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アキラ君の立身出世  作者: Mick
C級探索者編
30/64

予選

 渡島大島の魔山の魔素噴出エリアの外にある観覧エリアでは、1番目予選の様子が巨大スクリーンに映し出されている。

 チームごとに一台づつドローンが追いかけて様子を観客に映し出す形だ。

 8回ある予選の5番目に出場予定の我々ランドリーズはまだ出番まで時間があるので、他の探索者の戦いを参考にしようと少し観覧することにした。

 巨大スクリーンの横には、顔写真とともにチーム名と会社名、級、SRポイントが記載され、観客が賭ける時のオッズや現在のポイント数も付いている。

 残念ながら探索者は賭けることができないが、予備校生のときはお小遣い稼ぎに使わせてもらったため懐かしい。もちろん成人前は買うことができないのが建前なので、公にはできないが、当時はかなり助かった。


 と思い出にふけっているとスクリーンの向こうでは終盤戦に差し掛かっていた。


 SRポイントの一番高くオッズも低かった本命のA級探索者は、2番目、3番目に高いSRポイントの2組に共闘され、早々に2人が脱落していた。


 一人本命チームのリーダーが残ったところでお互いを意識しあったのか共闘が崩れて混戦になっていった。最終的には本命のA級探索者と、SRポイントが5番目だったB級のチームが勝ち残った。途中までは存在を消し戦いをうまく避けて他のチームが疲れたところを漁夫の利して勝ち残ったようだ。


「ただ強いだけでは駄目なんですね。」


 バトルロイヤル形式ではよくあることだが、研究者志望であまり見たことのないと言っていた瞳ちゃんには驚きだったようだ。


「そうだな。バトルロイヤルではうまく中盤までを立ち回ることが鍵になる。

いかに複数チームに囲まれないかを考えたり、同じ会社通しで共闘したりと駆け引きが重要だ。」


 ミシェルさんが、瞳ちゃんに説明していると、1組の探索者チームが声をかけてきた。


「ミシェルさん。お久しぶりです。本来ならば同じワンダーコーポレーション同士共闘するべきかもしれませんが個々でやらせてもらってもいいですか?

貴女の噂を信じてというわけでもないが、今回無理に共闘するメリットも無さそうなので。」


「わかった。そうさせてもらう。」


 ミシェルさんに話かける彼らに軽く会釈し、もう一度予選出場表をチラ見する。

 予選5番目はA級が4組にB級が5組、C級が1組つまり俺らが出場するが、B級にワンダーコーポレーションが1組いてそれが彼ららしい。

 まぁ気持ちはわからないでもない。この状況ではね。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ビーーーーッ」

 合図の音で予選5組が始まる。


 それぞれのチームはそれぞれ別の入り口から入って森に散らばっている。

 円形に並ぶ入り口の場所からなんとなくの位置が把握できる。


 開始の合図と共に、木々が邪魔になり魔素視でも感知できないが、複数チームがこちらに向かってくる気配がする。


 背後を取られにくい山肌の岩の影に構えていると、3チーム、合わせて9人が囲んできた。確かA級1組とB級2組だったと思う。

 囲んできたうちのA級のリーダーが警戒しつつ声をかけてくる。


「悪く思うなよ。取りやすいところから取るのが本戦への近道でな。」


「やっぱり唯一のC級である俺らをカモにするために向かってきましたね。

でもそれなりの準備はしてきましたよ?」


 瞳ちゃんに目線を送る。


「ミスティシャボン」


 瞳ちゃんの手に持つボトルの「呼水」からりんご大のシャボンが次々に飛び出していき空間を埋め尽くしていく。


「アキラ君から発想をうけて、風と水のオリジナル混合魔法を開発しました。触ると弾けます。」


 瞳ちゃんの合図と共にふわりと浮かび散らばるシャボンは触ると殴られた程度の衝撃と共に弾ける


 俺はシャボンに当たって戸惑うチームに突っ込みながら、自在棍を伸ばす。

 手元から3メートルに伸びた自在棍は虚をつかれた一人の胸のカプセルをつぶす。


「1点!」


 そのまま、背後の探索者に自在棍を横に振る。探索者は大振りの自在棍を楽に避けるが、避けた先にはシャボンがあり弾けた衝撃でバランスを崩す。そこに胸に一撃を入れる。


「2点!」


 最後残った一人は、距離を取ろうとするが、3メートルに伸ばした自在棍の突きが逃がさない。シャボンは俺の突きは邪魔しないが、敵の動き

は阻害する。

 避けきれない突きがカプセルを壊し

「3点!」


 実はこのシャボンはランダムに漂っているように見えて、規則性が持たせてある。シャボンの周囲の気圧の変化で移動していくので、風の魔素を魔素視で見るとどちらに動くのかがわかるのだ。


 その間に瞳ちゃんは魔法でミシェルさんと共に光学迷彩で姿を消している。ミシェルさんと一緒であるので迷彩が甘く、よく見ると見えるがシャボンがうまく隠している。


 一人残った俺を二チームが距離を置いて囲む。姿を消した二人を警戒しながらも、前衛がシャボンを剣で斬り払いながら、距離を詰めようとする。後衛も魔法で撃ち落とそうと魔法回路を描き始めたそのとき。


 ヒュッ


 空気を切り裂く音と共にシャボンに紛れた水の弾が敵を襲う。瞳ちゃんの弾速を高めたウォーターガンだ。

 剣でシャボンを斬り払おうとしていた一人は咄嗟に剣で受けるが、他の5人はシャボンに気を取られて胸のカプセルに命中する。


「8点!」


 最後の一人も体勢を崩した隙に突きで追い込みカプセルを割る。


「これで9点!」



「こんな何もしてないのにやられるなんて。」


「これでC級なんて反則だろ。」


 茫然としている敵の探索者を残して次の戦いに向かう。



「アキラと瞳ちゃんだけで3チーム完封とはすばらしいな。

でもこれは完成形ではないな。私が参加することで完成する。

そうだろう?」


「そうです。

中距離からのミシェルさんの射撃が加わると完成です。

次はそれをやってみましょう。」


 3人で警戒しつつ森を進んでいると、前の木の上に火の魔素が集まっているのが見える。


「瞳ちゃんあそこ。火の魔法がくる。」

 とっさに瞳ちゃんに声をかけつつ自在棍を伸ばし構える。

 

 描く軌道によって時間差がつけられたファイヤアローが合わせて12本向かってくる。


「これはうまいな。かわしきれないかも。」


 俺が3本を自在棍で打ち払うが、他が間に合わない!


「ウォーターウォール!」


 間一髪、瞳ちゃんの魔法が間に合い炎の矢を防いだ。


 すかさずミシェルさんが敵チームのいる木にマシンガンを降り注ぐ。


 慌てて降りてきたというか、落ちてきた敵チーム。今回一番SRポイントの高い本命A級チームだ。


「ミスティシャボン」


 そこに瞳ちゃんの新技が展開する。広がるシャボン達に敵チームも戸惑っているのがわかる。


 警戒し、距離を取ろうとする敵にミシェルさんのマシンガンが襲う。


 慌てて避けようとした先ににシャボンが回り込んでいて弾ける。その衝撃に押されたところでマシンガンの弾があたる。

 相手の身体魔法で致命傷にはならないが、痛みで呻き声をあげる。


 二人はカプセルが壊れたが、残り一人はその仲間を盾に弾をよける。

 故意に助けるのは反則だがカプセルが壊れた後は、動かない石と同じ扱いになるので、ギリギリ大丈夫だ。


 でもそこに俺が突っ込んで、カプセルに突きをいれて壊す。


「これで12点!」


「ビーーーーッ」


 終了の合図がなる。


 結果は第5組ぶっちぎりの1位となった。


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乱筆ですが、読んでいただきありがとうございます。 評価、ブックマークいただけると励みになりますので、よかったらお願いします。
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