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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第四部

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第181話 ◆メイキング

 ◇◆◇ 20XX年9月9日 16:00 ◆◇◆


 水谷が派遣所を訪れる前日。

 伊達玖命、川奈らら、鳴神翔、山井拓人は顔を突き合わせ、伊達家のリビングで(にら)み合っていた。

 (もっと)も、睨み合っていたのは玖命を除く3人である。


「【命王】! ずぅえったい命の王です! これでメイキングとも読めるので、私たちの成長を作り上げる意味でも、これが絶対ですっ!」


 と、川奈が言い張る。


「【冥王】! 命を司る意味でもこっちのが正解だろがっ! これでもメイキングって読めるじゃねーか!」


 と、翔が言い張る。


「【命皇】! 【剣皇】や【拳皇】の字面から考えてもこちらのが馴染み深いじゃろ! これでメイキングじゃ!」


 と、山井が言い張る。

 すると、川奈が二人に食ってかかる。


「翔さんの【冥王】は論外です! そもそも伊達さんの名前が入ってないじゃないですかっ! それでも(ヘッド)を思いやる舎弟ですかっ!?」

「お、俺様が……舎弟っ!?」

「それに、命を司るとか上から目線過ぎませんか!? 煽られてると感じる方もいるんじゃないでしょうか!?」

「ぐっ!? 何て重ぇ一撃だ!?」

「それと、山井さんも字面だけ追ってませんかっ!? 皇の字はキングというよりエンペラーですよ!」

「ぬ……ぬぅっ!?」

「それじゃメイキングになりません! ペラペラですっ!」

「ペ、ペラペラッ!? つ、強い……!?」


 川奈の正論に追い込まれた二人は、ガクっと肩を落とした。

 リビングのソファで(くつろ)いでいた四条(しじょう)(なつめ)が、棒付きキャンディ(ロリポップ)を川奈に向ける。


「はい、ららの勝ちー」

「よしっ! 伊達さん、私やりましたっ!」


 喜びを全面に出す川奈に、玖命が苦笑する。


「う、うん……よかったね」

「俺様が……舎弟……!?」

「儂の生涯……ペラペラ……!?」


 息も絶え絶えな男衆を見下ろし、伊達は困惑している。


(翔は自業自得感あるけど、たっくんは別にそこまで言われてないだろうに……)


 そんな玖命をよそに、四条が川奈に言う。


「それじゃあ、後はきゅーめーとららの勝負だな」

「え?」


 玖命が首を傾げ、


「えっ!?」


 川奈があんぐりと口を開ける。


「一応全員の言い分を通さないとフェアじゃないだろ?」

「た、確かにそうですけど……だ、伊達さんは何か案があるんですかっ!?」


 肉薄する川奈に、玖命はたじたじである。


「あ、えっと……そもそも【めいおう】って言葉はどこから出てきたの?」

「そんなの(みこと)さんからに決まってます」

「あ、そうなんだ……」


 それを聞き、四条の目が玖命に向く。憐れみを込めた目が。


(伊達家の王って考えるとやっぱ(みこと)だよな。まぁ女王だけど。で、「玖命」の名前と関連付けてそうなったと。でも、肝心のきゅーめーはそれを知らない……こりゃあれだな、きゅーめー以外の3人で勝手に突っ走ったな? まったく、いつも大変そうだな、きゅーめーは……)

「そ、それじゃあちょっとだけいいかな?」

「な、何ですかっ!?」


 立ち上がり構える川奈。

 まるで、今一度言い合いが始まる事を予期しているかのようである。


「いや、そこまで熱くはならないけど……」

「そ、そうですか……?」


 そう言いながら川奈がちょこんと椅子に腰をおろす。


「まず、王って文字もちょっと強いような気が……」

「でも、トップクランになるならこれくらい強気じゃないと……」

「うーん、それじゃあそれもメイキングみたいに読ませるって事じゃダメなの?」

「へ? と言いますと?」


 川奈が聞くと、玖命は紙に一文字書いて見せた。


「この(うた)うって漢字はダメかな? これで【命謳(めいおう)】。謳歌って『幸せを、皆で大いに楽しみ喜び合う』って意味があるんだけど、そういう事を前に出した方がいいかなって」


 そこまで言うと、川奈はテーブルに身を乗り出した。


「む? むむむむっ!? 【命謳】! いいですね、これ! 【命王】の意味も持たせつつ、メイキングとも読ませ、更に名前自体に【命の謳】って大きな意味がある! 一石二鳥、いえ三鳥ですね!! どうですか、皆さんっ!?」


 言いながら、川奈は紙に命の文字を付け加え、翔と山井に見せつける。


「舎弟は……(ヘッド)の命令に従うぜ……」

「儂……ペラペラじゃし……それで良いと思う……」


 そんな二人の賛同ともとれるような、とれないような言葉に、川奈が意気込む。


「うん、いいですね! 決まりですっ! クラン【命謳(めいおう)】! じゃあ以前翔さんが言ってたクランエンブレムの熱い炎ってやつ、命――(すなわ)ち心臓に見立ててデザインするってのはどうですか!?」

「ん? おぉ! そいつぁいいかもな!」


 川奈の一言で翔が息を吹き返す。


「山井さん毛筆得意だとか言ってましたよね!? 手伝ってくださいっ!」

「む? 何じゃ、儂の出番か!?」

「伊達さん、お習字セット!」

「あ、え? 確か小学校に使ってたやつが……」


 川奈主導の下、そのままクランエンブレムのデザイン検討が始まる。


「命の「ひとがしら」、「一」、「(せつ)」は筆でかっこよく達筆で書いちゃいましょう!」

「ふむ……こうかのう? で、「口」の部分はどうする?」


 山井が半紙に毛筆を走らせ、聞く。


「そこに心臓をデザインします。口は、謳歌……謳う部分ですからね。心で謳う! いいですね! 勿論、バックには炎をデザインして」

「おぉ! 中々イイ感じじゃねーのか!?」


 川奈がスマホで空いた部分に、心臓を置く。


「問題は心臓だと生々しいかなーと」


 そう言ったところで、(みこと)が現れる。


「ハートよハート。ハートを燃やしなさいよ」


 (みこと)の突然の登場に驚きを見せる一同だったが、すぐに半紙に目を向ける。


「カカカカッ! いいじゃねーか!」

「うん、悪くないです!」

「ほっほっほ、こりゃ目立つのう!」


 そんな三人の感動をよそに、玖命は少しだけ冷めた視線を送っていた。


(………………………………え、恥ずかしくない?)


 ()くして、クラン【命謳(めいおう)】のクランエンブレムが完成したのだった。

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