若々しさ。しかし、その横顔はそれ以上に凛々しく、現役の高ランカーたちと遜色ない強烈なオーラ。テレビや動画だけでしか知らない【荒神(あらがみ)(かおる)】。

 ………………が、何故か【命謳】Tシャツを着ながら電話している。


「冗談じゃない! 番場にSSS(トリプル)なんて与えられるはずがないだろう!」


 今、とんでもない会話を聞いているような気がする。


「なーにが海外からの圧力だってんだい! どう考えてもアノ国(、、、)しかないじゃないかっ! そりゃ実力は十分だろうさ? でもね? 中身がなきゃダメだろう! 日本の頭は馬鹿だって世界に証明したいなら止めはしないけどね! はぁ!? 【WGC(、、、)】に越田と共に連れてく? ないないないない! ありえないから!」


 今、WGCって言ったか?

 それって3年おきにやってる【World(ワールド) Genius(ジーニアス) Congress(コングレス)】の事だろうか?

【世界天才会議】――読んで字の如く、天才たちが世界情勢を憂い、各国との連携、情報交換を目的とした会議を行う場である。

 略した文字「天会」を揶揄(やゆ)して、通称【天界(てんかい)】と呼ばれている。

 何故、揶揄されるのかと言うと……、


「会議にはね、乱闘要員(、、、、)は連れて行かないんだよ!」


 まぁ、荒神さんの言葉が事実(すべて)である。

 以前、越田さんが言っていたアレ。


 ――SSS(トリプル)でなければ発言さえ許されぬ場があるのも事実だ。


 アレが【天界】の事である。

 発言の度に一触即発。

 SS(ダブル)が発言しようものなら、「|You shut up《お前は黙ってろ》」の嵐。

 昔はわからなかったけど、現場では殺気やらプレッシャーやらが飛び交ってたんだろうな。


「私はね、品性を持っていきたいんだよ、あの場に! 番場がテーブルを殴り、椅子を蹴る度に私に請求書が届く結末なんて御免だよ!」


 それにしても、荒神さんは一体誰と話してるんだろう。


「説得のために【中峰】を寄越したんだろうけど、おあいにくさまだね!」


 ここで防衛大臣が出てくるのか。

 いや、防衛大臣を寄越せるって…………何だ? 誰だ?


「だから伊達(、、)なんでしょうが!」


 今の話の流れで、俺の名前が出てくる要素、あったか?


「個人戦優勝? 上等よ! 後でほえ面かくんじゃないよ、バカ総理っ!」


 そう言って、荒神さんはガシャンと電話を切った。ていうか、今、総理って言った?

 そして、椅子をくるりと回転させ、俺の正面に顔を見せてくれた。


「初めまして、荒神薫です」


 さっきまでの怒りはどこへやら。

 そこには、満面の笑みを浮かべた荒神さんがおられました。

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