まずは暗黒剣士から始めようか
紅に染まったワーウルフ亜種の死体が地面に倒れる。その瞬間ワーウルフの身体が輝き、奴の死体から光の玉が浮き上がった。
その光の玉はホワホワと浮いたかと思うと、俺の方に向かって飛んでくる。
「うわっ!!」
思わず悲鳴をあげてしまった。
そして光の玉は俺の胸にぶつかったと思うと、急に溶けてなくなってしまった。
「ど……どうなってんの??」
そう思った瞬間。今度はダンジョンの景色が壊れ始める。
なんか色々とありすぎてついていけないぞ!?
「………!?」
驚いて目を瞑り……そして再び開くと、そこはすでにダンジョンではなく、元いた孤児院裏の森の中だった……
呆然と佇む俺……いや、そうだろう?ワーウルフ亜種を倒してからここまで、わずかな時間しかなかったぞ?ちょっとは考える時間をくれよ……
(これは……ダンジョンをクリアしたという事か?)
そう思った瞬間……俺の目の前に画面が現れた。
◇◇
チャレンジダンジョン LV1 クリア
◯報酬◯
ワーウルフの牙×5
ワーウルフ(亜種)の毛皮
帰還玉
ポーション×3
全てアイテムボックスに入りました。
ダンジョンキーがLV2となりました。
◇◇
んん?これってダンジョンクリアの説明だよな……うん、やっぱりすごい親切。分かりやすい。
これって『神眼』の力?それとも『ダンジョンキー』の力??まぁどっちでも良いか。
とりあえず、分かったこと。
このダンジョンではドロップ品はこうやって手に入る……という事か。
ってワーウルフの牙や毛皮って……高価なものだけど、どこで売れば良いんだろう??
冒険者協会に行ったらおそらく怪しまれそうだし……うーん、悩む。
毛皮は防具などに使えるとして、牙は売っちゃいたいな。
帰還玉とポーションは嬉しい。これは使える。
しかし……まさかあんなに辛い目にあうとは思わなかった。チャレンジダンジョン……完全に対策不足だ。LV2を行う時は準備をしっかりしないとね……
次に俺は自分の状態を確認した。
左腕の傷はさっきゲットしたポーションをかけた事で回復。とりあえずは大丈夫そうだ。
あんなの見せたら院長とリーシアがぶっ倒れるって……
「ステータスオープン」
そう言うと、俺の能力が画面に現れた。
◇◇
アルス
職業
暗黒剣士 LV10
死霊術師 LV1
魔物使い LV1
LV20
体力880
魔力800
攻撃力810
防御力730
俊敏性850
スキル
暗黒剣「紅」
ネクロマンシーLV1
モンスターテイムLV1
神眼LV2
アイテムボックスLV♾
ダンジョンキーLV2
強奪LV1
気配感知LV7
身体強化LV1
◇◇
おぉ……とんでもなく能力があがってる….俺、もうB級冒険者レベルだ。
というより、この能力の上がり方…ちょっと異常じゃないか?
これってLVでいったら30ぐらいの能力だぞ??
レベルが一気にあがったのは、あのワーウルフがすごい経験値があったから……だとして、この異常な能力の上がり方は暗黒剣士の職業のおかげかな??
んん?あれれ??身体強化??あのワーウルフ(亜種)が使っていたスキルだ。なんで持ってんの??
そう思いながら……一つ、思い当たる出来事。暗黒剣を出した時……俺の腕が光ったんだよね。そして倒した後、ワーウルフから飛び出した光が俺の中にも。あれがそう?なら……なんで。
可能性としては……この『強奪』スキルか??
俺はそう結論づくと、『神眼』で『強奪』の能力を読み取った。
◇◇
『強奪』
相手のスキルを『強奪』するスキル。確率に変動はあり。LVによってその確率が変わる。
相手の命を奪う時、スキルを奪うことを念じれば、それを手に入れる事ができる……かもしれない。
◇◇
ちょっと待って。なにこの能力。
なんかとんでもない奴だな……スキルの複数持ちってだけで、パーティやギルドでは重宝されるのに。
俺、このままいけば無限に持てるって事か。
魔法系のスキルも戦闘系のスキルもなんでもありじゃん。
スローライフしたい時は農業系のスキルもいける??
とはいえ……命を奪う必要があると考えると考えようだな……流石に人からは奪えないよな……となるとモンスターか……
ただ、今回の事でとんでもない事がわかった。
一回でもこのダンジョンを、クリアすると……俺はとんでもなく強くなれるという事。
暗黒剣士の職業もさる事ながら、他の能力も凄まじい。
『神眼』や『強奪』なんかは反則に近いスキルだと思う。
そしてこのダンジョンキー。
LVアップに最適なモンスターが現れる……俺のために用意されたダンジョンといって良いだろう……
っていうか。
これを繰り返したら……S級になる事も夢じゃないのではなかろうか?
異常なまでに高くなる能力。
いくらでも手に入れる事ができるスキル。
そして3つの職業。
こうなると死霊術師や魔物使いの能力も気になるところだけど。
まずは自分が強くなる事を意識しないとな。
なら……このダンジョンキーを使って、ダンジョンに潜り……
「まずは暗黒剣士から始めようか」
俺はそう口にすると、思わず笑みが溢れる。
今まで熱望しても届く事がなかった『成長』というもの。
それを実感できている充実感。
まるで永遠に続く暗闇の中から、出口に向かう一筋の……それもとんでもなく明るい光の道を見つけた気分だ。
「とりあえずエリックにアイテムは相談しよう。後は……少しは装備を新調したいな……」
ダンジョンキーLV2をクリアするために、今回はしっかり準備をしよう。
俺は拳を力強く握りしめると、孤児院の方へゆっくりと戻っていくのであった。
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