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第256話 私立八王大学2

「番場にフォローされたぁ!?」

「玖命、見せるのじゃ」


 俺が翔とたっくんにスマホを見せると、2人とも険しい表情を見せた。


「どういうつもりだ、番場の奴ぁ?」

「ふむ……玖命のファン、というのは早計だのう」


 早計というか、暴論に近い気がする。

 まぁ俺も、番場が命謳に近付きたいのかと思ったが、流石にそれはないと思い直した。


「うーん、やっぱり伊達さんの動向を把握しておきたい……といったところでしょうか」


 川奈さんの私見が一番しっくりくる。


「んま、そういう事なら(ヘッド)は身の回りで起きた事をあんまり投稿しねー方がいいかもな」

「それは命謳の皆に言える事だと思うんだけど……?」


 俺がそう言うと、たっくんがそれを否定するような発言をした。


「であれば、番場は我々にもアプローチをしてくるはず。そうしないという事は……目的は玖命一人……という事になるのう」

「んま、今後はさっきのセンパイみてーな事は避けるべきだろうなぁ?」


 流し目でニヤリとした表情の翔に、たっくんがギクリと反応する。


「こ、こほん! Aポイントクリアじゃ! なっつん、これよりBポイントの警備に移るぞい!」

『了解。カメラの確認は完了。Bポイントに到着したらまた連絡よろしく』


 無線式のイヤホンから四条さんの声が聞こえる。

 やっぱり、四条さんって万能だよなぁ。

 それでも彼女は『鑑定課にいる頃よりずっと楽だ』と言っている。

 これは、鑑定課が過酷……なのではなく、息がつまる空間だったという事だろう。会った頃は今よりキツイ表情だったような気がする。

 そう思うと、やはり進路を雁字搦(がんじがら)めにするという行為は、【はぐれ】を生む可能性があるのではないか、と考えてしまう。

【はぐれ】……か。

【インサニア】が【はぐれ】の加入を許しているという情報は、少しずつ広まっている。しかし、どれも決定的ではなく、新たに【インサニア】に所属紹介されているメンバーの中には、かつて戦った(せん)(はん)の名前はなかった。

【将校】と紹介されていた男の写真もソレではなく、相田さんも、鑑定課にいた四条さんも見た事のない天才ばかり。

 本当に【はぐれ】なのかもわからない状態である。


「山井さん」

「何じゃ、玖命?」

「【インサニア】に新たに所属した天才って、本当に元【はぐれ】なんですかね?」

「……ふむ、それを証明する手立てはないのが実情じゃのう。確かに、儂が所属していた頃は、番場が方針を決めた頃だった。実績もない天才がランクに見合わぬ実力を持ち、クランの中で発言権を有する異常事態。儂はそれを止める立場にあった。が、結果は皆の知っての通り。番場は『素性の知れない者も率先して序列に加える』と明言した。儂が知ってるのはそこまでじゃのう」


 そう、たっくんはそれ以上の情報を持っていない。

 だが、たっくんの次の発言は、俺たちに別の可能性を見せてくれたのだ。


「過去天恵を発現していたのであれば、天才派遣所に登録があるはず。しかし、新たに【インサニア】に加入したメンバーは、どれも該当者がいない。ならば、どうやってそれをすり抜けた(、、、、、)のか。それを考えるのが一番手っ取り早いかもしれんのう」

「……すり抜けた?」

「流石にあれだけの未登録者を派遣所が見逃すはずがあるまいよ。ならば、見られても問題のない方法をとったと考えるのが自然じゃろう?」


 そう言われ、俺の脳裏にとある仮説が(よぎ)った。

 そしてそれは、川奈さんも辿り着いていたのだ。


「整形手術……?」


 川奈さんの言葉に、たっくんが頷く。


「うむ、昨今の整形技術は日進月歩(にっしんげっぽ)。顔を変える事は容易じゃろうな」

「でも、名前はどーなんだよ?」


 翔が疑問をあげる。


「戸籍を買った、とかですか?」


 川奈さんの言葉に、たっくんが首を横に振る。


「買うだけならば、鑑定課の目は誤魔化せん。ただでさえ、玖命の特訓で【魔眼】揃いなんじゃぞ?」


 そうでないのであれば、


「これまでの戸籍を破棄し、新たな戸籍を作る……か」


 俺の言葉に、たっくんが一つ間を開けて話す。


「……であれば、派遣所をも騙す事が出来る。やるのう玖命」

「どういうこった?」


 翔の疑問に、俺は答えた。


「天才にも当然戸籍が存在する。だから、その戸籍情報を元に、天才派遣所に名前が登録される。だけど、戸籍の元データを削除すれば、その天才は存在しなかった事になる。そして、新たに戸籍を付与すれば――」

「――整形で手に入れた新たな顔と、新たな名前で天才として再登録出来るっつー訳か」

「で、でも【鑑定】で名前がバレちゃうんじゃ!?」


 そんな川奈さんの疑問に、無線式イヤホンから声が届く。


『【鑑定】は戸籍情報を元に名前を表示している。だろ、きゅーめー?』

「ちゃんと論文で発表されていて、確認もとれてます……ね」


 四条さんの言葉、俺の補足に川奈さんが困惑を露わにする。


「そんな……」


 おかしな事なのは重々承知だ。

 天恵という現実離れした能力が、戸籍情報を参照している事実。たっくんの弟、山井意織(いおり)さんが以前言っていた言葉。


 ――だから我々は、天恵を与える者が……この世界のどこかにいると見ている。


 その言葉が、一気に現実味を帯びてきた。

 だが、この仮説が事実であるならば、厄介な問題が出て来る。

 それに気付いたであろうたっくんが、俺を見ながら言う。


「となれば、国ぐるみで【はぐれ】を操る存在……その可能性が出て来たのう……玖命?」


 当然それは、日本とは限らない訳だ。

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