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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第四部

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第192話 一方その頃

『やったやった! 伊達さんの勝ちですぅー!』


【剣皇】水谷(みずたに)結莉(ゆり)が倒れ、喜びの舞いを踊る川奈さん。

 その隣で目を丸くしている川奈氏の声がスピーカーから届く。


『な、何という事だ……! まさかこれ程とは……!?』


 どうやら、及第点……いや、合格点以上の結果は出せたようだ。


『お父さん!? 【命謳(めいおう)】の代表なんだからね!? 凄いに決まってるじゃん!』


 川奈さんが言い張るも、


『いや、出来たばかりのクランだし……伊達君はCランクだし……』


 俺も川奈氏の感想に同感である。

 出来たばかりのCランクが代表のクランなんて、ほとんど見向きされない。KWN(カウン)の社長が目に留めてくれただけでも奇跡に近いのだ。

 まぁ、奇跡(それ)を具現化するクランメンバーが【命謳(ウチ)】にいたのは完全な偶然に近いんだけどな。


『いつもお父さんが「物事は本質で見、判断するように」って言ってるじゃない!』

『そ、その通りです……』


 あぁ、川奈さんは川奈家でも最強なんだな。

 そう思ってしまうくらいには、川奈氏の威厳なんてなかった。

 勿論、それは川奈さんの前でだけなんだろう。


「あー……負けた負けた」

「おっと、大丈夫ですか? 今、回復しますね」

「女の子を痛めつけてから回復するなんて、玖命クンは中々猟奇的だね」

「……どうやら回復魔法はいらないようですね」

「あ、いるいる! 欲しい! 欲しいですっ!」


 そう言って正座する水谷は、どこか嬉しそうだった。

 回復魔法をかけはじめると、水谷は再び口を開いた。


「ふふふふ……」

「何ですか気持ち悪い……?」

「いや~、【天武会(てんぶかい)】が楽しみだなーと思ってね」


天恵(てんけい)展覧(てんらん)武闘会(ぶとうかい)】……か。確かにそろそろだな。


「一応出るつもりですけど、そんなものですか?」

「だってだって、何事もなければ決勝は【大いなる鐘(ウチ)】と【命謳(めいおう)】で決まりでしょ?」

「何事もなければ決勝は【大いなる鐘】と【インサニア】ですよ」


 言うと、水谷が目を見開いて俺に言った。


「え、何でっ!? 昨年のレベルを考えると、絶対に【命謳(めいおう)】だと思うんだけど!?」

「だってウチ、【新設クラン部門】ですから」


 俺の言葉に、水谷は更に肉薄してきた。


「何おかしな事言ってるのっ!? 【拳聖】に【二天一流】に【天騎士】! 下位クランが相手出来る訳ないじゃない! そんなの交通事故みたいなもの……ううん、空から衛星でも降って来るレベルよ!」

「いや、翔は【拳皇】ですよ」

「そういえばそうだった! じゃあもっと大変じゃない! ウチの傘下クランも出場するんだから自信喪失しちゃうじゃない!」

「でも、出場規定にクラン結成1年未満は新設クラン部門って書いてありますし、変更は出来ませんよ」


 俺がそう言うと、水谷は頭を抱えた。


「何てふざけた規定なの……!?」


 当たり前の規定だと思うんだけどな。

 だが、水谷は諦めを知らなかった。


「そうだ! 社長っ!」


 視線の先には、娘にホールドアップしてる川奈社長。


『へ?』

「確か【天武会】のメインスポンサーでしたよねっ!?」

『え? 確かにその通りだが……』

「【命謳(めいおう)】の本戦参戦を! 特別枠でも設けてやらないと、新設クラン部門は大変な事になりますよっ!?」

「あの、それはちょっと――」


 と、俺が言いかけるも、


『おぉ! その手がありましたねっ! 伊達さん! 本戦出ましょうよー!?』


 我がクランメンバーが大賛成である。

 スポンサー様は何やら考えているようだが、まさかこの案が通る訳がない。


『確かに水谷君の言葉は(もっと)もだ。伊達君一人でも優勝してしまいそうだね……』


 そんなに甘くないだろうに。


「余裕で勝っちゃいますよ!」

「なら新人全員と伊達さんで勝負って事にしたらどうかな、お父さん?」


 水谷の言葉に頷き、娘の言葉には困る川奈氏。


『うーむ……特別枠……か、現段階では難しいと言わざるを得ない』

『「そんな!? どうしてっ!?」』


 水谷と川奈さんの言葉が揃う。


『メインスポンサーは一社だけじゃないからだよ』


 そういえば、今年のメインスポンサーは――、


『【七海(ななうみ)建設】と【三日月(みかづき)コンツェルン】……彼らの協力を得られれば、特別枠も不可能じゃないはずだ』


 なるほど、それで川奈氏は「現段階では」と言ったのか。


『伊達君、水谷君、今の訓練動画……両社に見せても?』


 俺と水谷は見合い、川奈氏に向き直って頷く。

【天武会】に出場すれば、俺たちの実力や顔は全世界に公表される事になる。

 今更それを拒む理由はない。


『では、それは別件として確認するとして……二人共、応接室まで戻ろうか』


 そう言われ、俺たちは再び、先程の応接室という名の応接フロアへと戻って行った。

【天武会】まで残り1ヶ月近い。

 それまでの間、俺たちは訓練と依頼を並行してこなし、備えなければならない。

 …………そういえば、新しい軽鎧も新調しなくちゃなぁ。


「そうだ伊達さん!」


 エレベーターの中、川奈さんが俺に言った。


「何です?」

「クランのユニフォームを作りましょう! まずはTシャツから! 【天武会】に出場して好成績を出せば、グッズ化して売れますよ!」


 330円のTシャツ何枚売るつもりなんだろ、この子。

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