表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/327

第149話 ◆準備完了

「……ふぅ」


 ――おめでとうございます。天恵が成長しました。

 ――天恵【体力B】を取得しました。


 玖命の背後には、オークの亡骸が積み上がっていた。

 汗一つかいていない玖命を見、月見里(やまなし)が硬直する。


(何か……この前より強くなってない……?)


 月見里(やまなし)がそんな驚きを見せる中、玖命が月見里(やまなし)に言う。


月見里(やまなし)さん、すみません」

「あ、え? な、何?」

「申し訳ないんですけど、解体班呼んで頂いてもいいですか? 流石にこの数だと、明日に響きそうで……ははは」


 苦笑する玖命に、月見里(やまなし)はただ「あ、うん。わかった」とだけ返事する事しか出来なかった。

 月見里(やまなし)はスマホを取り出し、再び天才派遣所へ連絡する。


「もしもし? 調査課の月見里(やまなし)です。いえ、ダンジョン破壊班はまだです。ですが、モンスターパレードはなんとか片付きました。え? はい、解体班をお願いしたくて。数……数ですか? えーっと……350……? くらいですかね。え? いや、無理ですよ。その天才、Dランクですから侵入は出来ません。Dランクです。BじゃなくてD。デー! わかります? デーランク! Dなの。D。はい。えぇ、なので破壊担当の天才は必要です。はい、いるんですよ。世の中には意味のわかんない天才が。350体全て彼に。名前は伊達玖命。所属は東京の八王子支部。はい……はい、よろしくお願いします。だからDランクだってば!」


 苛立ちを見せながらスマホを切る月見里(やまなし)が、面倒臭そうに玖命を見る。


「伊達」


 電話の内容がほぼ聞こえていた玖命にとって、この後何を言われるかの見当はついていた。


「え……はい」

「さっさとダンジョンに入れるようになりなさい。20秒で終わる通話が1分半になっちゃうから」

「あ、はい。何か……すみません」

「謝る必要はないわよ。別に悪い事してないんだし」

「はぁ」

「それじゃ、さっさとホテルに帰って。ゆっくり休みましょ」

「確かに、あんまり眠れなかったですし」


 玖命が言うと、月見里(やまなし)は流石に今朝の出来事を思い出したのか、


「ぐっ……!」


 少しばかり顔を歪めていた。


「大丈夫……大丈夫……うん」


 その後、現場保全の後、ダンジョン破壊担当の天才が駆けつけ、玖命の依頼は終わった。

 思わぬ臨時収入にホクホク顔の玖命だったが、タクシーで隣に乗る月見里(やまなし)に言われた一言が、その笑みを崩したのだ。


「そんだけ稼ぐと来年の税金は半分持ってかれるわね」

「は、半分……!?」


 そう、玖命を地獄の底に叩き落としたのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 北海道旅行を満喫していた川奈ららだったが、早くもその旅行に飽きがきていた。


「旭川ラーメンも食べちゃったし、夕張は流石に遠いし……中々有意義に、とはいかないですねぇ」


 そう呟きながら、川奈は喫茶店でロールケーキをつついていた。


富良野(ふらの)……美幌(びほろ)……稚内(わっかない)……ん~、どこも昔行っちゃったし……行ってないのなんて、ラーメン店くらいでしたからねぇ……」


 ブツブツ言いながら紅茶をかき混ぜていると、川奈のスマホが反応を見せた。


「あれ? (みこと)ちゃんから? あ、棗ちゃんとのグループだ」


 超心臓―――うーみー

 四条棗―――うーみー

 Rala――うーみー

 Rala――海がどうしたんですか?

 四条棗―――今、北海道向かっててさ

 Rala――え!?ホントですか!?

 超心臓―――翔さんとビニールプールと一緒ですね!

 Rala――それって…どういう事ですか?

 四条棗―――まぁ、この調子だと明日の深夜くらいになりそうなんだよね。

 Rala――車ですか?結構かかりますね。

 四条棗―――結構速度出てるよ。時速40〜50kmくらい。

 超心臓―――乗り心地最悪ですけどね。

 Rala――よくわかりませんけど、それならこっちで合流しますか?伊達さんは札幌支部にいるみたいですけど。

 四条棗―――私と(みこと)は函館あたりでのんびりしてようかなと。ららは翔に拉致られるんじゃないか?

 Rala――え!何でですか!?

 超心臓―――何か、お兄ちゃんと二人してラーメンの画像送ったのが原因みたいです。

 四条棗―――仲間外れは許さねぇとかキレちらかしてた。身に覚えは?

 Rala――あり過ぎて怖いです…。

 四条棗―――それじゃー、仕方ないな。

 超心臓―――仕方ないですね。

 Rala――少しは助けてくださいよぉ…。

 四条棗―――こっちも被害者だからね。

 超心臓―――現在進行形で…。


「ひ、被害者……?」


 超心臓―――とにかく、明日の22時頃、函館に着く予定でーす!

 四条棗―――色々準備しといた方がいいかもなー。


「じゅ、準備……。準備か……うん、確かにそれは悪くないかもしれません」


 Rala――わかりましたー!お待ちしてまーす!


 川奈はそう返信すると、喫茶店から飛び出すように出た。


(うんうん、私って準備いいよねー!)


 玖命、川奈、翔……全ての面々の動きが決まり、その全員が北海道へ集結する。

 ヤケ食い旅行に飽き始めていた川奈の表情が明るくなる。


(やっぱり天才はこうでなくちゃ!)


 川奈の向かう先は――追加料金を払ってまで広いスペースをとってもらった、ホテルのクローク。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ