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第15話 新たな依頼

 あの後、俺は相田さんに質問攻め……というより糾弾されていたような気がする。

 まぁ、誤解はすぐ解けたのだが、その後の相田さんと水谷のコンビネーションに、思わず天恵が発現した事を教えてしまうところだった。

 そんな突発的な飲み会だったが、料理は目玉が飛び出る程、美味かった。

 肉のサシと艶、彩り豊かな野菜、新鮮な魚。

 それらが調理され、俺の舌を幸せにした。

 あんな料理が世界に存在しているとは……。

 親父と(みこと)を連れて行きたい店である。勿論、金持ちになったら、の話である。


「ふぅ……今日はこんなものかな」


 あまりゴブリンを狩りすぎる訳にもいかない。

 今日は四十体ほどのゴブリンを狩った。

 (ポータル)からゴブリンが出てくる数が、一日百体だと言われている。

 狩りすぎてしまうと他の天才たちの生活も脅かされる。とはいえ、ここ数日この管理区域に入り浸っているが、俺以外の天才を見かける事がほとんどない。

 まぁ、新人が少なくなってきたというのが理由だろうが、そうなったらそうなったで別の問題が起きる。

 それは(すなわ)ち、新人の天才が現れた時、チームを組める天才がいないという状況に陥ってしまう事だ。


「うーん……チームか……」


 いつか俺もチームを組んだりクランに入ったりするのだろうか。


「あ、伊達くん」


 魔石の換金のため、俺は天才派遣所にまで戻って来ていた。勿論、八王子支部である。

 相田さんに招かれるように受付に行くと、相田さんは待合席にちらりと目をやってから俺を見た。


「ちょっと依頼があるんだけど」

「え、俺にですか?」


 おかしい、掃除なら出かける前に済ませたはずだ。

 そう簡単に俺用の仕事が舞い込んで来るとは思えないのだ。


「荷物持ちの仕事なんだけど」


 ピタリと止まる俺。

 そんな俺の反応を予測していたのか、相田さんはすぐにフォローを入れた。


「あぁ大丈夫大丈夫、今回はガイドも込みの仕事なの」

「ガイド? 俺に?」

「伊達くん、もうゴブリンは問題ないんでしょう?」

「えぇ、まぁ」

「さっき伊達くんの履歴を確認したんだけど、たった数日であれだけ稼げるならって事で、伊達くんが適任という話になってね、今回の仕事を紹介したいんだけど……どうかな?」


 ありがたい、俺の稼ぎを知っても、いつもの相田さんのままだ。聞きたい事が山ほどあるだろうに。

 いつか話せる時がくれば、相田さんには一番に教えたい。そう思える程には、俺は相田さんを信用していた。


「わかりました、仕事の内容を聞けますか?」


 そう言うと、相田さんは俺に微笑みかけてくれた。

 そして、管理端末を操作し、俺に仕事内容を見せてくれたのだ。


「い、依頼人は……一人? チームじゃなくて?」

「そうなの。最近天恵が発現した子なんだけど、周りの天才とタイミングが合わなくて、チームで行動出来る人がいないの。だから、伊達くんにお願いしたいんだけど……どうかしら?」

「……川奈(かわな)らら……天恵は【騎士】。珍しいですね……」


 騎士の天恵は、力と頑強さを備え、主に盾を使った立ち回りが一般的だ。

 本来であれば前衛や遊撃、最低でも後衛と共に行動するのがいいのだが、それを組む仲間がいない……という事か。


「依頼内容は腕力指定なしの荷物持ちと……ガイド」

「何度か哨戒任務には出てるんだけど、討伐任務は初めてなの……それでその……」


 なるほど、ガイドと書く他ないのか。

 相田さんが言いたい事はなんとなくわかった。

 つまり、これは初心者指導(インストラクター)の仕事だ。


「俺でいいんですか?」


 これは相田さんに聞いているのではない。

 相手に、ランクGでいいか確認しているのかという確認である。

 謂わば初心者が初心者に教えるというものだ。

 なりたてとはいえ、これを不服とする天才は多いだろう。


「大丈夫、経験も知識も豊富だって事はしっかり伝えてるし」

「なら、まぁ……わかりました、お引き受けします」


 言うと、相田さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。

 そして、俺の奥の待合席を見て、言ったのだ。


「川奈さん、決まったわよ」

「は、はいっ!」


 そういう事か、だからさっき待合席を見ていたのか。

 相変わらず敏腕だな、この人。

 俺が仕事を受ける事を見越して動いている。


「伊達くん、この人が川奈ららさん。川奈さん、今回川奈さんの仕事を引き受ける事になった伊達玖命(きゅうめい)くんです」

「「よ、よろしくお願いします」」


 緊張からか互いに挨拶が被ってしまった。

 最初に抱いた彼女の第一印象は、小動物だった。

 くりんとした瞳と白い肌。短いながらもキャスケット帽子からぴこんと跳ねる茶色いくせっ毛、華奢な体躯とおどおどした表情。目は俯きがちで、緊張からか何度も身だしなみをチェックしている。

 特徴的な八重歯を見て、一瞬小動物かと思ってしまった俺を誰が責められよう。

 うーむ、小さい。

 150cmの(みこと)より小さいかもしれない。

 ……なるほど、この子が【騎士】か。

 なかなか難しそうな依頼だ。

 そんな川奈さんを前に、俺は目を丸くする。


 ――【探究】を開始します。対象の天恵を得ます。


 どうやら、俺の天恵は情緒もへったくれもないようだ。

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