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第8話 これが王というもの


「王女様、本当に()いのですか?」


「なにが?」

 アルデンが心配そうに眉を下げて私を見下ろす。

 アルデンの権限で門の外に出た私達。

 そう、王都の外だ、女王である私はもちろん騒ぎになるから身分を隠し、テオも首巻で奴隷であることを隠して王都を出た。


「いえ、初めて王都の外に出るでしょう?不安では無いのかと」

アルデンは私を心配してくれたようだ、確かに私リリアンは王都を出たことがない。けれど私は前世の記憶を持っているから外がどんな所か分かるし、危険もわかっている。


「大丈夫だよ、アルデンもノーチェもいるし!私を護ってくれるでしょう?」


「ふふ、信用されてますね。これは期待に応えないと行けませんねノーチェ」


「当たり前だ。私は王女を命をかけて守ると忠誠を誓ったのだから」

そうノーチェはアルデンに応える。ふふっとわらうアルデンは私の手を引いて進み出す。


「テオ?」

 震えているテオが立ち止まる

確かに、戻るとなると怖いのかもしれない、置いてきた方が良かったのだろうか。


「テオ…アルデンの屋敷で待ってる?」

 そういえば首を横に振るって真っ直ぐ前を見る

「いや、行く。」

 テオは決心したようにずんずんと前を進んで行った。


○東の森

鳥の声は聞こえるけれど、害のない魔物で元の世界で言う鳩や雀みたいな感じしかいない。本当に安全の森のよう。

しばらく整備された道のりに歩くとテオが横に外れる


「こっちだ、こっちの道をはずれた方」

茂みになっていたり道がとても悪い。すると突然ヒョイっと浮遊感が襲う


「アルデン!?」

私を抱っこしたのはアルデンだった。


「王女様を茂みの中に入れられませんよ。我慢してくださいね」

 っと言われる、別に平気なのに…


 しばらく進んだところでテオが茂みの傍にしゃがみ込み振り向いて小さな声を出す

「あそこだ、あそこの洞窟の中にいる」

 

 よく見ると確かに洞窟があって、焚き火の(あと)や馬車が止まっていた。


「奴隷商人が一人であの馬車を移動するとは思えません、仲間がいますね。ノーチェ王女様の護衛を任せれますか?僕が行きますので」


「えっ、アルデン1人で?」

 私をノーチェに託したアルデン。


「言ったでしょう?これでも冒険者だったと」


「アルデン殿。王女は任せろ」

 コクンっと頷いたアルデンは魔法を使ったのか姿が見えなくなった。


しばらくしてなにか爆発する音が聞こえはじめる

「お、おい大丈夫なのかよ」

 っとテオが耳を塞いで私に問いかけて来るが、私も何が起きているか分からないし…


「あの人なら大丈夫でしょう、魔法で敵う相手だとは思えません」


そう真っ直ぐ洞窟の方を見るノーチェ

 ノーチェがここまで言うとはやはりすごい人なんだろうな。すると


「うわぁー!逃げろ!走れ!走れー!」

 ジャラジャラと鎖の音を鳴らして大量の奴隷達が走ってくる


「ノーチェ!私の事はいいわ!ノーチェは奴隷達の安全を!逸れると大変だから1箇所に集めて!」


「ですが…!私は王女の」

「お願い、ノーチェ」


 そう、奴隷達がバラバラに逃げてしまったら大変な事になる、森を出たら危険な地帯があると聞くし


 ノーチェは奴隷たちを見て私の顔を見て、また奴隷達の方を見るとため息を吐いて私をそっと地面に下ろす


「いいですか?何があっても出てきてはなりません。テオ王女様を頼んだぞ」

 テオはコクリと頷く、ノーチェは茂みから飛び出すと奴隷達に声をかける、冒険者の格好をしているからか、ホッとした様子の奴隷が集まりだした。


 本当に沢山いる…エルフから獣人、人間や珍しい見た目をしているものなんかも。


テオは震えてまるで祈るかのように手を握っていた。

「!」

 私がテオの手の上に私の手を重ねると驚いたような顔をする。

「大丈夫だよ、テオ!きっと助かるわ。だってアルデンも強いしノーチェも強いわ!教えるのだって上手いしね!戦ったこと見たことないけど!」


っと言えば、

「ふは!戦ったこと見たことねぇのに強いだなんて言えんのかよ変なの」

 なんて笑いだした。


 するとしばらくしてアルデンが洞窟内から出てきたかと思うとズルズルと縛り上げられた男達を引きずって…いや、魔法で浮かせて運んできていた。


「アルデン!本当にやったんだわ!行こう!テオ」


 私はテオの手を引いて茂みから出る


「リリアン、この者たちが奴隷商人とその仲間のようです」

 今の姿と他人の前だからか名前を呼ぶアルデン。

指名手配されているから顔がわかるのだろう、私は知らないけどすぐに態度でわかった。

「てめぇ…!!てめぇか!逃げたのは!チッおい、てめぇらの管理不足だぞ!」

 テオの事をみて舌打ちをしたかと思えば周りの仲間たちに怒鳴りつける男、恐らくこいつが奴隷商人のモンドール


「くそ、冒険者の連中動くの早すぎだろ」

 っと仲間達が私たちを睨みつけた。


「僕はすぐに市街(しがい)騎士を呼んでまいります。」

少し離れたところで魔法を使いアルデンはその場から消える

 凄い!転送魔法?あれがゲームで使ってる1度通った場所にワープできる魔法かな?私もいつか使えるようになるかなぁ


なんて言ってると唾がかかりそうなほどに怒鳴り暴れ始める


「てめぇが!くそ…!仕置してやる!くそ…魔法が使えねぇ」

 なんて、仕置という言葉にビクッと体を震わせるテオ。

 実在に奴隷というものを知らない、現実世界でも…この世界でも。奴隷解放クエストはあったはずだけど、実際に怯え恐怖し体がボロボロになるまで使われ続けた。

 きっと、私の1年間のいじめなんて比にならないほどに辛かったことだろう、だって私は逃げる事だって出来たんだ。

 でも、テオ達は違う。逃げれず手を差し伸べてくれる相手もいない、希望なんて無かった。


 そんな中、テオが逃げたんだ。相当な勇気だったろう。

「テオ、大丈夫」

 テオの手をギュッと握るとハッとしたテオは落ち着きを取り戻す。

「暖かい…」

 暖かい?そう呟くテオに首を傾げる。


「くそ…」

 すると…


「えっ!」


「リリアン!!」

 ノーチェの声が響く。


いきなり肩を捕まれたかと思うと首にナイフの切っ先を向けられたのだ。

ヒュッ__そんな乾いた声が出る。

 私を掴んでいるのはモルドールだった。

 アルデンの拘束をどうやって?


 コロンっと落ちるブレスレットのようなものが見える


「はは、ようやく魔法無効のアイテムが取れたぜ…」

 どうやら魔法を無力化するアイテムを使った用だ。

ノーチェが剣を引き抜くと


「おっと…?動くなよ。こいつがどうなってもいいのか」

切っ先が首元に触れプスっと薄く皮膚が切れる

 うそ…アルデンの魔法が張ってあるはずなのに、無効化するアイテムは1度じゃなくて一定時間なのか!


「くそ…てめぇのせいだぞ!」

 ゲシッとモンドールは唖然としているテオを蹴って倒れ掛けたテオの背中を踏みつけた。


「ガバッ…!」


「奴隷ごときが…!ん?お前顔が整ってんなぁ、上玉じゃねぇか。言い値で売れそうだ」

 そりゃそうよ、今世の私めちゃくちゃ美人だもん!変装しているとはいえ、美貌は隠せない…!

 けど、そんな事今はどうでもいい。足が浮いて締められる首が苦しい。


「こいつが大切なんだろぉ?首と胴がおさらばする所見たくなきゃ寄るんじゃねぇ」


 なんて、ノーチェから一歩一歩下がる。ダメだ、私が人質に取られている以上、ノーチェは手を出せない!このままさらわれたら…きっと___。


 前世の記憶がフラッシュバックして吐き気を催す、いやだ___そんなの!


「イダァ!!!」

 私は男手を思いっきり噛み付く、すると反射的に手が緩み私は地面に落っこちる

 すぐに立ち上がって逃げようとすると


「いっ…!」

髪を引っ張られてしまった。


「てんめぇ…!ふざけた真似しやがって!!」

 すると__


「リリアンを…!リリアンを離せぇえええ!」

「テオ!?」

 

毛並みを逆立てたテオが男に飛びかかり、男はひっくり返る、その隙に離れると駆けつけたノーチェが私を背に隠す


「奴隷がっ奴隷ごときがよ!逆らうな!」

 その瞬間、バチバチバチっと赤い稲妻のようなものがテオを包む

「あ”ぁぁあ”!」

「テオ!」

 悲鳴をあげ焦げたような匂いが鼻につく。

「何をしたの!」

仕置(しお)きだよ!!」


 あれが?電撃のようなものが走るのがお仕置きだと言うのか、あれじゃ下手したら死んでしまう…!

バチバチとまだ光がテオから流れていく、やめて…やめてよ…!


《スキルを獲得しました使用しますか》


「お願い…!ノーチェ!」


「あれは止めれるものではありません!お下がりください」


《スキルを使用しますか》

「だれか…だれか…!」


 だれかじゃない…私が…


《スキル─魔法抑制(ディスペル)LV.1─を使用しますか》


なに、さっきから!

ポンッと目の前に出てくる、青いウィンドウのようなもの。

 これ…!ゲームで使ってたウィンドウと一緒のUI(ゆ-あい)!スキル?


「使う!使うわ!」

 その瞬間ポンッとゲームの決定音がしたかと思えば私の周りからキラキラした膜のようなものが広がっていく、

 巨大なシャボン玉のようで、私を中心にしてどんどんと広がり、モルドールとテオを包み込んだかと思えばテオの電撃が収まりテオはフラリと倒れる


「なに、これ!」

 これ…スキル?でもこんな魔法、見たこともない…!


「なっ、仕置(しお)きが!」

 驚いた様子のモンドールにノーチェが一瞬で距離を詰め、柄でモンドールの頭をゴン!っと突いた。

 ここまで響いてくる音…!相当痛い。

 モンドールは脳震盪を起こしたのか白目を向いてその場に倒れ、それと同時にアルデンが呼んできた兵が走ってくるのが見えた。


 私はペタンと地面に座り込んでしまう。

 こわ、怖かった…!


「王女、申し訳ございません。」

 ノーチェが駆けつけてきて、頭を下げた。

 

「いいの、私が悪いし…」

 私は手のひらを見つめる。

 スキル…これがこの世界のスキルなのね


 それから奴隷達は解放され一時的に保護され、商人達は全員捕まったのだ。


《レベルが上がりました》

 魔法抑制(ディスペル)のレベルがLV.2になりました。

基礎レベルがLV.15になりました。


 ○王の間


「どうしてですか!お母様!」


「なりません、リリー」

 ノーチェとアルデンは私が怪我をした責任を問われ謹慎(きんしん)となってしまった


「私が頼んだことなのです!無理に…私が行きたいと言ったから!止められたのに私が…」


「事情は知っています、テオという少年や奴隷達の解放のためですよね」

「そう!だから…!」


 お母様はドンッと王であるものに受け継がれる杖先を地面に叩きつける。


「いいですか、リリー、いいえリリアン。貴方は王女なのです、次期女王でもある。女王や王女の一声で民衆や兵も動き、一声で戦争にもなる。そして怪我を負わせてしまえば治るといってもそれは責任が必ず発生する。」


 厳しい口調のお母様はふと顔を緩め私を手招きする。

 階段を挙がって玉座(ぎょくざ)に寄るとそっと抱きしめられた


「いいですか、今回は謹慎で済みましたが、死罪も有り得るのです。王とはそう言うものなのです。」


 私一人の行動が国を変え、人を変える…

 一声で戦争が起き、一声で人が死ぬ。


「ごめんなさい…お母様」


「分かってくれてうれしいわ。」


 これが、王というものだ


《レベルが上がりました》

固有職業:王女 のレベルがLV.10になりました。


 

 

 



 

 


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