経営会議
Side 経営会議
「先月の魔石の生産量の報告になります。
前年比10%の増加になります。」
山田派の経営企画担当常務である男が経営陣に向かい報告する。
「どこが頑張ったんだ?資料に
載ってないぞ。」
資料をみて無派閥の常務が確認する。
「そ、それはですね。なんと言いますか。。。」
自身もS級探索者であり浅間山のホルダーである稲口専務は、この次に控えるランクAの魔山をどう攻略していくかの戦略会議に頭を巡らせており半分以上聞き流していた。
この男にとって日々の生産量に関しては興味はない。A級以下の探索者や事務方が気にすれば良いことで、ランクAの魔山を増やす、つまりホルダーを如何に増やすかに集中している。
社内にはS級の探索者は自身のリクシルズと、三宅島のホルダーであるネプチューン、その他にアルゴンとレニウムの4組である。
ネプチューンはあまり自身達以外にあまり興味なく、いわゆる変人達であり気にするだけ無駄だ。
山田派のアルゴンとレニウムはなんとかS級にしがみ付いているだけで、ホルダーになる力はない。
どちらかというと、山田健男専務の息子である山田健史のオキシジェンはA級であるが、力をつけてきており可能性はあると見ている。
去年まではA級であったスペードも有力であったが解散してしまった。
今の自分の派閥を含めて、社内に有力なチームがいないことが問題であり、自身の派閥の育成や取り込みが急務となっている。
そのためにも社内で足の引っ張られないように、基盤固めは重要事項である。そんな中で敵対する山田専務派の常務の言い淀んだことが気になった。
「歯切れが悪いな。誰がどこでいくら稼いだ成果だ?」
「それがC級のランドリーズが臥蛇島で約100億円分を生産したと報告を受けています。
それを今確認しておるところです。」
突然の敵対派閥である稲口専務からの問いに経営企画担当が汗をかきながら答える。
「臥蛇島はフォーシーズンズだったか?それで確認中ということか。」
稲口専務は納得したが、それが異常であることに気づかない。
経営よりも攻略を重要視しているために、金額の多さに。
なぜ、他社に50%払う必要があるのに他社の魔山に行ったのかの異常に。
ただランドリーズがC級ということで興味を失ってしまった。
聞いていた山田派の事務方達はおかしいことに気付かれなかったことにホッとしつつ、次の報告に進んでいった。
稲口専務は自身に有益な情報を逃してしまったことに気づかず、ランクA魔山の戦略会議に気持ちを切り替えていた。
このことで、ランドリーズが表舞台に立つことはもう少し先になる。