第十八話 ダンジョン
「俺はキル 職業は盾使いだ。よろしく!」
「あたしはロア! 治癒士だよ。異世界人さん!よろしくね!」
「俺は剣士のエリック前衛役だよ、まぁ…そんな不安そうな顔しないでよ」
集まったマリコ達にそう挨拶した3人組。
冒険者___。この世界の各地を冒険者し、依頼をこなす者たちをそう呼ぶ。
キルは鎧と見たことも無い装飾のされた盾を持ち、キルもロアもファンタジーの漫画やゲームでしか見たことの無い持ち物を持っている、ただコスプレという訳ではなく、しっくりくるし、何よりも使われた形跡がある装備だからか馴染んでいる。
それに比べてマリコ達は皆国から配られた装備を着ていた。数日間の戦闘訓練を行ったと言っても実践はやはり不安で緊張するのだろう。
「まぁ、俺たちはDランクだしダンジョンは初心者向けの簡単な場所だから安心しなよ。」
エリックが近くにいるタケルの肩をポンポンっと叩く。
「あ、あの…」
手を挙げたカオリに首を傾げるエリック
「君は…他の人と違って大人だね?異世界人だよね?」
「は、はい。この子達の先生です!」
「あぁ!なるほのね。どうしたんだい?」
「Dランク…とはどのぐらいのランクなのでしょう。」
確かに…っと頷くカオリ。
そういえば説明していなかったと、ゲームをしていたマリコとミサはうっかりした顔をしていた。
「そっか、分からないよね、ランクはSからFまで7段階!依頼をこなし世界に貢献することで上がるんだ。もちろん報酬も違うし、待遇も変わる。依頼はランク関係なしに受けれはするけど、受付や依頼主に断られることが多いから、適正ランクの依頼をこなすのがいいよ。」
「あの!もうひとつ質問なんですが!エリックさんたちはそのいわゆるパーティってやつですか?」
カオリに便乗してソウタも手を挙げ質問をすると、ニコリと笑うエリック
「うん! いい質問。そうだよ、俺たち3人はパーティを組んでいて、一緒に各地を冒険してる。前衛とタンクに後衛。あと依頼によってはギルド内で一時的なメンバーを募集してパーティを組んだりしてるんだ、今回はFからEラングが適正の依頼だからね、受けることにしたんだ」
「あの…それで、なんでこんな所で待ってるんですか?」
タケルが疑問に思うのも仕方ない。
王都レイクを出た巨大な塀の横で立ち止まっていたのだ。
「あー、いやさ。もう一人来るって聞いてたんだよ」
「募集したお仲間さんですか?」
ソウタは門の方に目を向ける。すると
「すみません〜!遅れました」
っと、弓を背負った女性が走ってきたのだ。
「あ、君がリリスちゃん?」
「はい、宮廷魔道士のリリスです。どうぞよろしく」
エリックの元に走ってきて握手をかわし女性はソウタ達の方を振り返る
「初めまして、宮廷魔道士のリリスです。冒険者さんの補助と、召喚者達の補助をするように女王陛下から頼まれやって来ました。ダンジョンは初心者ですが、補助は任せてください」
「おー!そりゃ助かるよ。この人数守るのはちいときちぃからな」
「アルデンさんじゃないんですね?私達の補助をしてるのはアルデンさんかと…それに魔道士なのに弓…?」
っと、マユコがリリスの背中の弓を指さす
「あぁ、簡単に言えば魔法の弓使いなんです。それにアルデンさんは女王陛下の宰相も担当しておりますから、今回は予定が合わなくて!」
っと笑う。
「まぁ、話は歩きながらにしよう、暗くなる前に森を抜けねぇと。みんな!いいか。ぜっったいにはぐれるなよ?」
集団で歩き出すマリコ達
少しふりかえったエリックは苦笑いをうかべる
「なんだ、騎士みてぇだな。そんなピシッと並ぶの」
綺麗に2列になっている光景が珍しいらしい。
「まぁ…癖というか…」
っとソウタが頬をかく
「ダンジョン楽しみだよなぁ、でも俺戦闘スキル全然ないけど」
ソウタの隣を歩くトウヤが頭の後ろに手を組む
「ん?君は剣士じゃないの?」
っとエリックが振り返る
「え?俺はーって…いててて」
ソウタに耳を引っ張られるトウヤ、ごにょごにょと話すソウタに
「あっ…そうだった」っと小さくこぼしたトウヤはニコリとわらった
「いや、戦闘系の職業だけどー、スキルがいまいち使い慣れなくて!」
「はは、そうだなぁ、最初はそんなもんだよ。そのうち息を吸うように使えるようになる」
「……」
リリスはそんな2人を横目に口元を少し歪ませた
〇ダンジョン前
「よーし、みんないいか?ダンジョンについて軽く説明する。」
エリックが止まり皆の方を振り返ると、皆はピタリと止まってそれぞれ顔をのぞかせる
「これが…ダンジョン」
マリコ達の前には、整備された道に巨大な石の扉が設置されていた。
「そう、ここがダンジョン。本来は扉は無いが勝手に魔物が出てこないように国が扉を作ったんだ」
「あれ?でも、勝手に出てこないように定期的に討伐するって…」
そう、マリコが疑問に思うのは、アルデンがそう説明したからだ
「そう、合ってるよ。普通の魔物じゃこいつは破れない、けど強い魔物は下の層に産まれ他の魔物を喰らいながら上へと目指してくる。餌が無くなるからだ、そしていずれこの地上に来る。そしてそういう魔物はこの扉なんて意味無いのさ」
この中に___魔物がいる。
ゴクリ__。誰かが息を飲む音が聞こえる
「心配すんなって、ある程度戦わせて帰るからよ。実戦を学ぶ、なにも最下層のボスを倒しに行けって言ってんじゃないんだから」
そう言ってエリックは簡単に扉を開いた。外からは簡単に開くようになっているらしい。
すぐに魔物が飛び込んでくるかと思いきや、そういうことも無い。
「意外と明るい…」
ダンジョン内の壁は壁画のようになっていて何か見知らぬ絵や模様が描かれている、マリコは壁の少し上の方を見上げると火が点っていた。
「完全密閉の洞窟に火が…酸素とかどこから…」っとソウタが首を傾げる。
「ここは1階層、罠があるから気をつけろ。」
ピタリと止まったエリックは壁の1箇所を指さした。
「いいか?罠はわかりやすい、こういう壁の色が違うところ、床の色が違うところ。絶対に触れるな。何が起こるかわかんないからな」
「「はい!」」
皆が返事するのを聞いて再び前に進む
マリコの隣にミサが駆け寄ってきた
「ねぇ、マリコ、やっぱゲームと少し違うね。始まりの国のダンジョンなんてあったっけ」
「うーん、なかったとおもうけど…アルデンさんがダンジョンは自然発生するって言ってたし、私達が知っているのとは違うのかも…?」
「知ってるところならギミックとかわかったんだけどなぁ」
すると────
「止まれ!!」
先程とは違い緊迫した空気が流れる
「な、なに?」
マリコは列から横にずれて前の方を見ると。
「グルルゥ」
「あれは…確かブラックウルフ…!」
雑魚中の雑魚、チュートリアルで倒す魔物と一緒だった。
黒い毛並みを逆立てるウルフ。
エリックは剣を抜き後ろから盾役のキルとロアが駆けつける。
「よし、こいつは初心者向けだ、誰かやろう!大丈夫。ヘイトはキルが向けるからその隙に斬ればいい!」
そう言われても…っと顔を見合わせる皆だが
「俺がやるぜ!」
っとタクミが剣を持ってエリックの隣に立つ。
「おっ!勇気あるな!いいぞ?どんどんやろう、キル!」
「おう!」
キルが何かボソボソと詠唱を唱えると盾が赤く光る。
その瞬間にウルフがキルの方に飛びかかる
「ひっ!」
小さく声を上げるソウタ
だが、ウルフはガツン!っと盾に体当たりするだけで、キルは無傷だった。
「大丈夫だ今のうちに斬れ!」
タクミは少し震える手でギュッと剣を握る
「やってやるぜ…!!はぁぁあっ!!」
ウルフに向けて上から下に剣を振り下ろす。
その瞬間ザンっ!という音と共にウルフの鳴き声が聞こえなくなった。
「やった…?」
血が流れウルフは胴が2つに分かれていた
「おう、死んでるな。流石だなぁ!」
タクミの背中をバンバンっと叩くエリック
「筋いいよ!」
「へへ、まぁな!」
「きゃータクミかっこいー!」
っとアイコがタクミに抱きつく。
「本当に…しんだ」
魔物が、本当に__。口元を抑えるソウタ
「大丈夫かよ、副委員長…」
っとトウヤが背中をさする
「私もちょっと…」っとさやかも青白い顔をしていた。
「えぇ?委員長も副委員長も大袈裟じゃない?魚とか捌けないんじゃないの?」っとユイが大袈裟な…っと2人の背中になげかける
「そーだぜ、これからこういうのが出てくんだから。それにやられなきゃこっちが死ぬだろ?」っとタクミが剣を鞘におさめた
「そうだぞ、そんな事で躊躇してたら命取りになる。やらなきゃやられるんだ。」
「あの…」
そこで黙っていたリリスが恐る恐る声をかけた
「なんだ?」
「エリックさん…足」
「足…?」
リリスが指さしたエリックの足元。
ガゴッ
「あ…」
エリックは床の罠を踏みつけていた。
「馬鹿野郎エリック!!てめぇ」っとキレるキルに、「ごめん!ほんと、油断してた!」
「もー!!みんな!気をつけて!」
っとロアが杖を構え___
ゴゴゴゴ
「ひゃ!なに?地響き?」
ミサがバランスを崩しかける
パラパラと天井から石が落ちてくる
「まずい…崩れるかも」っと天井をみたエリックが顔を青ざめた
「みんな!!入口まで戻るんだ!後ろの人!走れ!!」
ソウタが大きな声をあげた瞬間に皆はいっせいに走り出す
「きゃっ…!」
カオリが転んで地面に手を着く
「モリッチ!邪魔なんだけど!」
後ろにいたアイコとタクミはカオリを一睨みして走り去る
「大丈夫かよ、センセイさん」
エリックはカオリを起き上がらせるとカオリは再び走り出し、先に向かう。
「キル、ロア!先に行って異世界人を守ってあげてくれ!」
その声にキルとロアは頷き先頭の方へ。
自身のように大きく揺れ始め地面に亀裂が入る
「まって…これはやばいんじゃない?」
ミサはまだ入口が遠い事に顔色を青くさせた。
まずい_____
ガラガラッと崩れる音が聞こえてくる。
後ろは振り返れない
「ちょっと!早く行ってよ!」
「押さないでユイちゃん…!」
ユイはマリコとミサの間に入ろうとするが道が狭いからか通り抜けれない
「きゃっ!!ちょっとユイ!!」
「いった…!」
「ミサ!ユイちゃん!」
それに足を取られたミサが転び、ユイも一緒に転倒、マリコは止まって振り返る。
「何してんだ!さっさと立てよ!やべぇって!」
後ろにいたサヤカ、トウヤ、ソウタ、タケルが2人を起き上がらせようとする
「早く起きるんだ!」
エリックが精一杯力を入れユイを起き上がらせる
「えっ_____」
そんな間抜けな声を出したのは誰か。
そんな事をしている暇にマリコの…いや、マリコ達周辺の床が崩れ落ちた。




