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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第五部

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第251話 ◆朝まで伊達玖命!

「米原さん……4番なんですってね」


 最初に口火を切ったのは相田だった。

 米原は相田には答えず、四条に目をやった。


「因みに、1番と2番は?」

「きゅーめーの親父さんと妹さんだよ」

「そうでしたか、まさかこんなところで伊達さんの同好会を開けるとは思いませんでした」


 そう言って、米原はワインを置いた。

 そして、牽制するかのように相田に言ったのだ。


「まさか……3番が勝者だとでも仰るつもりですか、相田さん?」

「そんな事は言ってません。ただ伊達くんを誘うのであれば(すじ)を通して欲しいと思います」

「筋とは?」

「伊達くんの弱みに付け込むような誘い方は、ファンとしてどうなんですか?」


 強い視線と意思、更には思ってもみない相田の台詞に、言葉に詰まってしまう米原。


「確かに、多少強引だったやもしれません。では、後程伊達さんに謝罪の連絡を入れておきましょう」

「ありがとうございます」

「ただ――」

「――ただ、何でしょう?」

「あなた方に謝罪する筋合いはない……という事でよろしいですね?」

「結構です」


 相田がそう言った後、米原は店員を呼んだ。

 そして、グラスを3つ、ぶどうジュースのボトルを頼んだ。


「……折角の同好会です、交流を深めるのも悪くないでしょう?」


 すぐに戻って来た店員によって、相田の前にワインが注がれ、川奈、四条の前にぶどうジュースが注がれる。


「伊達さんに」


 呟くように言って、ワイングラスを掲げる米原だったが、それに続く者はいない。

 くすりと笑い余裕を見せる米原が次に見たのは、四条だった。


「まさか9番を四条さんが射止めていたとは思いませんでした。『今日の玖命スレ』で9番は誰なのか噂になってたんですよ?」

「はっ、きゅーめーなんだから9番とらなくちゃダメだろ? シャレみたいなものだろう?」

「ふふふ、川奈さんと取引でもされたんです?」

「むっ!?」


 そう言われ、川奈と四条が見合う。


「0番と9番の取り合いですか。ふふふふ、微笑ましいですね」

「メ、メンバー権限みたいなものですからっ!」

「勿論、それを追及するつもりも、羨むつもりもありません。ですが、メンバー権限を行使されるのでしたら、当然、代表の伊達さんはそれをご存知なのでしょう?」


 その言葉に、川奈と四条が視線を逸らす。


「あらあら、それではメンバー権限の濫用(らんよう)というものではありませんか? そこは……筋を通して(、、、、、)頂かないと(、、、、、)


 ぐうの音も出ない2人。

 仕方なしと諦めたように四条がグラスを持つ。


「きゅ、きゅーめーにっ!」


 そう言って一気にぶどうジュースを呑み干す。

 米原の圧力、弁論に負けた四条は乾杯をもって皆に完敗を伝える。

 仏頂面の四条が、メニュー表を見始めた後、川奈が動いた。


「さっき伊達さんに聞きましたけど、【ポ()ット】の東京支部を作るというのは本当ですか?」


 その問いに、相田の眼鏡が光る。


「えぇ、伊達さんに契約ビル、及び近隣での支部設立を了承して頂きました」

「そこの支部にはどなたが(、、、、)いらっしゃる予定で?」

「ふふふ、いくら【命謳】の川奈さんとて、そこはまだ内部情報。バレて問題こそありませんが、バラす必要もないかと」

「むぅ……確かに。で、でも、一つだけ確認させてください」

「お答え出来る事であれば」

「米原さんは、いらっしゃるのですか?」


 ピンポイントの川奈の質問。

 これに米原はワインを一口呑み、静かに微笑んだ。


「勿論、不備があっては困りますからね。視察はさせて頂く予定です。支部設立後……落ち着くまでは(、、、、、、、)


 その期限の見えない言いぶりに、ガクリと肩を落とした川奈。


「ぐぅ……」


 自身の前にあるワインを手に取り、四条と同じく掲げる。


「だ、伊達さんに……」


 抜け目ない米原の行動、弁論に、川奈も完敗する。

 米原の視線がようやく正面に戻る。

 そう、残った会員は天才派遣所八王子支部職員――相田好。

 微笑を浮かべる米原に対し、相田は表情を崩さない。

 米原のプランが決まり、口を開こうとした瞬間、相田が機先(きせん)を制すかのように、正面(よねはら)に向けてスマホを見せた。

 直後、米原は目を見開く。

 スチャと眼鏡を上げる相田が補足するように言う。


「この写真に写ってる3人……私の左右で笑って写ってらっしゃるのが……伊達(だて)一心(いっしん)さんと(みこと)さんです」

「なっ!?」


 写真は相田の機転により、相田以外はぼかし加工が施されている。しかし、米原は理解した。それがホンモノであると。


「伊達くんに撮ってもらいました」

「馬鹿なっ!?」


 立ち上がる米原、驚く川奈と四条。

 相田は驚いた2人目を見やり、落ち着いた声で言った。


「武器があるというのに戦わない。果たしてそれは天才と言えるのでしょうか?」


 そんな激励ともとれる相田の言葉に、川奈、四条の目に光が灯る。

 2人はスマホを操作し、米原に見せつけるように言う。


「初任務で疲れて寝ちゃった時の伊達さんの寝顔ですっ!」

「何て純粋な寝顔っ!?」


 裏返る米原の声。


「風呂上りのきゅーめーと親父さんだ!」


 写真に写る玖命とぼかし加工された一心(いっしん)


「お風呂上りっ!?」


 興奮して四条のスマホを覗き込む米原。

 興奮し、血走った目を見せるも、米原はまだ冷静さを保っていた。


(明らかに言い負かしたはず、戦意を失ったはず……でも、この相田好は、兵を鼓舞し、戦場へ舞い戻らせた……! しかも、あの表情……手札(カード)はまだこれだけじゃない。そう言わんとするあの表情! …………強い!)


 そんな米原の視線など意に介す様子もなく、相田は足を組みかえ、余裕をもってワイングラスを掲げる。


「伊達くんに……」


 微笑み、勝利の美酒を味わうかのように、米原の前に座るその風格は……米原をもってしても勝ちえぬ別格の存在だった。

 ガクリと肩を落とした米原が……、


(今はまだ……勝てない)


 ワイングラスを掲げる。


「……参りました、完敗(、、)です」


 その日以降、4人のスマホのパスコードロック番号が「3・4・0・9」になった。

 それは、定期的に繰り返される同好会の後、幾度も番号が入れ替わる序列の順番である事を……伊達玖命は、一生知らないのだった。

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