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モブは友達が欲しい 〜やり込んだゲームのぼっちキャラに転生したら、なぜか学院で孤高の英雄になってしまった〜  作者: 和宮 玄
第一章 入学試験編

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ビビアンカの存在

「……今仰られたように、俺はジント・ウォルド。D層の人間です」

「親はおらず、ユキノ・フレイザーとともに探索者として生活している……か。それは調べさせてもらった。だがね、私が言っているのはそういう意味ではないのだよ」


 身動きを取らず、俺が廊下の先を見たまま答えるとビビアンカは顔を離した。


「……では、どういった意味なのですか」


 転移先を知っていた件から素性を疑われているのだろうか。

 だが俺の関心は、アイシャの秘密を彼女が知っていることにあった。


 アイシャが【セントラル】の最高権力者、城主と呼ばれる人物の血を引いていることは、調べようとしたところで簡単にはたどり着けない情報のはずだ。

 ストーリーの終盤で明らかになり、ようやく都市の暗部に切り込む最後の展開だったのだ。


 いくら強者であるビビアンカとはいえど知る由もない。


「より、本質的なことを尋ねているんだ」


 俺の思考を遮り、ビビアンカは小さく瞳を揺らすと言葉を続ける。


「ギルドで聞いたところ、少し前から急速に頭角を現し始めたようだな。モンスターを倒し、剣を持ち込み、大金を稼いで学院の試験も突破した」

「一度停滞を抜け出し、動き出せばあとは早かった。運に恵まれました」

「本当にそうかね? 実技試験の際、私はお前の剣を理想に近いと言ったが、自分でも何故そう思うのかは理解できなかった。……だが先日、ふと気づいたんだ。目に焼き付き脳裏にチラつく誰かに、お前の剣が近かったから理想的だと思ったのだと」


 彼女は遠くを見るように目を細める。

 普段はトーンの変化が乏しい低めの声が、珍しく上擦っている。


「それがきっかけだったのか、蓋が開いたみたいに様々なことが駆け巡った」


 氷像と称される顔に柔らかさが覗き、以前から感じていた性格の変化を色濃くすると、眼前の教員は無理な様子で引きつった不敵な笑みを浮かべた。


「──お前も、私と同じ【ラスティ・マジック】をプレイしていた人間だろ。持っているその剣も、骸廃坑道に転移することを知っていたのも……ゲームでの知識があったからだな」


 呼吸が止まる。耳を疑ったが、何度反芻しても聞き間違いなどではなかった。


「……どういうことだ。それは、つまり……」

「先ほどアイシャの話をしたときのリアクションで確信したよ。元から試験の後に前世の記憶を思い出したため、お前とは合格発表日に話をしようと思っていたのだがね。まさか、あんなことになってしまうとは……」


 ビビアンカは懺悔するように目を伏せ、自分の身を抱くように右手を左肘に添える。


 到底彼女には似つかないしおらしさが、人間味を増させている。

 ゲームではなく現実だからこそ変化していくものだと理解していた性格の変遷は、かつての俺のように前世を思い出していたからだったのか?


 ビビアンカは改めて視線を上げた。


「過去の自分がしたことで、結果としてイベントを早まらせニックを死なせてしまった。ビビアンカ・スミスとしてではなく、前世の私としての心は後悔しているのだが……やり切れないな。記憶が蘇ってからでも、発表の日に彼を止められたら良かったんだが。それで……学院にいなかったはずの人物が、なぜアイシャと知り合い試験にも合格しているのか。ここで素直に聞かせてくれないか?」


 動かぬ強い確信を持った上で訊かれている。そのことが言葉の端々から感じられる。


「……そうだ。俺にも【ラスティ・マジック】をプレイしていた前世の記憶がある」


 もはや疑う余地もなく、同じ境遇の相手に俺は肯定した。

 こちら側から見ても発言に矛盾は感じられず、出会うことができた前世でプレイヤーだった人間には隠す必要性が見当たらなかったからだ。


 すっと瞼を落とした彼女は、数秒後に目を開けた。


「……やはり、そうだったのか」


 間違いはないと判断して質問したのだろう。

 だが実際に答えを聞くと、ビビアンカは目を見開き困惑するように苦笑する。


「お前の記憶が蘇ったのは探索者として頭角を現し始めた頃の話か?」

「ああ。俺の場合は机に頭をぶつけたようで、そのタイミングでな。理由はわからないが、きっかけであることは確かだ」

「ふっ、机に頭をか。しかし、ゲームの世界に生まれ変わっている理由はわからない……のだな。互いの状況を見るに、同じプレイヤーが全く共通点を見出せない人物になったようだが」


 質問に返答があるまで緊張していたのだろう。

 しばらくして事態を受け入れたビビアンカは、優しく笑うと顎に手を当てる。


「ビビアンカとしてのこれまでの記憶に、俺たちと同じような人物に出会った経験が残ったりしていないか?」

「……すでに思い出してみようとはしたが、なかった。そっちはどうだ」


 俺が首を振るのを見ると、彼女は腕を組んで壁に背中を預けた。


「そうか……。だが、過去に私は校長から『都市中枢の人間が気になる話をしていた』と聞いたことがあるようだ。その話には転生という宗教じみたワードがあったとか」

「転生……? そんな単語はゲームにも出てこなかったが」

「私もそう記憶している。つまり、現実となったこの世界特有のものと考えていいだろう。中枢の人間が話していたとなると、メインストーリーに乗って進めていくなどすれば、A層に近づき何かしれるかもしれないな」


 いくらか接しやすくなったように感じるビビアンカ。彼女の発言はもっともだった。


 A層は一部の上級貴族のみが住み、他は中枢と呼ばれる城があるだけだ。

 特別に認められない限り、一般人は立ち入ることさえ許されない。


 もしも生まれ変わったことに関する何らかの手がかりが欲しいのなら、都市の闇と戦うゲーム上のストーリー同様に進めれば良い。やがてA層に導かれるはずだ。


「……理由を知りたいのか?」


 俺が投げかけた疑問に、ビビアンカはゆっくり頷いた。


「自分がビビアンカ・スミスであることは受け入れている。今までの人生の記憶もあるからな。自分は何者か、そんな問いを持つことはない」


 彼女は自身の手のひらを見下ろし、それを握る。


「だが一方で、愚かにもニックという人物をあんな目に遭わせた自分──ビビアンカを咎める私もいるんだ。本当は彼も、学院にいるはずだったからな。……だからこそ、混ざり合った思考さえもが異なる二人の私が、存在する理由を探したいと思っている。教員を続けながらにはなるが、かつて夢にまで見たこの世界でな」

「そうか……気持ちはわかったよ。あんたも、相当この世界が好きだったようだ」


 自己の存在理由を明らかにするためと彼女は言ったが、加えて憧れていた世界で謎を追い求めないわけにはいかないと言っているようにも感じられる。


 おそらく、かなりやり込んでいたプレイヤーの一人だったのだろう。

 ビビアンカという外見には似合わないほどの真っ直ぐな熱意がある。


「お前はどうする。できれば協力者がいると助かるのだがね」

「俺はユキノと学院で力をつけていくつもりだ。危険を顧みることができていないだけなのかもしれないが、探索者として成長したいと思ったからな」

「そうか。ならばこの件は私だけで──」

「しかし、この世界で生きる以上は未知を追い求めるつもりなのは俺も一緒だ。やることは、探索者である今とさほど変わらないだろう」


 協力する姿勢を見せると、ビビアンカはにやりと笑う。


「前世から同じ穴の狢だったようだな。……先は長いだろうが、よろしく頼んだぞ」

「こちらこそ、先生」

「随分と失礼な態度になったものだな。お前たちのようなゲームでは存在しなかった人物が学院に入って、どう流れが変化するのか期待してるよ」

「存在しなかった……? ユキノはゲームではいなかったが、ジントはいたぞ」


 彼女はほんの少しだけ眉根を寄せる。


「どういうことだ?」

「ジントはD層の酒場にいたモブだ。まあ、残念ながらビビアンカのように元から力のある人物ではないから、頑張らなければならないけどな」


 ビビアンカが目を見開く。戸惑っていることがありありと伝わって来た。


「そんな場所にいるNPCの見た目まで覚えているのか? 私もかなり本気でプレイしていたが……お前は……。何と言うプレイヤーネームだった。同じ上位層であれば知っているかもしれない」

「プレイヤーネームか。俺のは──」


 俺が使用していた名前を口にすると、ビビアンカは鋭く息を呑んだ。


「お前……その名前っ!? 唯一ソロで上位層にいた『孤高』ではないか! ほとんどメッセージのやりとりもなかったが、フレンドだったぞ。お前とは……」


 その後、彼女が言ったプレイヤーネームは、たしかに成り行きで偶然なった俺の数少ないフレンドのものだった。


【ラスティ・マジック】をプレイしていたという共通点しかないと思っていた俺たちは、フレンドであり──。

 なんと彼女は、俺が最後にユニーククエストに誘うためメッセージを送ろうとしていた四人のうちの一人だったのだ。


お読みいただきありがとうございます。


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