下呂ワンダーランド_4
最後のアトラクションはスケルトンケイブだ。
スケルトンのさまよう洞窟を探索する。ゲストはスカイランと同じスーツを着て、刃引きした剣やハンマーを装備して戦う。
スケルトンは土の屑魔石を落とす。
スケルトンと言ったら鈍器で戦うイメージだが、ハンマーは人気がなく、多くのゲストは剣を使う。
剣でも問題なく砕けていくスケルトンは骨粗しょう症なのかと思ってしまう。
4つのアトラクションで得た魔石は、中央エリアの工房で加工することができる。この工房で作る魔石製品もゲストに人気だ。
今はゲストが火の魔石を魔石ライターと魔石カイロに加工している。今日は時間がないのでゲストが作業しているところを壁際で観覧する。
すると壁の加工手順を見てヒトミさんが考え込んでいる。
「どうしたの?」
「アキラ君、ここの回路どう思う?このままだと魔石の状態によってはここに魔素が通らなくなっちゃう気がしない?」
「う、うん。ご、ごめん。よくわかってない。」
小声で聞く瞳さんに、笑顔でごまかす。
と視線の先で困ったようにスタッフを探すゲストがいる。
「時々ああやってうまく発熱しないものがあるんだよね。」
と倉田さんがゲストに近寄り声をかける。
「あっこちらの新しい魔石にお取り替えして試してみましょ‥
「少しだけ貸していただいてもいいですか?ここを繋げてと、ここを削ってと。着きました。」
瞳さんが少し修正すると直ってしまった。
2人は壁際に戻って話を続ける。
「このままの回路だと少し不安定なので、こういった感じて変えたほうがいいと思います。」
「ちょっと待ってね。僕もわかんないから専門家に聞いてみるから書いてもらってもいい?」
「最後に警備室に挨拶していこうか。今日見させてもらった感じ、今後関係するかもしれないから。」
専門家にメールしたあとは倉田さんに連れられて、警備室のドアを開ける。中には、共に60歳前後2名の男性がいた。1人はひょろっとした白髪で、1人は色黒で小さくて禿頭がキラリと光っている。
2人ともお茶を飲み、お菓子を食べていてまるでおじいちゃんの井戸端会議だ。
「今日は杉さんとイビちゃんか〜。ちょうどよかった。
こちら、鈴木明君と名瀬瞳さん。今日からアルバイトとして入ってくれました。
そしてこちらが杉さんと井樋ちゃん。警備の責任者が杉さんで、井樋ちゃんはその部下になります。こう見えて2人とも自衛隊OBなので歴戦の強者だよ。」
「アキラ君にヒトミちゃんか、よろしくの。時に倉田君!こう見えては不要じゃよ。」
「よろしく。はいこれ!ハハッ」
杉さんの後に井樋さんが挨拶しながらお菓子をくれる。笑顔で佇む杉さんと、意味なく笑ってる井樋さんはとても歴戦の強者とは見えない。
ただ2人とも気のいいおじいちゃんに見える。
「今日は挨拶だけで、特にアキラ君には時々警備室で働いてもらうことも考えてます。では!」
今日体験した感じを元に明日からの配置を倉田さんと課長で決めるそうなので、今日は帰宅となる。
瞳さんと下呂駅までのバスに乗りながらたあいのないお互いの専門学校の時の話をして帰ったが、一人で歩く家への帰り道でも考えてしまう。
瞳さんは魔法回路の天才だ。何気なく聞いたTOMスコアも420点で内訳はスキル110点、フォーミュラ310点。フォーミュラで310点と言ったら、すでに研究者レベルの知識だ。
それがスキルが低いせいで500点以下の点数になってしまっている。
視空間感知が弱いのが回路規模を大きくできないのが原因なら、改善する方法はないのだろうか?