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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第二部

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第105話 ◆大災害5

「相田さん……こ、こっちまで来たみたいです……!」


 小声で言う川奈に、相田は静かにパソコンを操作した。

 すると、すぐに強化ガラス手前のブラインドが上がり始めた。


「ちょ、相田さんっ!?」

「大丈夫、廊下からこっちは見えないようになっていま――っ!?」


 直後、相田と川奈は息を呑んだ。

 そこにいたのはかつて玖命を窮地に追いやったゴブリンジェネラル。


「に、2体いますね……」

「それより奥……あの2体の間」


 相田の言葉で、川奈は腰を屈め、ゴブリンジェネラルの間、その奥を見る。

 そこには人間大のゴブリンが鋭い目付きで周囲を見渡していた。


「す、凄い身体ですよ……」


 普通のゴブリンとは違う作り込まれた肉体。

 頭部の額当(ひたいあ)て、上裸ながらも、それ以外の装備は全て革製。腰にある剣と背に携えた斧。

 相田は目を見開き、小さく言った。


「マスターゴブリン……!」

「Aランクじゃないですか……! こ、この強化ガラス、Aランクなら大丈夫ですよねっ?」

「大丈夫……」

「よ、よかった……」

「たぶん」

「相田さーん……!」


 しかし、そこで二人にとって予想外な事が起こったのだ。

 何と、2体のゴブリンジェネラルと、マスターゴブリンが膝を折ったのだ。


「あれって……何を?」

(ひざまず)いて……る?」


 直後、二人の耳に重厚な足音が届く。

 一歩、一歩ごとに八王子支部が揺れる。

 そんな異常事態に、相田と川奈は顔を見合わせる。


「何か、物凄い音が……」

「まるで……全てを壊しながら歩いてるような……」


 マスターゴブリンとゴブリンジェネラルの間に現れた存在。

 それは、ゴブリンジェネラルに酷似したモンスターだった。


「な、何だ……ゴブリンジェネラルじゃないですか……」


 川奈が言うも、相田によってそれは否定された。


「ち、違う……」

「ぇ?」

「キ、キング(、、、)……」

「キングって…………え?」

「ゴブリンキング……! Sランクの怪物よ……」

「ちょ、ちょ……ちょ!?」


 川奈の声が届いた訳ではない。

 ゴブリンたちは単純に相田と川奈の匂いを嗅ぎ取っていたのだ。

 そして、このレンタルルームにその匂いの元があると確信していた。


「「ガァアアアアアッ!!」」

「「ひっ!?」」


 まず、2体のゴブリンジェネラルが強化ガラスを殴った。

 ドゴンと音が響き、天井からは小さな埃が落ちて来る。

 ビクともしない強化ガラスに、相田と川奈はぎこちない笑みを浮かべながら互いに見合い、うんうんと頷いている。


((大丈夫大丈夫))


 次に動いたのはマスターゴブリンだった。

 廊下から助走をつけ、強化ガラスを蹴る。

 それは、ゴブリンジェネラル2体の攻撃力を上回る強力な一撃。

 耳を覆いたくなるような轟音がレンタルルームに響く。

 天井からは大きな埃が落ちるも、まだ……まだ相田と川奈の表情には笑みが残っていた。

 ――だが、


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!」


 八王子支部の全てを振動させる王の咆哮。

 相田と川奈は耳を押さえ、振動以上の恐怖から逃れる。

 そして――、


「「ぁ」」


 微かに響いたガラスの音。

 見れば、強化ガラスは中心に大きな(ひび)を作っていた。

 そう、王の咆哮は、マスターゴブリンの一撃よりも強力だったのだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「八王子支部が……?」


 額の汗を袖口で拭って言う玖命。

 その情報は、【大聖女】茜真紀から渡ったもの。


「えぇ、各避難所に派遣所の職員を一人ずつ割り振ってるそうだけど、支部には相田ちゃんが残ったって」

「相田さんがっ? ひ、一人でですかっ!?」


 茜の肩を掴み肉薄する玖命。


「ちょ、ちょっと? 近いよ、坊や……?」

「教えてくださいっ!」

「えっと……小さい【騎士】の女の子が一緒らしいわよ? うん、Fランクって話だよ」

「Fランクの小さい【騎士】……女の子……川奈さんか! え、二人っきり!?」

「そういう事だろうね。あそこが破壊されると各支部への情報伝達も、その逆も、八王子全域のネットワークに支障をきたすから」

「くっ! すぐに最後の(ポータル)を――」


 玖命がそう言いかけた時、一人の女が五人の前に現れた。


「や、玖命クン! 私の代わりをしてたんだって?」

「水谷さんっ!」


 そう、現れたのは【剣皇】水谷(みずたに)結莉(ゆり)


「水谷! 遅いぞ! もう伊達が7ヵ所の(ポータル)を破壊した後だぜ?」

「こっちはこっちで大変だったんですよ、山王(やまおう)さん」

結莉(ゆり)~? この坊や、結構強引でいい感じじゃない」

「ダメですよ真紀さん、玖命クンはウチには絶対入れません」

「なによ~そんなのどうなるかわからないじゃない」

「私が全力で止めるんで~――わっ!?」


 瞬間、先の茜のデジャヴかのように、玖命は水谷の肩を掴み肉薄していた。


「きゅ、玖命クンっ? ……な、なんだよぉ……?」

「家族と四条さんは無事ですよね!?」

「え? あ、あぁ、(みこと)ちゃんの高校に連れてったよ?」

「じゃあもう水谷さんが復帰って事でいいですよね!?」

「まぁ……で、でもたまには玖命クンと一緒に戦うってのもいいかも――って、あれ!?」


 辺りを見渡す水谷。

 山王、立華、茜、ロベルトは玖命の行先を指差し、水谷の視線を誘導した。

 そう、水谷が気付いた時には、既に玖命は駆け始めていた。

 疲労色濃き玖命が次に向かう先は、馴染み深い天才派遣所八王子支部。


(相田さん、川奈さん……無事でいてくれっ!)


 かくして、日本有数の実力者――【剣皇】水谷結莉(ゆり)の代役を務め切った玖命は、都合七ヵ所の(ポータル)を破壊し、その存在を【大いなる鐘】に刻み込んだのだった。

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