表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/327

第131話 ◆調査課3

「だ、だ、伊達さ~~~ん……」


 ふらふらになりながら、訓練スペースから出て来る川奈らら。

 そんな川奈を玖命が労う。


「お疲れ様……川奈さん」

「わ、私、頑張りましたよねっ? 頑張りましたよねぇ!?」


 肉薄しながら目に涙を湛える川奈に、玖命は苦笑しつつうんうんと頷いて同意を示す。

 俯く川奈の肩をぽんぽんと叩く玖命。


「ぅう……伊達さん……」

「ん?」

「私の仇……とってくださいねっ!」


 そんな川奈の無茶振りに、玖命は目を丸くする。

 そんなやり取りを見ていた鳴尾(なるお)(あきら)月見里(やまなし)(あずさ)が顔をヒクつかせる。


(いや、山井さんに勝つのはちょっと……)

(あんな化け物に勝てる訳ないじゃん……)


「まぁ、出来るだけやってみるよ。あ、これで戦闘の録画お願いしてもいい?」

「え? 撮るんですか? いいですけど、珍しいですねぇ」

「えっと、構いませんよね?」


 玖命が言うと、月見里(やまなし)鳴尾(なるお)を見る。

 すると、鳴尾(なるお)が言った。


「念のため、使用用途を聞いても?」

「山井さんのお兄さんが観たいと」

「「っ!?」」


 玖命の一言に、二人が驚愕する。


「た、拓人さんと面識がっ!?」

「えぇ、凄い偶然だったんですけどね」

「アンタの交友関係どうなってんのよ……」

「ははは……」


 鳴尾(なるお)月見里(やまなし)はそれぞれ違った反応を見せるも、それ以上の反応を見せたのが――、


『はっはっはっは! たっくんと知り合いか! しかも、連絡先を知っていると見たっ!!』


 強化ガラスを震わせるような大きな声。

 訓練スペース内の山井(やまい)意織(いおり)が玖命を見る。


『たっくんに送るのなら動画は許可しよう! 来い、伊達!』


 玖命は「じゃあお願いね」と川奈に伝え、スマホを渡し、訓練スペースへ入って行く。

 そして、端に置いてあった強化木剣を持ち、山井意織の前に立つ。


(山井意織……山井(やまい)拓人(たくと)と同じく天才の先駆けの一人)


「まさかたっくんの知己(ちき)とはな。もう気付いてるんだろ?」

「……えぇ、まぁ」

「改めて自己紹介だ。天才派遣所情報部統括部長――山井意織だ」


 ニヤリと笑う山井意織。


「たっくんは興味のない人間には絶対に連絡先を教えない。だからこそ、私は伊達、お前に興味を持った!」

(先の時代……山井拓人の背中を守った対の男。守り、守られ、救った人は数知れず。山井拓人とは違い、表舞台から姿を消し、一部では死亡説が囁かれていたが、まさか天才派遣所の内勤に従事していたとは思わなかった。だが、彼の天恵は謎に包まれている。確か……山井兄弟は異例中の異例の超レアケース――兄弟共に同じ天恵だったとか何かの本で読んだ事がある……)


 木剣を構え、腰を落とす。


「遠慮はいらん……伊達、お前の全力を見せてみろっ!!」


 山井意織は無手。先程の川奈と対応を変えない様子。


(【拳士】系? いや、だとしたら【考究(こうきゅう)】が反応するはず。ならば、彼の得物は別にあるはず。まずはそれを出させる事から頑張ってみるか……)


 直後、玖命の剣が走った。


「っ!? ぬぉっ!!」


 玖命の一撃は山井意織の背中を狙った。

 当然、その速度には山井意織も対応出来た。

 しかし、その威力には、対応する事が出来なかったのだ。

 木剣の面を叩き、(すく)うように払う。玖命の剣の力を流し、霧散させる。

 咄嗟の動きながら、洗練された山井意織の技術に玖命は目を見張る。


「ははは、凄いや……!」


 そう零し、玖命が次の行動へと移行しようとするや否や、山井意織が両手を前に出した。


「ちょ、待った! 待った待ったっ!」


 あろうことか、山井意織が戦闘を止めたのだ。


鳴尾(なるお)っ!」

『え? は、はいっ!』

「腕力SS(ダブル)、攻撃SS(ダブル)だ……! それと、私にも剣をよこせ!」

『は? えぇっ!?』

「早くしろ!」

『は、はい!!』


 すぐに鳴尾(なるお)は、訓練スペースの中に強化木剣を持って来る。それを見て、玖命が山井拓人と出会った時を思い出す。


(そうか……だから、山井さんは俺に剣を――)


 山井意織が右手に持つ木剣。

 そして左手で逆手に持つ木剣。


(――だから、山井さんは俺に剣を渡せたんだ。2本(、、)持っていたから……!)


 ――【考究(こうきゅう)】を開始します。対象の天恵を得ます。


 動き出した玖命の天恵【考究(こうきゅう)】。

 相手の天恵を、【考究(こうきゅう)】より先に、【天眼(てんがん)】より先に玖命が暴く。


「【双剣士(そうけんし)】……!」

「おうよ、知ってたか!」

「都市伝説かと思ってましたが、実在したんですね……」

「【双剣士(そうけんし)】、【ダブルチョッパー】、【二刀流】……そして、【二天一流(にてんいちりゅう)】。それが私の天恵だ」

「天恵も面白い事しますね。実在する流派を名前に採用するんですから」

「はははは、その通りだ。だから我々は、天恵を与える者が……この世界のどこかにいると見ている」


 そこまで言うと、鳴尾(なるお)から待ったがかかる。


『ちょ、山井さん! それはオフレコですって!!』

「固い事言うんじゃない。伊達はいずれそれを知る人物だ、そこにいる川奈もな」

『そ、そこまでですかっ!?』

「たった一撃で私に剣を持たせたんだ。そうでなくちゃおかしい!」


 自分に対する絶大な自信。

 それを受けて玖命がゴクリと喉を鳴らす。


「それじゃあ……ここからが本番だぁ……伊達!」

「お願いします……!」


 直後、鳴尾(なるお)月見里(やまなし)、そして川奈は、とてつもない光景を目にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ