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第7話 手を差し伸べよう

○アルデンの屋敷


 アルデンは功績を(たた)えられ爵位(しゃくい)を与えられた正真正銘の貴族だ。だが使用人も持たずにずっと王宮にこもり魔法の研究をしているという。

 そして王都に彼の屋敷がある、今来ているここである


「わぁ、あんなに埃まみれだったのに」

 

 さすがアルデン、指をクルッと一振するだけで屋敷の明かりが灯り埃が舞う屋敷があっという間に綺麗になった。


「僕は王宮に籠っていますから、屋敷も土地もあるだけで使ってないのです。さぁこちらへ」


 アルデンが子供を抱っこして部屋に入る。客間のようにも見える部屋、アルデンが子供を抱っこして綺麗なベットの上に座らせた。


「ねぇ、名前は?」

「本当に王女なんだな」

 

 私の質問に返答はせずに私をじっとみたままそう言った子供。

 私の姿は元の姿に戻っていて、証である瞳も髪も(あら)わになっていてようやく信じてくれたらしい。


「無礼だぞ。」

 そう言ったノーチェを制する


「いーの、ノーチェ。私はリリアン!気軽に呼んでいいわよ」

「…俺は名前ない」

「名前ないの?」

 するとこくんと頷く。


「俺は産まれた時から奴隷だったから、名前は無い」

「じゃぁ名前付けてあげる!」

「は?」

 ポカーンっと口を開く


「だって名前ないと不便じゃない?別にいいよね?」


「…いいけど」

そうだなぁ、呼びやすい名前で…うーん


「あ、テオ!テオなんでどう?」


「テオ…」


そう私の言葉をオウム返しする。気に入らなかったかな…?


「いいな、それ。テオ!俺の名はテオだ」

 っと少し目が輝いたように見えた。どうやら気に入ってくれたようだ


「テオ。良い名ですね」

 アルデンは慣れたようにテオの怪我を消毒し魔法で治していく。


「痛くない…」

 嘘だろ?というように自分の体を見るテオに心が痛くなる。


「ノーチェ、テオを風呂へ」


「わかった、行くぞ」

「お、おう」


アルデンの指示によりノーチェはテオを風呂に入れてボロボロだった服もアルデンが急いで買ってきた綺麗な服に着替え、汚れた体も綺麗になった。

 もふもふな耳やしっぽが更にもふもふに…!


「それで、テオ。首輪の主の情報を頂けませんか?」


「うん」

 すっかり私達のことを信用してくれたテオは色々と教えてくれた。

 首輪の主はモルドールという奴隷商人らしい。なんでもテオの他にも沢山奴隷がいて王都の少し外を通った時に隙を見て逃げこの王都レイクに逃げ込んできたらしい


「ちょっと待て、レイクに入るには門番の厳しい審査があるはずだ」

確かに王都は高い防衛のための城壁(しょうへき)で囲まれているし…


「俺獣人だし、壁ぐらい登れる」


「えっ!あの高い壁を登ったんだ…!」

 え?あれめちゃくちゃ高いよ…?獣人の身体能力は凄まじいな…。


「モルドール…」

 その商人の名を聞いて顎に手を添えるアルデン


「知ってるの?アルデン」


「えぇ、確か指名手配をされている奴隷商人だったはずです。まさかこの国に来ているとは」

指名手配…有名な奴隷商人なんだ。

「ねぇテオ王都の近くってどんぐらい近く?」


「すぐそこの東の森…。洞窟に拠点を構えてんだ」


「なるほど、東の森は平和的でモンスターがほとんど居ません、ですので冒険者もわざわざ道をはずれて散策しないのです」


「へぇ…なるほど。だから拠点としては最高立地と…」


「王女、後は国の騎士に任せるべきです」


「でも、それじゃ遅いわ!」


「その通り、テオ良いですか?その首輪は主の命令を絶対服従する効力の他に。逃げられないようにする魔法がかかっています」


「逃げられない魔法?」

 っとアルデンの言葉に眉を(ひそ)めるテオ


「テオのように逃げ出す奴隷は多くありません、首輪を付けられても逃げて普通に生活してしまえばそれはもう首輪の意味をなさないのです。ですがこの首輪の魔法、首輪の主は奴隷がどこにいるか把握できるのです。」


 それに目を見開くテオ、その様子からして知らなかったらしい。

「沢山奴隷がいるからテオ、一人いなくなった所ですぐには気づかれないでしょう。ですが、首輪は奴隷と主を繋ぐもの、奴隷に罰として魔法で苦しめる事が可能なのです。遠距離でも…ね」


 冷や汗を流したテオが震える手で首輪に手を添える

 その怯え用はきっと首輪からの『罰』というものを受けたことがあるのだろう。


「じゃぁ本当に時間が無いね、騎士もすぐ動いてはくれないし…。気づかれる前に何とかしよ!」


「賛成出来かねます。勝手に動く事もそうですが、王女。貴方は王女の身分をきちんと理解するべきです」


「うっ…」

 ノーチェの言っている事は正しい。

 けど、


「けど、ノーチェ。私は見捨てれない!例え危険だとしても。王女だとしても!!手を差し伸べた以上最後まで責任を取りたいの!」

 声を少し荒らげてしまう。

 そう、手を差し伸べくれる人なんていなかった。

どんなに目を向けても助けてくれた人なんて__だがら、私は助けた、そして手を伸ばしたんだよ。それなのに見捨てるなんて__

 

私は見捨てられる苦しみを知っている!


「…」

 無表情で私のことを見つめるノーチェ私も目を逸らさなかったが、先に目を逸らしたのはノーチェだった。

「はぁ、仕方ありませんね。王女は頑固ですから」


「ほんと!やったァ!!」





 



 

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