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第211話 ◆月刊Newbie4

(ちょっと待って!? 嘘、この子、今何て言った? あの【剣皇】水谷(みずたに)結莉(ゆり)を倒したって? そんな嘘……私に言えばすぐにバレるはず。だけど……)


 御剣(みつるぎ)麻衣(まい)が玖命の奥に控える四人を見る。


(嘘を言ってる顔じゃない。というか、鳴神のドヤ顔が(しゃく)(さわ)る)

「一応、水谷さんに許可は貰ったんですが、(おおやけ)って話だとまだ許可は頂いてないので、もし記事にしたいのであれば、そちらで水谷さんに確認してください」

「か、かしこまりました……そ、それでは録音を再開しますね」


 そう言いながらも、御剣の手は震えていた。


(とんでもないスクープだわ。KWNとの癒着とかどうでもよくなるくらい……【命謳】の伊達玖命。あの【無恵(むけい)の秀才】がそれ程の実力だなんて。確かに、あの姫天の動画でSS(ダブル)近い実力があるってのは知ってたけど……彼はまだCランクになったばかりよ……?)


 驚きと焦りを浮かべる御剣を見て、翔と山井が言う。


「呑まれたな、カカカカッ」

「ほっほっほ、玖命が呑んだとも言える」


 そんな二人を呆れた目で見る四条棗。


(呑んだとしても、今回は月刊Newbieが主導権を握ってるからな。きゅーめーが捌き切れないと、一気に悪評に変わっちゃうしなー。かといってこちらから援護は難しいし……ららは……)


 ちらりと隣に立つ川奈を見る四条。


「ふぅ~……ふぅ~……伊達さん頑張って……!」

(……ま、癒着だ何だ言われてるららが我慢してるんだし、ここは様子見しかないかー)


 そんな中、御剣の質問が続く。


「では、次の質問ですが、先日の姫天に上がった動画の件ですが、あの動画にはそちらの鳴神さんと川奈さんが映ってました。モザイク加工された天才は伊達さんという事でよろしいでしょうか?」

「まぁ、隠してもしょうがない事ですし、もう周知の事実なので……」

「本人だと?」

「はい、そうです」

「ありがとうございます。あの当時からクランを?」

「いえ、あの直後にクランを創ろうと決めました」

「そうですか。では、生ける伝説とまで言われた山井拓人氏との繋がりについて伺いたいのですが」

「以前、立川で起きたモンスターパレードで、山井さんに剣を貸してもらったんです」

「剣を……ですか?」

「プライベートだったので、武器を携行してなかったもので……ははは」

「そういう事でしたか。山井氏とはそこで交友を深めたと?」

「そうなりますかね?」


 玖命がちらりと山井を見る。

 山井は頷くだけで、それ以外の反応を見せようとはしない。


(あの人たち、インタビューは完全に俺に任せる気だな?)


 玖命は呆れながら御剣に視線を戻す。


「では、山井氏をインサニアから引き抜いたという噂は?」

「あぁ、あれは両方嘘吐きでして」

「両方……ですか?」


 目を丸くする御剣。


「元々、インサニアの番場さんと山井さんの意見が割れて、その意見を貫くため、一騎討ちの勝負でどちらにするか決めるという話でして」

「はぁ……」

「それで山井さんが負けて、仕方なくインサニアを脱退したんです」

「ご自分で……?」


 御剣が聞きながら山井を見る。

 山井はそっぽを向き、目を瞑るばかり。


(本当だ……。えぇ? それじゃインサニアも嘘を?)

「それで、インサニアが引き抜きって嘘を言うので、山井さんが怒って見栄を張ったというか、嘘を吐いたというか……ははは。すみません」

(この子、正気? これ記事にしたらインサニアにも喧嘩売った事になるんだけど、大丈夫なの?)


 御剣はまた確認するように玖命以外を見る。


(鳴神のドヤ顔はともかく、川奈さんも山井さんも四条さんもうんうん頷いているし……え、本当に記事にしていいの?)

「あ、でもこれってインサニアの嘘を暴露したって事になりますかね? そうだとしたらまずいかもしれませんっ……あはは、これはオフレコのがいいんですかね?」

「えっと……わ、私に聞かれても……」


 言いながら、御剣が困惑する。


(天然入ってない、この子?)

「まぁ、でも、そうなったらそうなったで仕方ないかなとも思ってますんで、そのままでもいいかもしれません」

(…………この子、中々読めないわね? でも、こういう子の方が……筆が乗るってものよね)


 くすりと笑い、御剣はようやくクランの生い立ちに触れ始めた。

 これまでに仕掛けられたような、御剣の鋭い質問は鳴りを潜め、その後も淡々と質問を投げかけられる。

 玖命は落ち着いてそれらを応対し、丁寧に説明した。

 全ての質問が終わる頃、御剣の玖命を見る目は明らかに変わっていた。


(この子……面白い。【大いなる鐘】の越田さんとは違った魅力を持ってる。豪胆かと思えば誠実で、抜けてるようで、外す事はない。しっかり私たちの目的も理解して準備してきてる。水谷さんに許可を貰うなんて、私の質問を想定していないと答えられないし、それ以上の立ち回りを予測してるみたい)

「それじゃあバストアップから写真撮らせてもらいますねー」


 堀田が写真を撮り始め、やがて全員分のバストアップ写真を撮り終える。


「それじゃあ、最後に全員の集合写真を撮りましょう」


 そう言って、堀田は玖命をレンタルスペースの椅子に座らせる。


「こ、ここでいいですか?」

「いいですね、伊達さんは足を組んで頂いて、膝の上で手も組んじゃいましょうか」

「こ、こうです?」

「はい、バッチリでーす。それじゃ女性のお二人は……」


 堀田が言いかけると、川奈と四条が玖命の左右を陣取る。


「こうですね!」

「こ、こうか……?」


 玖命が座る背もたれに、右(ひじ)を置き玖命の左に立つ川奈と、左肘を置き玖命の右に立つ四条。


「お、おっけーでーす……凄い絵だな、こりゃ」


 玖命を囲う美少女二人に、カメラマン堀田が唸る。


「俺様はここだろ」


 言いながら、翔が四条の前に立ち、堀田(カメラ)に背を向けて座る。勿論、蹲踞(そんきょ)スタイルで。


「わお……わお……」


【命謳】と【特攻隊長】の文字に負けない右側の3人の構図。

 レンズ越しにそれを見る堀田の顔が興奮に包まれる。


「なら(わし)は左かな」


 山井拓人が川奈の前に立ち二本の剣を抜く。


「何だこれ……何だこれ……!」


 困惑しながらも笑顔を作る玖命を前に、御剣が苦笑する。


(タイトルは……『最強のガーディアンと、美少女を(はべ)らせた魔王』ってところかしら?)

「それじゃあいきまーす」


 堀田が全体写真のシャッターを押すその瞬間、異変が起こった。

 スピーカーから届くサイレンという異音が、レンタルルームに鳴り響いたのだった。

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