第5話 惑星トリニオンでの留学生活
見るからに高慢ちきなエルフと言うべきトリニオン人と、第2知性体のスライムと言うべきスラリン族が、我々を見下したように宣う。
「君達は、我が栄光ある銀河帝国における最下級種族だ。従って多くは期待していない。種族特性として能力がないのが普通なのだ。君達はこの帝国における最低限の知識を与えられ、最下級な仕事を恙無く行えるレベルになってくれればよい。まぁせいぜい励みたまえ。」どうやらこの留学を受ける学習施設の責任者と副責任者らしい。
我々は、困惑してその励ましを受ける。
別にこの人達が我々に教えるわけではない。AIポジトロン脳と語り合いながら、マンツーマンで指導する、ということらしい。
促されて、カプセル催眠学習装置に入る。広さ3畳程の液体につかると、直ちに眠くなり、AIポジトロン脳から直接我々の脳にアクセスして知識と理解すべき法則を叩きこまれ、それが理解できるレベルに脳が鍛えられる。この装置は、必要な運動と、必要な栄養、健康管理も万全な、歴史ある装置らしい。
しかして1年後、カプセル睡眠学習装置から出る。
リリムは、睡眠学習中、いくつも素晴らしい発明を閃いていた。それをAIポジトロン脳がピックアップし、サポートし、既にその発明は現実のものになっていた。そしてリリムの身分も最下級種族から、最高偉大科学者にランクアップしていた。なおこの最高偉大科学者の称号はAIポジトロン脳によって任じられる位であり、給料は月(25~28日)1兆円らしい。その発明リストは以下の通り。
1.『原子分解』・・・・反重力プラットホーム(テスラコイルとチタン酸バリウム強誘電体からなる3つの半球ドーム)に供給する電力のPWM制御DUTY66.6%vs33.3%の時、融合と同時対消滅による爆発も発生せず、原子分解した。通常DUTY100%と0%の正物質と反物質を衝突させると対消滅した大爆発を起こす。DUTY50%物質は中間物質となる。中間物質は重力無効、運動エネルギー無効である。
2.『ペア粒子生成』、『ペア粒子通信』及び『転送マシン』・・・原子崩壊させて得たグルーオン素粒子に更に同様のDUTY66.6%vs33.3%にて原子分解させると、ペア粒子の生成ができる。ペア粒子は、一方に電磁波を当てるとその電磁波と反対の信号である電磁波を他方の粒子から発信するので、どんなに離れていても秘密で時間的遅れなく通信ができるのだ。また一方のペア粒子で形成した壁面に、人間が入ると、他方のペア粒子から人間が転送され、反物質となって登場し、その反物質となったからだは反重力プラットホームによって元の体に戻せることも可能となった。転送マシンである。
3.『試作ロボットピー』・・・試作ロボットピーは、全部で24本の屈曲自在の足には、その足先端のカメラとそれぞれ36本のさらに微小な髭のような屈曲自在の足を設けてなる。そしてその髭のような足にも同様な36本のさらに小さい足とカメラのセット、その小さい足にさらに小さい36本とカメラのセットが設けられている。もちろん反重力で浮遊する。そして『ピー』は、先に開発したペア粒子通信+同時量子コンピューターでなるAIで駆動する。出来上がった試作ロボット『ピー』は、人間もそうだが、だいたい1/20迄のサイズの物は何でも容易に形作ることができる。もちろん分子生成はまだなので、試作ロボット『ピー』の1/20サイズ小型版試作ロボット『ピー』を無限に作らせる。その1/20サイズはさらにその1/20サイズの『ピー』を、こうしてどんどん小さな『ピー』をネズミ算式に増やしていく。すると原子や電子と言った素粒子を扱うことが可能な『ピー』が完成し、ナノテクノロジーの粋がここに完成した。超大量の最小『ピー』は反重力で浮遊し、生成でした原子の素粒子を捕らえて並べてたちまち既知の分子を作り上げた。そして試作ロボット1台には中に無数のナノテクノロジーの粋、素粒子を扱うことが可能な『ピー』を空母のように大量に保有し、どんな物質も生成可能になった。また試作ロボットピーは、3分程度で自分自身のコピーを作ることもできる。
4.『原子再構築』・・・原子分解した素粒子を任意の物質に変換できる装置だ。原子分解した後の素粒子としては、中間物質でなる全球ドーム内にバラバラな素粒子として存在するを、生成したい原子、金であれば金を極少量その全球ドームに入れ、その全球ドームを中間物質から正物質に転換すると、たちまちバラバラな素粒子が金となるのだった。元素表記載の全ての元素については全てこの方法で生成可能となった。金や白金、レアメタル、レアアースは銀河帝国においても希少であり、非常に高価だ。
5.『分子生成』・・・前述の試作ロボット最小版が生成した原子を組み合わせて力業で分子生成をする。これにより、合成食料等の製造も可能になった。
6.『永遠の命』・・・人間の体の中に、試作ロボットピーの微小版を多数投与し、ウイルス、細菌退治から、けがの細胞再生治療、癌細胞の消去細胞再生が可能となり、細胞若返り措置も可能となった。これで生命は寿命が無限大となる。
これらの発明は、地球でも特許にて守られるのと同様に、A級文明の銀河帝国トリニオンにおいて、ポジトロンAIによって、リリムの所有と記憶され、リリムの承諾があれば高額の金銭対価を受けてこの銀河帝国内にて、活用され、製造され、貸し出しされ、転売される(発明の実施と言う)ことになる。そしてリリムが拒絶すればその発明の実施を他人が行うことはできない。またその発明を実現するに、銀河帝国トリニオンの好きなだけの資金が提供されることになる。有能な者には金が集まるのだ。
留学を受ける前に馬鹿にし、見下していた例の留学を受けた学習施設の責任者と副責任者が飛んで来て、揉み手をしながら、愛想笑いをし、リリムに語りかける。
「いやぁ、貴方様は素晴らしい。銀河帝国への貢献度は、史上類を見ない程でした。貴方様には、皇帝陛下より、男爵位に叙せられることとなりましたよ。おめでとうございます。明日、宮殿に来ていただき、皇帝陛下からの授与式に出席してください。報奨金として金1000京円、我々の額で60兆トリが支給されます。またポジトロンAIが貴殿の発明の製造を行う工場を建設済みで、既にその製造にとりかっています。なおその工場製品の販価には消費税は25%、貴殿の株主が帝国となるので株主配当が利益10%、所得税が利益の30%かかるそうです。いやぁ、こんな素晴らしい人材がおられたとは、当初貴方を受け入れた時、最下級種族などと言って申し訳ありませんでした。」
俺は踏ん反り返って、
「ふむ、これからはそれなりの礼を以って遇するを期待するよ。何しろ栄光ある銀河帝国の最高偉大科学者であって男爵なのだからな。」と偉そうに宣った。隣で、リリーとポヨヨンが賞賛の目を輝かせている。