第32話 後輩からの相談
『宏貴先輩、ちょっと相談があるんですけど』
『相談?』
5月中旬のある夜。部屋でくつろいでいると、
真澄の後輩である奈月ちゃんからの電話があったのだった。
『あの。真澄先輩の誕生日プレゼントなんですけど』
『うん?』
少し話が読めない。
『真澄先輩の誕生日って5月21日じゃないですか』
『そうだね』
『……』
まだ話題にこそしていないけど、毎年何かの誕生日プレゼントを贈っているのでよく覚えている。
『それがどうかしたの?』
『えーと、その。察してくださいよ』
何をどう察すればいいんだろう。
『ごめん。本当にわからない。どういうこと』
『ですからですね。真澄先輩の誕生日プレゼントを選ぶのを手伝って欲しいんです』
言いたいことはわかったけど。
『真澄なら、よっぽど変なものじゃなければ喜んでくれるよ』
『できるなら、良いものをプレゼントしたいじゃないですか。宏貴先輩なら、と思って』
女子が女子に送るプレゼントを、男子の僕に相談するのはどうなんだろうか。
『そこまでいうなら。ちなみに、アクセサリーとかはわからないからね』
『いえ。それは期待してませんから』
『実は馬鹿にしてる?』
『い、いえ。そういうつもりでは。じゃあ、明後日とかどうです?』
『わかった。じゃあ、待ち合わせだけど……』
そうして、土曜日の約束をして電話を切ったのだった。
電話を切ってから、気づいたのだけど。
彼女と別の女の子と二人きり。
これはとても微妙なシチュエーションじゃないだろうか。
『……真澄?僕だけど』
少し緊張する。
『どうしたん、コウ?こんな夜更けに』
考えてみると、もう寝る時間だ。
『奈月ちゃんと明後日、ちょっと出かけてくる』
『……堂々と浮気宣言か?』
茶化すような声。
『さすがにわかって言ってるでしょ』
『冗談やて。なんやあの子、悩んでたみたいやし。相談に乗ってやってな』
『気づいてたの?』
『さすがに、部活中うんうんうなってたらな。相談くらい乗るよ言うても、なんでもないですの一点張りやったけど』
わかりやすく態度に出る子だし、あっさりとばれてしまった模様。
プレゼントの事だってことまではばれなかったみたいだけど。
『まあ、そういうこと』
『ありがとさん。そこまで気を遣わんでもええけど』
『器が大きくて助かるよ。それじゃ、おやすみ』
『おやすみー。あ、そや……』
なんだろうか。
『どうしたの?』
『あ、そのな。そういう、義理堅いところも好きやで』
少し早口でまくし立てて電話を切られてしまった。
少し、顔が熱くなるのを感じる。
そうして、後輩の奈月ちゃんと二人でプレゼントを選びに行くという
奇妙なおでかけが決定したのだった。
ちょっと変な子だけど、真澄を想う気持ちに嘘はないし。
そんな後輩の相談に乗ってあげるのも、悪くないか。




