表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/327

第171話 北海道旅行1

 ◇◆◇ 20XX年8月29日 14:00 ◆◇◆


(かに)だ!」

「ラーメンだろうが!」

「蟹だよ!!」

「らあめん!!」


 俺の眼前で蟹なのかラーメンなのか蟹ラーメンなのかを話してるのは、四条(しじょう)(なつめ)鳴神(なるがみ)(しょう)

 月見里(やまなし)さんと天才派遣所の(はから)らいで、帰りの飛行機のチケット代は、この場の全員分出るそうだ。

 まぁ、全員ビジネスクラスらしいが、この人数だ、派遣所としては赤字だろう。

 そして、その帰還が明日の夕方という事で、今日の昼過ぎから明日の昼までは北海道旅行を満喫するという事で決定した。

 …………したのだが、


「寿司!」

「ラーメン!」

「こっちが蟹から寿司に譲歩してやってんのに、何で鳴神はそう頭が固いかな!?」

「カタだろうがバリカタだろうがハリガネだろうがカンケーねーだろーが!?」

「きゅーめー! お前はどっちだ!?」

「そうだ玖命ぇ! ラーメンだろ? ぉ?」


 ノーコメントとしたいが、二人の鬼気迫る表情に、俺は何も返せなかった。

 ――ので、


「あ、水谷さんから電話きてたんだった。ちょっと電話して来るね」


 三十六計(さんじゅうろっけい)()げるに()かず。


「蟹だ!」

「四条てめぇ! 戻ってるじゃねーか!? ラーメンだろボケ!」

「お前に譲歩する気が失せただけだ! かーにー!」

「らーあーめーんー!」


 子供のまま大人になった二人だな、ありゃ。

 まあ、翔はともかく四条さんはまだ(みこと)と同じ15歳。少しくらい我を通してもいいだろう。

 ただ、相手が我の極致にいるような翔だし、遠目で見守るくらいがちょうどいいのかもしれない。

 俺は(みこと)と川奈さん、そして何故かいる月見里(やまなし)さんにその場を任せ、少し離れた場所でスマホをとった。

 水谷に電話をかける事……3コール。


『もしもし!?』

「あ、もしもし、水谷さんですか?」

『こっちからかけ直すね!』


 ものの3秒で電話が切れた。

 ……もしかして、こちらの通話料を考えてくれたのだろうか。

 そんな事を考えていると、水谷から着信が入った。

 電話をとり、


「あ、わざわざすみません」

『いーのいーの、こっちの用事なんだから。何、今北海道なんだって?』

「え、相田さんに聞いたんですか?」

(よしみ)が、玖命クンの個人情報を漏らす訳ないじゃない』


 確かに、プライベートではない仕事の話だ。

 相田さんが話したとは考えにくい。


(みこと)ちゃんに聞いたに決まってるじゃないかっ!』


 電話しながらウィンク決めてそうなテンションである。

 なるほど、水谷ファンの(みこと)なら簡単に教えてくれるだろう。そもそも、俺に対し害のない相手であれば、(みこと)は普通の高校生である。まぁ、そもそも普通の15歳なんだけどな。


「そういえば、以前ウチに集まった時に連絡先交換してましたね」

『うんうん、玖命クンの情報がいち早く入るから助かってるよ』

(みこと)を都合の良い女みたいに言わないでくださいよ」

『だいじょーぶだいじょーぶ、今度お礼も兼ねて一緒にご飯食べる約束してるんだ。もう友達だよ、友達っ』

「そこまで(みこと)を手なずけましたか、やりますね」

『まぁ、(みこと)ちゃんに聞くより早く、あの動画を観ちゃったからね』

「あー……【姫天(ひめてん)】ですか」

『玖命クンは勿論だけど、北の【剣聖】を観られたのは収穫だったよ』

「え、あれ小林さんがかけてたゴーグル越しだから、小林さんは観られなかったはずですけど……」


 そう言うと、水谷はさも当たり前かのように言ったのだ。


『何言ってるの? こばりんの視線と剣の軌道、玖命クンの動きを見れば、彼がどう動いたかなんてすぐにわかるでしょ』

「ちょっと何言ってるかわからないですね」

『あははは、でも玖命クンも強くなったよね。もう私でも敵わないかもしれないよ?』

「いえ、水谷さんの方が強いですよ」


 そう言うと、水谷はしばらく沈黙を選んだ。


『…………さらっと言い切ったね?』

「でも、もうすぐだと思います」

『それはまた……うん、わかった。じゃあ私も抜かれないように頑張るね』

「はい、応援してます」

『玖命クン……何か狙ってるんじゃない?』

「えぇ、早いところ、水谷さんには第5段階の天恵に成長して欲しいですね」

『……ふ~ん、それで私の天恵も手に入れちゃうのかな?』


 ……これだけ俺と共に行動している水谷だ、俺の嘘情報も知ってる訳だし、ここまで読んでくるのは予想出来た。

 というより、たった今、俺がヒントを出してしまったという事もあるだろう。

 まぁ、それにいち早く気付いたのは彼女じゃないんだけどな。


「よくお気づきで」

『っ! ……へぇ、もう隠すのをやめたの?』

「う~ん……というより――」

『――というより?』

「ようやく準備が整ったってところでしょうか」

『あははは、いいね。じゃあこれからはもっと玖命クンの活躍が見られる訳だね?』

「いや……別に活躍したいという訳ではないんですけどね、はははは」

『いやいや、玖命クンは自分から目立ちに行ってるでしょ? これは多分(よしみ)も賛成してくれると思うけど?』


 流石に相田さんを出されると、こちらが形勢不利である。

 そう思い、俺は本題へと戻った。


「コホン、それで? 何の用だったんですか?」

『実は私、高幸に借りがあってね』

「越田さんに?」

『まぁ、以前大怪我負った時に助けてもらった時の借りなんだけど』


 あぁ、最初に俺を助けてくれた時が、そのリハビリだったとか言ってたやつか。


「えーっと、その借りと、俺に何の関係が?」

『高幸がその借りの返済を求めてまで私に頼んできた事だよ』

「なるほど?」

『玖命クン、【大いなる鐘】に入らない?』

「お断りします」

『あはははは! だよねっ? 高幸も無駄な貸しを使っちゃったと思わない?』

「いえ」

『……え?』

「少なくとも、越田さんの本気度は伝わりましたよ」


 そう言うと、水谷はくすりと笑って言った。


『いいね、北海道でも成長したんだね。玖命クンは』

「それはどうかわかりませんが、今まで放置していた問題を片付けようと思うくらいには前進出来ました」

『というと?』

「俺、Cランクに上がったら……クランを創ります」


 そう言った後、俺は気付いてしまった。

 今の台詞(せりふ)……死亡フラグっぽいな、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[一言] そんなきゅーめーにまず軽鎧の出費ダメージ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ