幕間
ある日、スカイランで実演をいつものようにしていると、園田課長が10歳ぐらいの二人の男の子と女の子を連れて来た。
男の子はムスッとした感じで、女の子はムスッとした男の子にハラハラしている感じだ。
「おはようございます園田さん。お子さんですか?」
「いや。私ではなくうちの親会社ワンダーコーポレーションの専務の双子のお子さん達でコウキ君とユウキちゃんだ。
お父さんが急に来れなくなったので私が案内しているんだよ。
この子たちのお父さんには私がワンダーコーポレーションにいたときにお世話になってね。」
ワンダーコーポレーションは四大信仰財閥の一角で超大企業だ。もちろん俺は書類選考で落ちている。
「こんにちは。コウキ君、ユウキちゃん。」
コウキ君は軽くうなずくだけで、ユウキちゃんは「よろしくお願いします。」と挨拶を返す。
「園田さん、二人ともスーツ着てないですけど、見学だけですか?」
「いや、二人は10歳だけど自分で魔法が使えるそうだよ。」
それはすごい。魔素を感じる、魔法を使う能力は身体能力の成長とともに発達すると言われているので10歳もの若さで使えるというのは今まで聞いたことがない。
「じゃあ、このコースの説明を兼ねて実演します。」
身体強化を使い通常モードで障害を連続で飛び越える。コース全て終えて記録は2分30秒。井樋ちゃんとのトレーニングのおかげで身体がうまく使えている気がする。
「す、すごいですね。」
さっきまでムスっとしてたコウキ君が感嘆の声を上げる。
次はコウキ君がスタートする。魔素をちゃんと使えている。素晴らしい才能だ。ただ、まだ基礎の身体能力が低いことと、効率的に魔素を使えておらず、だいぶ魔素を無駄にしながら身体強化している感じだ。
タイムも3分6秒。
「やっぱり勝てませんでした。もし良かったらアドバイスとか頂けませんか?」
急にしおらしくなったコウキ君と身体強化についてを語り合う。コウキ君も俺と同じで感覚派で身体強化が得意らしい。
「アキラ君良かったら今日1日2人とランド内を案内してあげてくれないか?
2人も歳の近いほうが楽しいだろうし。」
「わかりました。じゃあ2人とも俺と一緒に行こうか?」
他ではない上司の園田さんからの依頼であるし、快く引き受けた。
「ここが工房だよ。」
「瞳ちゃん!こちらコウキ君とユウキちゃん。親御さんが今日は急遽来れなくて、俺が下呂ワンの案内することになったんだ。
こちらは瞳ちゃんです。では瞳ちゃんから工房の説明をお願いします。」
瞳ちゃんの説明で2人は魔石扇風機を作っている。ユウキちゃんが瞳ちゃんに質問しているが、なぜだか内容がだんだんマニアックになってきている。
そんな様子を側から見ていたが、徐々にユウキちゃんの目が怪しくなっていく。
「瞳お姉さま❤️。また教えてください!」
??いつのまにかお姉さま?ユウキちゃんのキャラ変わってるぞ?
コウキ君も思わず二度見していた。
「アキラさん今日はありがとうございました。僕も父やアキラさんのように強くなります。」
「お姉さまー。また会える日を心待ちにしています。」
一日中遊んだ2人は名残惜しそうに帰っていった。