この先のやつは『ヤバい』
なんとか間に合いました……30話まで毎日更新頑張ります!
光魔法LV1『ライトニング』の魔法を使い、辺りを照らしながら、俺は洞窟の奥へと入っていく。
便利だな、この魔法。もう松明いらずってところか……
『ライトニング』の魔法は先ほどゴブリンメイジから奪った魔法だ。
自分の頭上に明るく輝く球体を浮かせ、周りを照らす……ダンジョン攻略にはかなり重要なものである。
パーティにいるとかなり重宝されるよな……光魔法……
持っていることがわかれば数多のギルドからスカウトが来るはずだ。
時折り、殲滅し損ねたゴブリンが飛び出してくる。だが、どんなに隠れていようと『気配感知』のスキルで丸わかりだ。
飛び出した瞬間に俺は『黒金の小太刀』をその頭蓋に叩き込む。
こうやってどんどん奥に進んでいった先に……このダンジョンの最奥……大きな空間が空いている広場にたどり着いたのだった。
◆
広い……とんでもなく広い……
こんなダンジョンにこんな広場は普通ないだろう……改めてここがダンジョンキーが作り上げた、現実とは異なるダンジョンだということを認識させられる。
『ライトニング』で照らしてもその全貌が分からない……なんかこういうの見覚えあるな。
あぁ、この力を授かった時……ん?まてよ??
となると……この先は……
ボス?
ゾクリ
いつもの嫌な感覚。『気配感知』の悪寒が走る。
襲いかかってくる気配はない。だが……スキルが告げている。
この先のやつは『ヤバい』
と。
とはいえ逃げる事はできない。逃げる時は……死ぬ時だ。
クリアするか、それとも死ぬか。その二択しかないのだから。
俺はアイテムボックスから「黒金の小太刀』を取り出す。そして、意を決して奥の方に向かっていった。
◆
そこにいたのは、『オーガ』だった。
ゴブリンなんかとは比較にならない上級モンスター。
『ゴブリン』の親玉は「小鬼』ではなく『大鬼』という事なのか……?
しかも……普通の『オーガ』とはなんか違う気が……?
『オーガ』よりも一回り身体が大きいし、なんか肌の色も変化している様な??
俺は『神眼』で能力値を確認し……その結果に絶句した。
◇◇
ハイオーガ
Aランク魔獣
体力2500
魔力0
攻撃力2500
防御力3000
俊敏性600
スキル 剛腕
雄叫び
◇◇
ちょっと待ってくれ!
Aランクだって!?
そんなの俺になんとかできる相手じゃないぞ。
そもそもAランクなんて個人で倒す相手じゃないじゃないか。
そんなことを考えていた時。
ギョロリ。
ハイオーガの目玉が動き、視線がこちらを射抜く。その目と目があったその瞬間。
『グオォォォォォォォォォオォォォォォォォォォ』
「ぐっ!!」
オーガが地鳴りの様な叫び声をあげた。それを聞き、足がすくむ。
動かない……これが奴のスキル、『雄叫び』か??
すくんだ足に気を取られた瞬間……視線を前に向けるとすでにハイオーガは俺の目の前に立っていた。
い…いつの間に??
「ガァアアアアアア!!」
奇声を上げ、ハイオーガは拳を振り下ろす。
「ちいっ!」
俺は咄嗟にソウルイーターのシールドを展開した。だが……
バキン!!
だがソウルイーターのシールドは破られて、俺は遥か後方へと弾き飛ばされる。
「がはっ!!」
地面に叩きつけられ、一時的に呼吸ができなくなる……
……これ、ソウルイーターとロックリザードの鎧じゃなかったら死んでたやつだ……
この力が『剛腕』ってやつか……とんでもない攻撃力だな……
それにしても装備って本当に重要なんだね。勉強になったわ……って、そんなのんびり考えている暇はない。さぁ、どうするべきか……
俺は『黒金の小太刀』を構える。
そして同時に『身体強化』のスキルを使う。力が全身に湧き上がってくる。本当に貴重なスキルだ。
ハイオーガが動く。だが、身体強化された俺の方が絶対に速いはず。
「スピードを使って削り取ってやる」
俺はそう1人で呟くと、その瞬発力を生かしてハイオーガに飛びかかった。
ハイオーガは夢中で手を伸ばし俺を掴もうとするが……スピードでは俺の方が上だな。
腕を、足を、胴を、首筋を……捕まれないよう、その腕をかわしながら俺は様々な箇所を何度も斬りつけた。
だが……
(硬すぎる……)
どの部分も傷一つ付かないのだ。
埒が開かず、俺は改めて距離をとった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
息が上がる。そして決め手にかけることで焦りが募っていく……
「まだ、一つ方法がある……か」
そう呟くと俺は「黒金の太刀」を腰に据え、呼吸を整えた。
数撃ってダメなら、強烈な一撃を加えたらどうだ??
俺には『暗黒剣』がある!!
「暗黒剣『紅』!!」
これならどうだ……!身体強化も合わされば絶対にいけるはず……!!
俺は、全力のスピードでハイオーガの手をすり抜ける。狙うべき首筋が露になる。
貰った
そう思った。だが、ハイオーガはその首筋を鉄筋の様な腕で防いだのだ。
しまった!
それを見て俺は焦った。これでは一撃で仕留められない……と。
だが、ここで止めることもできない。
全力で振り下ろされた剣は、ハイオーガの二の腕に吸い込まれる様に入っていった。
「ギャアアアアアア!!」
ハイオーガの悲鳴がフロア内に響き渡った……
奴の腕が血飛沫を上げて空を舞う。だが同時に……
「しまった……」
俺の『黒金の小太刀』もまた、その刀身が粉々に砕け散ったのだった。
◆
(ま……まずい……)
片腕がなくなったハイオーガは憤怒の形相でこちらを見ている。
奴の腕からは血が絶え間なく噴き出ていた……が、まだ片手は健在であり、片腕だけでも俺の頭を吹き飛ばすパワーが残っているだろう……
対して俺は。
俺は砕け散った『黒金の小太刀』に目を向ける。
武器がない……どう考えても今の俺に勝ち目はない。
「ははっ詰んだな……」
そう自嘲気味に笑った時……俺はある事に気がついた。
「まてよ。俺にはこれがあるじゃないか?」
俺は己が両手を眺めながらそう呟く。
そう、俺にはまだ攻撃をする手が残っている。
黒い手甲『ソウルイーター』
これこそ、俺に残された最後の希望であり、生き残るための唯一の手段だ。
俺はそれを見て覚悟を決めた。
見てろよ……今からお前の生命力、全部吸い取ってやるからな……




