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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第四部

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第200話 【命謳】始動2

 天才派遣所の仕事は、実はそんなに多くない。

 勿論、それは高ランクの依頼に限った話である。

 中堅どころと呼ばれるのはD~Cランク。

 Bランク以上の依頼は、ほぼ高ランクと呼ばれるものである。

 だから、今俺が受けられるCランクの仕事は、その日一件受けられるか否かといった件数しか、派遣所に回ってこない。

 理由としては、やはり高ランクのモンスターが(ポータル)の外に出て来る可能性が低いという事が挙がる。

 何故なら、(ポータル)は発見されればすぐにダンジョン破壊され、消滅するし、高ランクのモンスターが発見されれば、すぐに強化巡回任務が始まり、(ポータル)の早期発見が急務となるからだ。

 そして発見された(ポータル)は、高ランクの天才によって閉じられる。

 これまで俺は、イレギュラーな経験ばかりしてきた。ゴブリンジェネラル、エティン、大災害、北海道武器工場のオーガ。Cランクモンスターとダンジョン外で出会った事など、数えればそれくらいなのだ。

 いざ探そうと思って高ランクモンスターを見つけられれば苦労はしない。


「相田さんから紹介された仕事……強化巡回でしたね」


 川奈さんは、相田さんに渡された詳細ポイントが記された地図を片手に言った。

 そう、昨日発見されたBランクモンスター……リザードナイト。

 それが倒され、強化巡回の任務が派遣所に回って来たのだ。

 意気揚々と派遣所に行った翔とたっくんだったが、依頼内容を聞いて物凄く落ち込んでいる。


(シングル)の俺様が強化巡回たーなぁ……はぁ」

「『出来れば討伐依頼であるとありがたい』とか……儂、恥ずかしい」


 先程の俺を見ているようだ。

 二人ともがっくりと肩を落としながら、俺たちの後に付いて来る。

 彼らの心がこうも上下に激しいと、クランの活動に影響が出るのではないだろうか。

 そう思うも、


「センパイ、強化巡回で(ポータル)が見つかったら、俺様たちが喰っていいんだろ?」

「無論じゃ、罰則金払ってでも(もぐ)るべきじゃ」


 すぐにその考えは払拭された。


「伊達さん、そうなんですか?」

「え、あぁうん。(ポータル)発見時、派遣所には報告するんだけど、色々手続きした上で侵入するってチームは稀ですね。指示を無視した場合の罰則金は100万円。それが信頼に響く事なんてないも同義だから、寧ろ、派遣所もダンジョン破壊出来るならして欲しいってスタンスだって聞いた事があるような?」


 そこまで言うと、派遣所と付き合いの長いたっくんが教えてくれた。


「左様。昔のなごりを、良い意味でも悪い意味でも残しているようじゃな」

「なごり……ですか?」


 川奈さんが聞くと、たっくんがその詳細を教えてくれた。


「【大厄災(だいやくさい)】が起きた直後は、派遣所なんてものはなかった。だから、(ポータル)を見つければ、我先にと天才たちが(ポータル)に入って行った。無論、危険は付き物。ダンジョン内で食い殺される天才もおれば、その全てを喰らって成長を続けた天才もおる。何とか天才派遣所が設立し、ダンジョンの侵入制限を構築するも、やはりそれを守る天才なんぞ稀だった。中には危険を冒してでも得られる魔石が潤沢にある、罰則金を軽く凌駕してしまう程の収入が目の前にある。ダンジョン侵入してしまうのは必然と言えた」

「へぇ、罰則金を上げるという対策は出来なかったんですか?」

「一時は上げたんじゃよ」

「え、そうなんですかっ?」

「じゃが、その期間、【はぐれ】になる天才が増えるというデータが出てしまっての」

「「あー…………」」


 俺と川奈さんは同じタイミングで納得してしまった。


「苦肉の策なんじゃよ。破っても破られても互いが折り合いのつく金額。それが罰則金100万という事じゃ。今の今も、この規定は薫ちゃんが守ってるんじゃ」

「薫ちゃんって……誰ですか?」


 と、川奈さんが聞く。

 その意味がわからなかったのか、たっくんが首を傾げる。

 あぁ、こういうのも俺の仕事なのだろうか。

 仕方ないと思いつつ、俺は川奈さんに説明する。


「統括所長の荒神(あらがみ)(かおる)さんでしょう」

「おー、確かに薫ちゃんです」


 得心した様子の川奈さん。

 そりゃ、統括所長をそんな風に呼べる人間は限られてるしなぁ。

 生きる伝説――山井拓人。そんな人が、【命謳(ウチ)】のメンバーになるんだもんなぁ。世の中って本当によくわからない。


「あれ? ところで翔さんは?」


 川奈さんが周囲を見渡す。


「あぁ、翔なら、たっくんが『無論じゃ』って言ったあたりから、消えてますよ」

「今はあのビルの上じゃな」


 太陽の中に、確かに翔と(おぼ)しきシルエットが見える。


「悪人にしか見えませんね」

「時刻が夜なら狼男か」

「いんや、それでいいじゃろ。後輩は孤高の一匹狼なんじゃろ?」


 なるほど、確かに高いところにいるな。


「あ、跳びました」

「飛び下りましたね」

「悲鳴が聞こえるのう」


 川奈さん、俺、たっくんは、翔が着地すると同時、その笑みに目を丸くした。


「どうやら……」

「あれは……」

「ほっほっほ、見つけたようじゃの」


 まさか強化巡回始めて早々に(ポータル)を見つけるなんて、誰が想像出来ただろうか。

 とはいえ、人生初めての自分のクランでのダンジョン侵入……頑張らなくては。


「えぇっ!? 私、外で待ってるんですかぁ?」


 と、唯一ダンジョンに入れないDランクの川奈さんが、言いましたとさ。

祝、200話突破٩( ᐛ )( ᐖ )۶


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