渡島大島
ランクB魔山である渡島大島で行われる五百練の大会に出場することになった。
もちろんワンダーコーポレーションの魔山は出られず自衛隊管轄の魔山だ。自衛隊は非営利なのでこういった時は平等で助かる。
「今回はSRポイント上位のS級が5組、A級が11組がシードで本戦から出場になるわ。
だから他16個の枠を予選で争うことななるわね。
五百練だと、観客も多いから頑張ってね。」
真理子さんに送り出され、俺らランドリーズは北海道の渡島大島に向かった。
予選前日に受付を済ませておくために大会事務局に向かう。
事務局前には多くの探索者が受付に詰めかけており、行列もできていた。
行列に三人でならんでいると、ミシェルさんは顔見知りもいるらしく声をかけられていた。
20分ほど並んだところで、順番が回ってきた。
「ワンダーコーポレーション所属のランドリーズだ。よろしく頼む。」
リーダーミシェルさんが探索者受付のお姉さんに挨拶する。
「はい。ランドリーズですね?
C級ということですが、大丈夫でしょうか?」
言いにくそうに、受付のお姉さんが書類を指差して躊躇している。
「もしかしてC級は予選にでられないとかあるんですか?」
もしかしてと横からでミシェルさんに悪いが、口を挟んで聞いてみた。
「失礼しました。そういうわけではないんですが、今回は対人戦になるので、そのう。
なんというか、言い難いんですが、C級の方々がA級の方達もいる大会に参加されると、回復薬もあるとは言え、怪我だけではすまないかもしれません。」
「そういうことなら大丈夫だと思います。私達二人は初めて大会参加ですが、リーダーは元A級ですし。」
「そうですか。明日の時間割や注意事項はこちらの書類でご確認ください。」
受付のお姉さんも心配してくれてるようだが、それ以上深くは言ってこなかった。
島には、観客向けのホテルやお土産屋、居酒屋などが立ち並ぶ。
流石ランクBの渡島大島!人気のなかった臥蛇島とはえらい違いだ。
「すごい栄えてますね。こんなに人が来るとは思いませんでした。」
瞳ちゃんが感想をもらす。
「予選前夜だから少ない方だ。まだ一部のマニアしか観客も来てないからな。明後日の本戦になると人が溢れるぞ。」
それじゃあ人が溢れる前にしておくことがあるだろう。
「じゃあまだ空いてる今日にゆっくり海の幸をいただきませんか?」
せっかく北海道に来たのに海の幸を食べないで帰るなんてできない。
「アキラ君はすごいですね。私なんか緊張して食べられないかもしれないです。」
瞳ちゃんは初めての大会に緊張しているようだ。
「予選終えても本戦含めて四日間もあるじゃん。だから今から緊張してたらもたないよ。
それよりも北海道の美味しいもの食べて英気を養おうよ。」
「そうだな。緊張は明日にして今日ぐらいは楽しもう。」
ミシェルさんも同意してくれる。
「アキラ君は食への執着心強めですよね?」
ギクッ
「そ、そんなことないよ。瞳ちゃん。
それよりもさぁお店を探そうかな。」
こういったときは、表通りよりも一本入ったところに隠れた名店があることが多いというのが経験則だ。
ちょうど小さいお寿司屋があったので、二人の了解を得て入っていく。
「いらっしゃい。お兄ちゃん達探索者かい?」
「そうです。明日から予選なんです。
精力つけたいんですけど、お勧めありますか?」
「確かにお兄ちゃんも美女二人連れてるから精力つけんとかんだろう。
任せてくれれば美味しいもんだすよ。」
「いやーそんなんじゃないですけど、じゃあお任せでお願いします。」
お任せでお願いしたのは大正解だった。新鮮な刺身のたっぷりのった海鮮サラダに、とろとろのぶり大根、握りの盛り合わせに出汁の効いた味噌汁、デザートにミルクプリンと味も量も大満足だった。
「ゴクッゴクッ、プハーッ」
味の染みた大根もビールによく合う!
「アキラ君見てください。このぶり大根!モグモグ、骨までホロホロになってまふ、ゴクン!」
瞳ちゃん食べるかしゃべるかどちらかにしよう。でも美味しい料理に緊張がほぐれてきたみたいだ。
ミシェルさんは日本酒をゆっくり飲んでいる。
「ミシェルさん、もう一杯いかがですか?」
「明日は初日だしこの辺にしておこう。」
「そ、そうですね。
残りは祝勝会にとっておきますか!
そういえば明日の予選は、バトルロイヤル形式でしたよね?」
「そうだ。配られた今年のルールを見ると10組が森で一気に戦いあう。各人が胸にカプセルをつけてそれを割りあうことになる。
割ったら一点獲得で、割られたらその時点でその者は脱落になる。脱落になっても点数は残り、高い合計得点のチーム2組が本戦に出場になる。」
瞳ちゃんと暖めていたある計画を提案するいい機会だ。
「もしよければ、試したい戦法があるんで最初はミシェルさんは控えてもらって、フォローしてもらう形にしたいんですけど、いいですか?」
「何か考えがあるんだな?
どんな戦法だ?」
ミシェルさんも前向きに聞いてくれそうだ。
「それはですね。
瞳ちゃんに開発してもらった新しい魔法があるんですが、、、」