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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第二部

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第99話 ◆合同訓練3

 玖命が【聖者】一色(いっしき)(けい)に拳を打ち込んだ後、それを見ていた【大いなる鐘】の面々は、大きく目を見開いた。


「「っ!?」」


 玖命が赤鬼エティンを倒した実績がある事を知っている越田でさえも、その動きに目を奪われていた。


(無手で一色を倒しただと……!? プラチナクラスのローブを突き破る程の衝撃を与えて!? 彼に【拳士】の天恵はなかったはず。……いや、この短期間で得たとすれば、或いは……?)


 震えながらも、越田は眼鏡をクイと上げ、平静を装った。

 沈黙を破ったのはSランクの【武将】天音(あまね)(なぎさ)だった。

 困惑した様子で玖命を指差す。


「えーっと……Eランクって話でしたよね……?」

「強い……」


【聖騎士】城田(しろた)英雄(ひでお)は、一言で玖命への理解を示した。

 その大小に関わらず、その場にいる皆が玖命への認識を改めたのだ。

 そう、越田を含めて。


「……Eランクとは言いましたが、Eランク相当の実力だとは言ってませんよ?」


 天音への返答と共に、越田は自身が玖命をここへ招いた理由を改めて皆に周知した。


「よもやこの程度で終わらせるようなアナタたちではないでしょう?」


 そう言って、1班、2班の連中を煽ったのだ。

 すると、次に動いたのは最初に声をあげた天音だった。

 しかし、それを止めたのが一色と同ランクの【凶戦士】前園(まえぞの)彩香(あやか)だった。


「ダメ」

「えー、ゾノちゃん、それはないよーっ?」

「圭くんは油断してた。だから負けた。なら、最初から注意深く動けばいいだけ」

「勿論そのつもりだよ?」

「順序を考えるならここはAランクの私。でしょ?」


 前園の言葉を受け、天音は仕方なしという様子で口をへの字に結ぶ。

 訓練スペース内から、玖命が一色を担いで出て来る。

 完全に意識を失った一色を見て、前園の顔に緊張が走る。


「えっと……この後2対2でしたっけ?」


 玖命が聞くも、


「いや、伊達殿。ここは一度皆と戦ってからの方がいいでしょう。その方がチームを組む際に円滑にいくかと。それに、彼らが伊達殿に興味を持ったようで……」


 ちらりと仲間を見る越田。

 その視線にニヤリと笑う者、無表情を貫く者、闘気を剥き出しにする者――様々な反応に、玖命の顔がヒクつく。


「は、ははは……」

「ケイちゃん預かるよ」

「お願いします」


 天音が玖命から一色を預かり、【大聖女】(あかね)真紀(まき)に向き直る。


「マキさん、お願いしまーす」

「しょうがないわね……」


 言いながら、回復魔法を一色に施す茜。

 その効果は絶大で、気絶していたはずの一色がすぐに覚醒したのだ。


「すげぇ……」


 玖命は茜の回復魔法を見て、ただただ感嘆の声を零した。


「っ! あれ!? お、俺!?」

「はい、ケイちゃんおはよー」


 天音の腕の中で覚醒した一色。

 周囲の反応、自分の現状、訓練スペース内にいる前園を見て、一色は全てを理解する。


「……くそ」


 一色はただ俯き、玖命の顔を見る事を拒んだ。


「伊達殿、次は前園がお相手します」


 越田が玖命の背中を押すように言い、玖命もまたそれに従うように訓練スペースへと戻った。

 その中央で待つ前園を前に、玖命は小さく頭を下げる。


「よろしくお願いします」

「……圭ちゃんは油断しただけだから」

「ぇ?」

「私はそうはいかない……!」


 前園が二本の木斧を前後で構え、半身の状態で玖命を見据える。

 些かの油断もない前園に対し、玖命もまた無手で臨む。


「本気? 剣を使わないっていうの?」

「今はこちらを磨いた方がいいと思いまして」

「……後悔させてあげるんだから」


 前園がそう呟くと同時、スピーカーからブザー音が流れた。

 瞬間、前園は一本の木斧を投げ、玖命の顔面を狙った。


「やっ!」

「ふっ……」


 玖命はこれを足で払って弾く。

 しかし、前園はこれを予測していたかのように、もう一本の木斧を振り下ろした。


「はぁ!」


 振り下ろされた木斧が玖命を狙うも。


「……こう、かな」


 玖命のもう片方の足がそれを捌いた。


「なっ!? 読んでたのっ!?」


 両の木斧を弾かれ、前園の両手はがら空き。

 玖命は前園の前の手を掴んでそのまま(ひね)り、体重以上の力を加え、前園の身体を地に倒した。


「あっ!?」


 弾かれた木斧が玖命の正面に降って来る。

 玖命はもう片方の手でそれを取り、前園の眼前の地にそれを突き刺したのだ。

 直後、再びブザー音が訓練スペースに響く。

 正に圧倒的。その決着を見て、天音の目が躍る。


「私! 次、私だよね、代表!?」

「……あぁ、そうだね」


 口の端を上げながら越田が言うと、天音は我先にという様子で訓練スペースへ入って行く。

 俯きながらすれ違う前園に、天音はただ無言でやり過ごした。

 今は訓練の時、研鑽の最中に慰めは必要ない。

 天音はもとより、前園がそれを理解しているからだ。

 訓練スペースから出た前園は、仏頂面で越田を見る。


「良い起爆剤でしょう?」


 そう言った越田に、前園はそっぽを向く事で反抗した。

 それ以上の事は言えないし、言うべきではない。

 それはその場にいる誰もが理解していたのだ。


「Aランクは見事あしらいましたが、天音はSランク。……さて、どう対処するんでしょうね……」


 そう呟いてから、越田はブザーのボタンを押すのだった。

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