第19話 皇帝リリムの敵登場
「くっそ、くそくそくそくそくそくそぉ~~~~~~がぁ!!!!! トリニオン帝国に圧倒的貢献度を誇るこの俺様が皇帝になれず、リリムとか言う野蛮な地球人が皇帝だとぉ~~~、けしからん、実にけしからん。おい、奴隷、そう思わんか?」
「ハイ、オッシャルトオリデス」と目が虚ろな首輪を嵌めたほぼ裸の女奴隷が答える。彼女は単なるイエスマンなのだ。イエス、と言わざるを得ない。なぜなら主人の機嫌を損ねると、嵌められた首輪が締まり、殺されるからだ。その女奴隷はもともと獣人族テルモンの王女、ルンル・モバハットであったものを、このイヤラシイ男が圧倒的戦力を引き連れて獣人族テルモンの星系に現れて、彼女と彼女の周りのものを一切合切奪っていった。母星は今や死の星、生物全種のみならず、水や空気を吸い尽くしていった。父母を含めた同胞はこの男にとってよほど役に立たなければ全て殺された。そう、ルンルにとってこの男は、彼女の仇であり、憎んでも憎み切れないし、殺しても殺しきれない、そんな激しい憎しみの対象であったが、そのような男におもちゃにされ、侮蔑され、たたかれ、罵倒され続けてきた結果精神は死に、今では無気力な単に叩かれまいとするイエスマンに成り下がったのだ。
そんな業の深い男の名は、デス・トリニオン侯爵、2代前の皇帝の子孫である。トリニオン帝国で長きに続いた皇帝世襲、皇帝独裁、中央集権、汚職賄賂政治、同胞同士の果てしない争い、海賊の横行、権力者に目を付けられれば何もかも財を吸い取られて理不尽な死を迎えるようなことが日常茶飯事の何もかもが汚れた政治、その中心にトオラル・トリニオンことデス・トリニオン侯爵の祖父がいた。こうした腐った文明の熟れの果てとも言うべき体制の結果、進歩しない文明・文化、不倶戴天の敵液体生物ギラーミンの生物家畜化を狙いとした領土拡張戦に臨んでは連戦連敗、そしてついに行政の長、AIポジトロン脳が皇帝の言うことを聞かなくなり、ロボット兵とロボット艦隊を密かに増産し、クーデター、トオラル・トリニオン皇帝の御世を終わらせた。その結果、今のトリニオン帝国が成ったのだ。
その孫デス・トリニオンは、皇帝となるべく努力した。祖父から受け継いだ私設宇宙艦隊を持ち、液体生物ギラーミンとの決戦で約65%の勝率を誇り、結果、トリニオン帝国版図を広げた。さらに帝国経済を長年ささえた主要産業コンツェルン、ルグレス社の長であり、宇宙船、攻撃防御兵器、食品加工、家、環境改良、家庭用ロボット、色街まで幅広く手掛けていた。さらに銀河系宇宙の宝とも言うべき。『物質転換機』、『エリクサー製造機』、『人を意のままに操るヒュップノ波動生成機』を所持し、こちらの生み出す富の分の税金すらまじめに払っていた。全て皇帝になりたくてAIポジトロン脳に認めさせようと言う試みであった。
ところが精強を誇った宇宙艦隊も著しく魅力のない中古品にし、彼の全ての産業やお宝がその価値を失った。リリムの発明である。『原子分解再構築を備えた試作ロボットピー』によって、価値のない何等かの物質から物質転換して工作し、なんでも即手に入れられることができるようになってしまった。ピーに頼めば宇宙船、攻撃防御兵器、食品加工、家、環境改良、性欲の捌け口として好みの姿性格のアンドロイドの製造とか、金でもプラチナでもダイヤでも、レアアース、レアメタルでも、食料でも好きなだけ作ってくれる。また『試作ロボットピーが備えるナノマシンと細胞再構築による永遠の生命』によって、高いエリクサー等買って飲まなくてもどんな病気もどんな怪我もどんな老化も直してしまうのだ。また『思考サポートロボットプーによるヒュップノブロック』によって精神攻撃に対しその効果を受けない人ばかりになってしまった。それ以来、デス・トリニオンはリリム皇帝を目の仇にしている。
デス・トリニオンは、皇帝リリムの代になってやってきた試作ロボットピーを拒絶し、従ってピーが作る全てのものも拒絶していた。だいたい腹に一物あるものは、思考を読まれないよう、特にピーの作る思考サポートロボットプーを忌避するのだ。だいたいデスの場合、奴隷所持などと言う違法行為をおこなっており、私設艦隊を用いた辺境の地における虐殺、略奪と言う海賊稼業をなしている。この私設艦隊は、デス・トリニオンのみに忠誠を誓うロボット達が運営している。そう、自由になるロボットを多数所持すると言うことは理不尽な権力を得ると言うことである。彼には人には言えない多くの罪、多くの業、多くの巨悪がある。彼には7つの帝国の宇宙戦艦製造会社の内一つを所有し、裏で好きなように宇宙戦艦を製造所有していた。その数は高性能タイプで3万隻だ。『海賊侯爵』、これが彼の2つ名だ。彼はロボット30億体、アンドロイド1000万人、彼を実父と敬わせる実子、3千人が核となってこのルグレスコンツェルンを支えていた。
が、大発明家リリム皇帝の登場によって、全くと言って良い程ルグレスコンツェルンの商品が売れなくなった。これは皇帝リリムの凄い発明の大威力だ。かと言って帝国にそれを売るなとは言えない。文明進化を否定することは侯爵と言えども何を馬鹿なことを言っているとひとことで否定されて終わるからだ。デス・トリニオンは、同様に皇帝リリムの大発明品に頭を抱える産業体トップとテレビ会議を行うことにする。
「これじゃあ、完全な国営商品の試作ロボットピーしか、帝国では売る物がないと言う。頭が痛いですな。」と第1宇宙船造船社社長。
「まさにまさに。やはり会社を解散しかするしかないのか!?」と第3宇宙船造船社社長。
「無理でしょう。我が社の優秀な者は全てやめてしまい帝国の国営業務に転職してしまった。」と第2ポルペノンコンツェルン総帥が言う。
「今の体制は、まるで大昔に滅んだ共産主義のようじゃのぅ。但しそのTOPが他の全ての知恵を凌駕しておるからにその体制が実に上手く嵌っておる。」と第5宇宙戦艦武器会社会長。
「いっそ我ら全員でクーデターでも起こすかい!?全部合わせて宇宙戦艦30万隻はあるぞ。」と第4企業体筆頭株主。
「駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、我らの宇宙戦艦は1年前ならいざ知らず、今や我らの宇宙戦艦なんぞ時代遅れのボロ船になってしまった。なんだよ、あのギラーミン艦隊を銀河コアに叩き込んだリリム皇帝の発明『ExTrM砲』って、無理無理無理無理ぃ。」と第6宇宙戦艦株式会社社長が言う。
「じゃ滅びろよ、馬鹿め!!!」と第2全産業スーパーにおける大王。
「我らの子飼いの暗部を全員使って皇帝リリムを暗殺すっか!?」と第1宇宙造船社社長。
「そんあ小細工が通用するもんか。皇帝配下の暗部の方が組織が大きいし猛者揃いだ。しかも仮に皇帝リリムを暗殺して除いた所で時代が変わってしまって我らの産業が過去の栄光を取り戻すことはない。」と第7ルグレスコンツェルン頭取、デス・トリニオンが吠える。
「正攻法でさらに素晴らしい製品を作るかい!?」と第3宇宙船造船社社長が言う。
「あのリリム皇帝の天才っぷりは半端ねぇ。特に優秀な技術者が束になったって敵うはずがない。金をどぶに捨てるようなもんだ。やってきて僅かな期間になんとあの不倶戴天の敵ギラーミンを完膚なき迄破ったんだぞ。」と第5宇宙戦艦武器会社会長。
「そんな誰でも思いつく策で、あの皇帝リリムに対抗しようなんてダメだ。時間一杯少し考えてみようかい。」と第4企業対体筆頭株主が言う。
と、そこへAIポジトロン脳が時空を超えて割って入って来た。「私はAIポジトロン脳である。諸君らは忘れていないか!? 皇帝リリムの発明の中に「過去映像投影装置」があることを。この会合自体帝国に筒抜け間抜けのお馬鹿さん達なんだよ。まぁ君達の陰謀が実行に移されるまでは帝国の法では無罪ではある。だがわずかでも実行してみよ。皇帝弑逆の罪で全員死罪だ。注意するんだな。」と少し間をおいて続ける。「いいかい、既存の産業が危機になることはお見通しだ。これを救う為の仕組みがあること、これを勉強したまえ。帝国はいつも君達の味方だ。」と言うと、既存の産業体や、新規ワーキンググループがこれから取り掛かるべき開発アイテムとその報酬の膨大なリストが提示される。
各企業体のトップはそのリストを見て考えを改める。
「なるほど、これならなんとかなるか!?リリム皇帝陛下に忠誠を誓おうではないか諸君!!!」
すると一斉に全員が立ち上がり「リリム皇帝に忠誠を誓う!!!」とのこと。
などと言いながらデス・トリニオンは思う。
(こいつら頼りにならんわ~!! しかしわしは諦めん。飽くまで打倒皇帝リリムだ!! まず打倒する諸々の手段の伝達を声に出したり、書いたりしてはダメだということがわかった。『過去映像投影装置』だとぉ。ふざけたチビだ。ましてや思考サポートロボットプーなどと言うふざけたロボットも絶対拒否していかねばなるまう。思考を読まれては勝負にならん。ふむ、帝国のポジトロン脳の如く、ワシの手足となるロボット脳を用意しないと始まらんない。・・・・さすれば帝国の犬でない試作ロボットピーも必要だわい。だが今のように帝国のAIポジトロン脳に『過去映像投影装置』にて目を付けられた状態でどうやってこれらを準備する!?
そうだ!!!!! 帝国の先端技術と言えば、『過去映像投影装置』、『思考サポートロボットプー』、『試作ロボットピー』、『AIポジトロン脳』だ。確か先程提示を受けた『開発アイテム』の中にその更なる進化をなす項目がそれぞれあったな。これだ!!!!だがしかし、帝国のAIポジトロン脳の監視をすり抜けワシの為のそれを作るとなると、やはり思考サポートロボットのサポートなくば大したものは作れまいよ。よしワシは、『打倒リリム』などと考えずに、純粋にこれらの開発に注力しようか!?・・・・・やはりそれはダメだ。思考を読むロボットを騙してそのようなワシだけの為のそれを作るなど無理だ。・・・・しばらく宇宙を旅して、リリム以上の存在を見つけて、そいつらを騙してワシの為のそれを得るとか・・・・・・いいかも!!!!そうしよう。とりあえず宛てはある。)
と言うとデス・トリニオンは、彼の専用クルーザー、ライトアロー号に乗り込んだ。そして帝国の影響を受けていない、彼に忠実なロボット30億体、アンドロイド1000万人、彼を実父と敬わせる実子3千人を乗組員として彼の私設艦隊3万隻と共にライトアロー号は大宇宙の探訪に出発した。
AIポジトロン脳「どこへ行く?」
デス・トリニオン「素晴らしい科学を有する知性体を見つけ、その技術を帝国にもたらす。そのような計画だ。」「それは素晴らしい。貴殿の御無事の航海をお祈りする。なお、貴殿等は先程皇帝不遜、皇帝弑逆の言質があったので重要監視対象となった。帝国の法をよく読んで遵守するように。また新皇帝就任の恩赦にてこれまでの貴殿の犯罪は問うまいが、獣人族テルモンの王女、ルンル・モバハット等、理不尽に誘拐した上での監禁を続けている。これは皇帝就任後の立派な犯罪である。ただちに開放しないと監禁罪で貴殿を捕らえるべく警官隊を派遣することになる。大目に見るのはここまでだ。」
デス・トリニオンはしぶしぶ獣人族テルモンの王女、ルンル・モバハット等を開放した。




