表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/327

第130話 ◆調査課2

 新宿の調査課があるビルの地下2階。

 天才派遣所のトレーニングルームは、主に調査課に所属する天才たちが利用する場所である。

 数々のトレーニング機器の他、当然、派遣所にあるレンタルスペースのような訓練場所も存在する。

 今回のような一件、その他例外と認められる事態に、このレンタルスペースは使用される。


「よ、よろしくお願いしますっ!」

「はははは、お手柔らかに頼むぜ、川奈」


 玖命は対峙する二人を見て思う。


(流石に川奈さんに怪我を負わせるような行為はしないはずだが、さて山井さんはどんな動きを……?)

「そんじゃ、まずは耐久から調べていくか」

「へ?」


 直後、川奈の大盾から大きな音が響いた。

 それはまるで、大鐘楼(だいしょうろう)が鳴るような大きな音だった。


「っ!?」


 顔を歪ませながらふわりと浮き上がる川奈。


「山井さんの一撃を受け切るか。本気でないとはいえ、凄い子だね……」


 鳴尾(なるお)の言葉以上に、玖命は驚きを見せた。


「強い……拳であれだけの衝撃、SS(ダブル)以上……!」

「良い目をしているね。山井さんは長年SS(ダブル)に身を置いていたからね」


 鳴尾(なるお)の補足に、玖命は片隅にあった記憶を思い出した。


「や、山井(やまい)意織(いおり)……!」


 訓練スペースのガラスに張り付くように山井を見る玖命。


(お、思い出した!)


 すぐさま玖命はスマホを取り、ある人物に連絡を取る。


 玖命――――山井さん!

 たっくん――何ー?

 玖命――――山井意織って知ってますよね!?

 たっくん――あれ? 玖命っていおりんと知り合いなの?


ToKW(トゥーカウ)だと若々しいなこの人……)


 玖命――――いおりんって……。

 たっくん――いかにもー。いおりんは私の妹でーす!

 玖命――――あんなガチムチな妹がいてたまりますか!

 たっくん――うそうそ、いおりんは弟でーす^^

 玖命――――因みに、たっくんっていうのは……?

 たっくん――山井拓人だからたっくん。中学時代のあだ名だよ^^


 そう、玖命が連絡を取った相手とは、西の【インサニア】参謀兼序列2位――山井(やまい)拓人(たくと)その人だった。


 玖命――――いおりんは?

 たっくん――家族間のあだ名ー!何?今、いおりんと一緒?

 玖命――――今、調査部に赴いてまして…。

 たっくん――あー、ね!そういう事もあるよね!玖命って結構謎なところあるからね!何?戦うの?

 玖命――――えぇ、この後。今チームメンバーが戦ってます。

 たっくん――マジで?動画欲しいかもー!チームメンバーに頼んで撮ってもらってよー!

 玖命――――えぇ…何でそんな事…。

 たっくん――いいじゃんいいじゃん。貸し2にしてあげるからー!

 玖命――――…わかりましたよ

 たっくん――やったー!よろー!^^


「…………何、この人?」


 玖命は、山井拓人の現実の姿とのギャップに困惑しつつも、川奈と山井意織との戦闘を見守る。


鳴尾(なるお)!』


 訓練スペースの中から山井意織の声が響く。


「は、はい!」


 慌ててマイクに声を入れる調査課課長の鳴尾(なるお)


『体幹D! 受けCだ!』

「チェ、チェックします!」


 そんな指示に、鳴尾(なるお)はバインダーの紙にその記録を付ける。

 その後、山井意織は川奈に指示を飛ばす。


「若いのに随分と自分を追い込んでるな」

「が、頑張ってます!」

「次は攻撃だ、しっかり狙って来い!」

「はいっ! やぁああああっ!!」


 川奈が駆け、大きく声をあげる。


「戦闘中に大声は……いや?」

「ここですっ!」

「やはり、大声をフェイントに使い、ここでヘイト集めか。悪くない!」

「ふっ!」


 川奈は大盾に身体を隠しながら、山井意織に突きを繰り返す。


「そこは突きだけじゃなく、斬撃も交ぜた方がいい。俺みたいなデカい相手なら尚更な」

「は、はい!」

「立ち回りC! 攻撃Dだ!」

『チェックしました!』


 訓練スペースに響く鳴尾(なるお)の声。


「んじゃまたこっちからだ。集中しろ!」

「集中ぅ……! 集中ですっ!」

「いい気合いだっ! はははははっ!!」


 川奈が受けに回るも、山井意織の攻撃は全てその上をいく。

 これを見て、玖命が目を見張る。


(凄いな、ここまで力をセーブ出来るのか。段階ごとに川奈さんの性能限界を見極め、それを引き上げているようだ)

「集中力B! 根性Aだ!」

『チェックッ!』

「はははははっ! 骨のあるお嬢さんだ……! ほれほれ! そっちじゃない、こっちだ!」

「わ、わわっ!? くっ、ま、まだまだですっ!」


 立ち回りに追われる川奈だが、目の炎は(いささ)かも衰えていない。

 これを見て、山井意織がニヤリと笑う。


鳴尾(なるお)!」

『は、はい!』

「根性Sだ! 書き直せ!」

『了解っ!』


 その後も山井意織の査定が下る。


「腕力C! 脚力C! ははは! 凄いな!? 本当にEランクかぁ!?」

「き、鍛えてますからっ!」

鳴尾(なるお)!」

『は、はいぃ!』

胆力(たんりょく)SSだ……!」

『そ、そんな項目は……』

「書き足せ! 特記事項だっ!」

『は、はいっ!!』


 そんな風に慌てる鳴尾(なるお)を見て、玖命は(あわ)れみの目を向ける。


(中間管理職って……大変なんだなぁ……)


 玖命は知らない。

 この時、玖命のToKW(トゥーカウ)が反応していた事を。


 たっくん――いおりんの天恵は私と同じだから、いつか私と戦う時の参考にしてねー^^

カクヨムにて先行掲載中。

気になる方は、お手数ですがページ下部のリンクから、カクヨム版へどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ