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禁断恋愛れぼりゅーしょん  作者: 如月まりあ
2/3

朝の始まり

【ピピピピ…】


朝日が差し込部屋にひよこ型目覚し時計の音が鳴り響く。


「う~……」


もぞもぞと布団の中で動く物体。


うめき声の後にベットの中から腕が飛び出して


≪バシっ!≫


ひよこの頭を叩く。


「う~ん……」


蒲団の中がもぞもぞ動き、やがて


「…朝か」


呟きのような小さな声が聞こえた後、布団の中から少女が姿を見せた。


少女は軽く背伸びをすると、窓にかかったカーテンを、シャッと勢いよく開ける。


「うわっ、まぶし!」


少女の部屋には、朝日が差し込み部屋の中が軽く靄がかかっているようだ。


「さて…と」


少女はタンスを開けて、制服を取り出す。


彼女が着替えをしている間に紹介しておこう。


彼女の名前は、藍沢梨花。今年、大学受験を控えた。高校三年生である。彼女の家庭環境は、実はとても複雑なのだが、それはおいおい説明しよう。


梨花は、ブルーのリボンがかわいらしいセーラータイプの制服に着替えると、部屋から廊下に出て廊下の突き当たりにある居間に入る。


「おはよう、梨花ちゃん」


中年の女性が梨花を見ながら声を掛ける。


「おはよう、真由ちゃん」


欠伸をしながら答える。


ちなみに、この女性は梨花の母である。かと、言っても血が繋がっている訳ではない。                                       


彼女の両親は、梨花が二歳の時に離婚している。この女性は、梨花が四歳の時に父親と再婚した相手だが、梨花が彼女と暮らすようになってまだ五年半なのだ。梨花は離婚当初、母方の祖母の手で育てられていた。


母親の有華が仕事人間だったからだ。梨花も祖母が好きだったので、そんなに苦ではなかった。


父親が再婚して、梨花を引き取ると言い出した時も嫌がる程、祖母が大好きだった。


しかし、梨花が小学六年生の時に祖母が持病である心臓病で入院した時に事態は急変した。


梨花の親権で両親がモメたのだ。


その時の祖母の一声で父親の家庭に引き取られる事になったのだが、その時には、梨花には血の繋がらない弟と血の繋がる弟がいた。


その弟達には、幼い頃から父に連れられて遊びに来ていたのですぐに打ち解けたが、義母である真由に『おかあさん』と呼べずにいた。


すると義母である真由は『無理にお母さんと呼ぶ必要はないからね』と、優しく梨花に言った。それ以来、真由とは友達のように仲良くしている。


「真由ちゃん、手伝おうか?」


梨花がいうと、真由は首を横に振ってから


「いいわ。もう、出来ているから。それより、佑斗と拓斗を起してきてもらえないかしら。お父さんは、もう起きていると思うけど」


梨花は、思いっきり嫌な表情になり、


「え~やだよ。拓斗はともかく、佑斗は寝起き悪いし」


と、言うが、真由は梨花の抗議を無視して


「ほら!朝は忙しいのよ。早く、起してきて」


叱り付けるような口調で言うと、梨花が肩をガクリっと落として


「毎朝、毎朝、大変なんだぞ」


小さな声で呟くと居間から引き返して自分の部屋の前を通り過ぎる。そして、まずは自分の隣の部屋を、


『ドンッドンッドンッ』


 と、ノックして


「拓斗、拓ぅ、起きなさいよ」


言った後で、もう一回ノックする。すると、中から


「ふぁ~い」


と、寝呆けた声が返ってくる。


梨花は、それを


(よし!)


と、確認するとその一つ向こう側の部屋のドアをノックして


「佑斗、佑斗、時間だよ」


とは言っても、中から返事はない。


(ん、もう!毎日毎日これなんだから)


そう思いながらドアを開ける。


「ほら、佑斗、起きなさいよ」


言いながら、布団をゆすると、中から小さなうめき声が聞こえた。


「もう食えない」


中から声がした。


「何を寝ぼけてんの?さっさと起きなさいよ」


そう言ってもう一度蒲団をゆする。


「梨花、朝からうるさい…」


呻くような声が蒲団の中から聞こえてくると


「佑斗、ほら起きなさい」


そう言いながら布団を剥がすと高校生ぐらいの少年が背中を丸めて横たわっている。


藍沢佑斗―梨花の血の繋がらない義理の弟である。


「梨花……寒い」


ちなみに今は6月である。


「何を年寄りくさい事を言ってるの。あんた、十六でしょ?」


「うるさい…」


梨花は、腰に手をやり


「さ、早く起きて着替えなさいよ」


薄目を開けた佑斗は、ちらりと梨花を見てから


「梨花、ババくさい」


言った瞬間、梨花の鉄拳が佑斗の頭を直撃する。


「いってぇ!何すんだよ!」


佑斗と飛び起きながら頭を押さえる。


「わざわざ、起こしに来た親切なお姉様に失礼な事を言うからでしょ」


佑斗を上から睨みながら言うと


「ババァにババァって言って何が悪いんだよ」


梨花は、佑斗のほっぺを抓ってから


「うるさい。さっさと起きな」


そう言ってから佑斗の部屋から出て行く。


佑斗は、梨花が出て行ったドアをみつめながら、やがて笑みを浮かべた。


それを廊下にいた梨花が知る筈もない。


(まったくもう、佑斗ってば毎朝毎朝)


と、しかめっ面で歩いていると、ちょうど洗面所から出てきた拓斗が


「姉ちゃん、朝から眉間に皺寄せてなにしてんの?」


そう言ったが、梨花の一睨みで、


「さて、朝ご飯っと」


と、惚けた顔で梨花の前を通り過ぎていく。


居間に着くと、テーブルには父・隆が新聞を見ていた。


「お父さん、おはよう」


梨花が言うと、父は新聞からひょっこりと顔を出して


「おはよう。梨花も毎日大変だな」


にこにこしながら言うが、


「じゃあ、明日から佑斗と拓斗を起こすの、お父さんがしてよ」


ご機嫌斜めの梨花が、ムスっとしながら答える。


隆は、新聞で顔を隠してから


「佑斗は、中学に入るまでは寝起きがよかったのにな」


惚けるように言う。


「そうよねぇ」


そういう相槌を打ったのは真由だ。


梨花は、不機嫌そうに


「中学に入って何かあったんじゃないの?」


と、言っていると


「別に何もないけど」


居間の入り口の方で答えたのは佑斗だ。


「父さん、母さん、おはよう」


「おはよう佑斗」


両親が答えると欠伸をしながら椅子に座り


「俺にだって、事情があるんだよ」


さっきは、よく分からなかったが、佑斗はなかなかの美形だ。


髪も天然パーマがゆるくかかってちょうどよいウェーブになっている。


それはよいとして


「事情があるのは、構わないけど、朝はちゃんと起きなさいよ」


梨花が、朝食をとりながら言うと


「うるさい」


佑斗が、べ~っと舌を出す。


「佑斗!」


と、梨花が睨むと


「二人とも朝からやめなさい!」


真由が、二人を叱りつける。


「はぁい」


「へぇい」


二人が、それぞれ答えると


「さ、早く朝ご飯食べなさいね」


にっこり笑って言う。


「うちは、朝から平和だね」


拓斗が小さく呟いた


「は?」


梨花と佑斗が、拓斗を見ると


「何でもないよ」


そう言って拓斗は、味噌汁をすすった。


しばらくは、静かに朝食が進んでいたが


「あ、そうだ」


と、梨花が思い出したように


「今日、日直だった。早く行かないと」


そう言ってから、


「ごちそうさま」


手を合わせて茶碗類を台所に運ぶ。


「じゃ、私学校に行くから」


そう言って台所を出る。


「あ、梨花ちゃん…」


真由が呼び止めたが、梨花には聞こえなかったようだ。


「行って来ます」


と、玄関から梨花が飛び出していく音が聞こえる。


「梨花ちゃん、お弁当」


途方に暮れたように真由が呟くと


「俺が持っていくよ」


佑斗が、仕方なさそうに言う。


「あら、いいの。」


真由が聞くと


「別に、同じ学校だし」


少し、不機嫌に答えた後


「ごちそうさま」


と、手を合わせてから茶碗を片付ける。そして、自分と梨花の弁当を取るとため息をついた。


「嫌ならいいのよ。佑斗」


真由が心配そうに答えると


「別に、いいって」


答えてから居間を出る。


後を追うように拓斗も出て行くと、真由は心配そうに


「佑斗と梨花ちゃん、喧嘩ばかりして。昔はあんなに仲がよかったのに」


そう呟くと


「心配する必要はないと思うがね」


のんびりと隆が言う。


「あなた」


「佑斗も、もう年頃だ。小さい頃のようには行かないよ。それに、あの二人の喧嘩は、むしろ仲がいい証拠だよ」


「でも…」


「大丈夫だって。私達の子供じゃないか」


「そう…ですね」


しかし、真由は不安そうだ。


その一方で、居間を出た佑斗は、嬉しそうに微笑んでいた。


「嬉しそうだね」


後ろから拓斗が、ぼそっと呟いた。


「た、拓」


佑斗が、たじろいていると


「学校で、姉ちゃんに会えるから嬉しいんだ。」


「ば、ばか」


「同じ高等部といえども、教室は離れているからねぇ。中々会えないんだよね」


「拓斗…」


「大丈夫だって。兄ちゃんが姉ちゃんの事を特別に想っている事は、黙っているよ。特に、お父さんとお母さんにはね。」


「ああ、そうだな」


そうなのだ。実は佑斗は、梨花の事を特別に想っているのだ。一人の女の子として。


だが…


「血が繋がっていないとはいえ、一応は姉弟だもんね」


拓斗は、腕を頭の後ろに回しながら言うと


「ま、頑張りなよ」


そう言ってから自分の部屋に入っていく。


佑斗は、ふうっとため息をついてから自分の部屋から鞄を取り玄関に向かう。


(梨花に会える)


梨花の弁当箱の巾着を見つめいていると、素直に嬉しかった。


「行って来ます」


居間にいる両親向かって言うと玄関から外に出る。


玄関を出てすぐに、マンションの下の方で何から騒がしい声が聞こえてきた。


とりあえず、同時投稿です。

プロローグは、短すぎですからね…

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