第114話 第2段階2
【考究】……か。
【探究】との違いは進捗速度の倍率。
限界という意味がよくわからないが、これは後々変化するのだろうか。
それに、進捗情報の中にあった小数点が消えた。
更に、これまで表記されなかった【超集中】、【心眼】、【魔眼】の解析度が表示されるようになった。
……なるほど、悪くない。
「……何を笑っているんだい?」
「その話、付き合わなくちゃ駄目か?」
「クヒヒ……生意気だねぇ」
「五月蠅い……まずは12%と16%……付き合ってもらうぞ」
「は? 12%?」
八神に反応している必要はない。
今、俺が出来る事は奴との戦闘を続け、付かず離れず……絶対にこの場から逃がさない事。
しかしこの【考究】って……字面からして、やはりそういう事なのか?
そうだったとしら中々興味深いな……。
「だから……笑ってるんじゃ……ないよっ!」
直後、八神はファイアボールを命たちに向けて放った。
「ふ、伏せろっ!!」
親父が盾に? だがあれじゃ全員死んじまう……!
「くっ! ファイアボールッ!」
何とか相殺にもちこんだものの、これは中々厄介だ。
この威力、おそらく【大魔法士】クラス。
だからさっき【聖騎士】のヘイト集めの時に起こった魔力低下を把握出来たのか。
奴が魔法も有しているとなると、助かった四条さんたちがまたいつ狙われるかわからない。
「ヒハハハ、やっぱり魔法も使えるんだ? ホントに何でも使えるんだね? ひょっとして、僕と同じ天恵?」
「そもそも、【道化師】の能力が何なのかわからないね」
「それは秘密。自分の天恵を晒すなんて、命を差し出しているのと同じだよ」
「それには同感だが、それ=我儘を通していい事にはならない」
「僕に説教かい? 一々鼻につく人だね、玖命君は……」
肩を竦める八神。
「それじゃあ、そろそろ死んでもらうかぁ……」
「その性格が、お前自身を滅ぼす事になるぞ」
「……生意気だって言ってんだろうがっ!!!!」
瞬間、八神はまた俺の背後を取った。
何だ、さっきまでは追えたのに、この瞬間的に速度が上がる現象は……一体?
「ちぃっ!」
俺は這うように身を低くし、八神の一撃をかわすと共に、奴の足を狙った。
「ハッ! その程度?」
足を狙う風光の前に降りて来たのは、【聖騎士】城田英雄のトレードマーク――プラチナクラスの大盾。
「その盾、邪魔なんだけど」
「僕は玖命君の存在が邪魔だよ」
「「っ!!」」
俺と八神の視線が交叉する時、学校中に轟音が響き渡った。
「オォオオオオオオオオオッ!!!!」
「ヒィアアアアアアアアアッ!!!!」
乱撃、防御、衝突、衝撃、立ち昇る炎と雷。
それは、俺が今まで経験したどんな戦闘よりも……過酷で、辛く、死闘と呼ぶのに相応しい一戦だった。
「ヒハハハハハッ!! 強い! 強いねぇ!!」
「攻撃のパターンが……読めないっ!」
攻撃力にムラがある。
攻撃速度にムラがある。
こんなに戦いにくい相手……初めてだ!
「読める訳ないだろう! この僕は世界最強なんだよっ!!」
っ! 魔法剣!?
俺は、八神が攻撃する時、手から魔力を放出する瞬間を見た。
だが、この発動方法は……何故!?
「くっ!」
「嘘ぉ~!? まさか玖命君も魔法剣を!? ヒハハハッ! ホント何なんだよお前……真似っ子は、死ねっ!!」
また速度がっ!?
「くっ! ス、スパークホール!」
瞬時に展開した雷の領域。
しかし、この魔法は術者にも……痛ぅ!?
「くっ、ば、馬鹿なんじゃないか、お前っ!」
「はぁはぁ……でも、お前の一撃を防いだ……!」
「き、傷が……! くそ、回復魔法か!」
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【魔力B】を取得しました。
「はっ……やっぱり16%のが先か……」
「さっきからパーセントパーセントって、煩いんだよっ!!」
「スパークホール!!」
「ガッ!? ッハッ!? ぐぅう……!」
くっ…………ははは、睨んでる睨んでる……。
「連続で使うとか正気じゃないだろ!」
「で、でも……お前に一泡吹かせてやったろ……?」
魔力が上がった分、俺へのダメージもデカくなったけどな。
「うざいうざいうざい! お前ウザイんだよっ!!」
速度が上がった、また背後に来る……!
「ちぃっ! 受けやがった!?」
「そう何度も同じ事繰り返せば馬鹿でもわかる」
「ハァ!? この僕が馬鹿だとでも言う気かな!?」
「馬鹿とは言わないけど」
「あ?」
「お前、頭悪いだろ?」
青筋が凄い。
少し煽り過ぎたか?
だが、こういう手合にはこれぐらいで丁度いい……はず!
「ヒァッ! 死ね! 死ねっ! 死ねよっ!! 死んでくれよっ!!!! 今すぐその首をちょん切って! 首の上から小便ぶっかけてやるよ!! あぁ!?」
「くっ! 相変わらず……ワケわかんない攻撃だな!?」
「お前なんかにわかってたまるかよ! 死ねぇえええっ!!」
そうとも言えないんだけどな……。
何度も受けているとわかる。
まるで可変しているかのような攻撃力と攻撃速度。
瞬時に上がるスピード。炎の魔法剣に要する着火時間。
それらどれもが示すのは――……奴の能力。
「そういう事……か」
「その澄ました顔が気に食わないんだよっ!!」
奴の可変する左逆袈裟斬りを上段からの打ちおろしで迎える。
ガチンと交わる刀と剣。
その瞬間、奴は俺を睨むように見た。
決まるはずの一手を防がれ、不可解と悔しさが滲んだ八神の目。
「八神」
俺の指摘は、
「玖命君、今……喋り掛けないでくれるかな? お前の声、聴きたくないんだよねぇ!?」
八神の血走った目を、
「お前、複数の天恵を……同時に発動出来ないんだろ?」
驚きに染める。




