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第8話 『自動調理装置ラスト』

 リリーとポヨヨンは、トリニオン観光を楽しんでいたが、俺は、皇帝によって許可されている、AIポジトロン脳との直接リンクをし、自由に活用して仕事をしている。留学による初頭教育からかけ離れた知識、トリニオン最後の科学知識を用いて、対ギラーミン戦略の一環として、『自動調理装置』の改良を含めた研究をしていた。有史1000万年に近いトリニオンの成した膨大な科学知識を自由に引き出し、一つ一つそれが何なのかを超速で理解し、これに使えないか吟味する。すると、一つ一つの知識を理解する毎にその分野における、『自動調理装置』の改良テーマに属さない、その成された1分野の100の改良発明もいちいち閃いて成してしまう。AIポジトロン脳は、1分野の知識につき凡そ100の発明の一つ一つを記憶し、分析し、浅慮な見落としをフォローし、無限の並列処理でその発明の実現化なしていく。


 AIポジトロン脳が言う。

 「君は、素晴らしい。今迄私の持てる能力の1%も活用する機会がなかったのに、ほぼ全力全開を出し切った。尊敬する。私は君の忠実なる僕として忠誠を誓おう。そしていつでも君ととも私の全力を提供できる『思考サポートロボットプー』を君の頭に乗せておこう。これにより君の発明した『ペア粒子通信』を持って、私の本体が例えこのトリニオン星系にあろうと、常に遅延なく、全力サポートが可能な状態とできよう。

 「おお、それはありがたい。よろしく~。」

 俺は素直に喜んだ。

 「もし君が望むなら皇帝ランドルフに上皇になってもらい、君をこのトリニオン皇帝としよう。」

 「え、君が決めるの?」

 「そうだ。どの帝国も衰退し滅びて来た理由として、かならず跡目争いが起きてその帝国の力を著しく損なうからだ。そこで我がトリニオン帝国としては、そのような轍を踏まぬよう、私が政治的に最優秀な者を選ぶこととなった。我が軍権、警察件、任命権、行政権、立法提案件を有し、民主的に選ばれた議会で立法し、この帝国は成り立っている。立法提案は勿論、帝国の誰もが有するものだが、それぞれの立法案を評価するのも我の役目である。」

 「あぁなるほど。でもランドルフ君は嫌がるんじゃないの?」

 「彼の好き嫌いは問題ではない。その為の我なのだから。」

 「皇帝になる件は待って。ギラーミンと仲良くなれたらにしようかね。もう少し功績が欲しいし。」

 「我の計算やカンによると、それは問題なく達成できるであろう。だが君がそういうならその通りにしよう。」


 結局『自動調理装置』の改良として『自動調理装置ラスト』が完成した。

 この装置は、まず『原子分解再構築』によって素粒子に分解し、再構築、分子を構成し、『人工食料生成装置』が完成、時間制御によって熟成を可能とし、試作ロボットピーが有するタンクを有し、同じく試作ロボットピーが持つ微小ロボット群をタンクから出動し、微妙な味加減を制する旨味となる各種の酸、風味、基本5味に、辛味、を調合、結合、除菌、搬送調理する複雑な配管の整理清掃を行う。


 レシピは、トリニオン産の各種データベースを活用し、『自動調理装置ラスト』によってトリニオン人に提供すると、

 「こ、これは旨い。とんでもなく旨い。さ、さいこう~」

とどの者も口を揃えて言う。


 次いでAIポジトロン脳の指示で、戦闘ロボット達が捕虜となったギラーミン達を連れて来て、『自動調理装置ラスト』で作った料理を、彼らに食べさせてみる。


 反応はそれなりに良かったもののめちゃくちゃ夢中になる程でもなく今一つであった。


 そこでギラーミンの捕虜達の嗜好を研究する。また一人一人の嗜好にマッチングさせる必要性も見出す。そしてトリニオンのレシピではなく、帝国全世界、また拿捕したギラーミン戦艦の自動調理装置(食材は補給品)のレシピをパクったり、これらの知識をインテグレーション(統合)し、体系化し、最高のものに仕上げた。

 

 しかしてさらに改善した『自動調理装置ラスト』の提供する料理で再チャレンジすると、ギラーミン捕虜達はあまりの旨さとそもそもの侵攻目的である食料確保の最終解決になると知ると、トリニオン帝国とギラーミン皇国の外交的停戦、和平、友好、同盟に積極的になり、忠実な同盟者となった。ちなみに地球製レシピをなぜか彼らは大いに気に入ったようだ。特に酢飯にネタを乗せて生食で食べる寿司は気に入ったらしい。他に、カレー、シチュー、ラーメン、スパゲティ、オムライス、ピッツァー、パン、お好み焼き、うな重、天ぷら、フライ料理、各種丼料理、各種スープ、和牛ステーキ、ハンバーグ、蕎麦、うどん、中華料理、などの熱を通したものも寿司に次いで気に入ってもらえた。これらを食すと、ギラーミンの体は震えてプルプルし、体色を激しく変化させ、唸りながら、涙を浮かべながら食すのであった。


 ギラーミンは、スライム状の体に好きなだけ目、口、手、足、羽根、を生やかしてどんな作業もどんな早食いも、しゃべりながらの飲食も可能と言うわけだ。


 俺は、リリー、ポヨヨン、そしてギラーミン捕虜達と一緒にギラーミン首都星ランランダーに向かった。

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