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やっぱり気弱な白崎さん  作者: 君野旬
6/6

6 SSS

下校中、昼休みに急に消えたことを問い詰められ、俺は潔く白状したのだが、光希は俺の心配など全くせず終始笑っていた。まあいつも通りである。


「そっかー撮られてたかー。ドンマイドンマイ」


「全く心配してないだろ」


「そんなことねえよ。……熟女好き。あっはっはっは。ウッ」

脇腹を肘でついて黙らせる。彼には友人を労わるという発想がないのだろうか。


「でも良かったじゃんか、一生奴隷みたいなハードなやつじゃなくて」

光希も俺と似たようなことを考えていたらしい。


「まあ確かにそうだけど」


「でもさ白崎って拓海がこの先関わらなくても拡散とかしないんじゃないか?」


「どうゆうこと?」


「要するに偶然と勇気なんだよ」

あまり同時に使われない熟語が並んでいて意味がわからない。


「まず前提としてお前は白崎さんにこの人なら友達になってくれるかもって思われてたってこと」


「どうゆうところで?同性の方が話しやすいんじゃ」

人見知りなら異性の方が尚更話ずらいはずだが。


「そこまでは知らん。でもまぁ拓海は運動部だろうがオタクだろうが結構仲良いやつ多いから誰とでも仲良くなれるとかそうゆうところだろ」


確かに運動部だろうがオタクだろうがバカだろうが友達はいるか。


「でも話しかけるきっかけなんて白崎さんにはない。そんな時に見かけたのがAVを持った拓海だ」


「そうか。それきっかけで」


「そう。これが偶然の部分。で勇気っていうのはその写真で半ば脅しのような行為を取ったことだな」


光希に自慢げに説明されるのは癪だが確かに偶然と勇気か。


「それで何もしなくても拡散しないっていうのは?」


「だって白崎にお前を貶める理由がねえもん」


確かに白崎さんが俺を貶めて得することは無いように思う。


「拓海は拡散されるかもってビビってたけど白崎が拡散云々言ってたわけじゃないんだろ」


思い返してみればそうだ。白崎さんはあくまで写真を見せて俺を呼んだだけで何かをすると言ったわけじゃない。


「もう写真も消してるかもな」


光希の仮説はかなり的を得ている気がした。


「無理に関わる必要はないか」

でも……




翌日。

俺は登校してすぐに白崎さんに挨拶する。

「おはよう。白崎さん」


白崎さんは驚いた様子で周りが気になるのか俺にだけ聞こえる声で言う。

「……私に話しかけない方がいいです」


「分かった。じゃあ後で昼休みに」


「え?」



授業は寝てしまった。



昼休み。

2Bに向かうと白崎さんは昨日と同じ席に座ってご飯を食べていた。昨日とは少し変えて白崎さんとテーブルを挟んで向かい合うように座った。俯いて目を逸らしているのが丸わかりだった。それに正面から見ればやっぱり目も少しは見える。


「……あんまり見ないでください。緊張します」


「緊張しないくらいには早いとこなんねえとな」


「じゃ、じゃあ緊張しない方法を教えてください」


年上ならともかく同級生と話して緊張するという概念がないため、「ごめん。分かんない」と言いたくなるがやはり何か具体策を出したい。


「やっぱりまずは誰かと話すことかな」

出したかったがやはりそんなものは思いつかない。


「……桐谷君が練習相手になってくれますか?」


「もちろん。異性と話せるようになったら同性なんて楽勝だよ」


白崎さんの顔が上がり、端正な顔がはっきりと目に入る。

「……ありがとうございます」


俺は思わず目を背ける。

「ダメだ。可愛い」

咄嗟に出たのが可愛いだっただけで実際は綺麗が正しい。


「え?」

頰を赤らめた白崎さんを見て俺はいう。


「白崎さんて美人さんだね」


そう言うと白崎さんはまたいつものように俯いてしまう。

「……あんまり言わないでください」


声が小さくてよく聞き取れなかった。

「今なんて?」


「……可愛いとか美人とかそうゆうのあんまり言わないでください!」

今まで聞いた白崎さんの声で一番の音量だった。言った時に顔を上げたのだがそれもまた綺麗だった。


「あんまりってことは言っちゃダメってわけじゃないんだ?」

俺はニヤリと笑みをうかべる。


「……違います。ずっとダメです」


「聞いていいのかわからないけど前髪は切らないの?


これは白崎さんを初めて見た時からあった疑問だ。周りは見にくいだろうし、不便なはずだ。


「言いたくない理由があるならいいんだ。無理に聞いてるわけじゃないから」


誰にだって言いたくないこともあれば秘密もある。レンタルショップでの一件だって秘密にしたいことの一つだ。


「......周囲の目が怖いんです。昔からなんていうか......品定めされているような気がして。......人と話すのも苦手で怖いから髪を伸ばして話しかけられないようになってよかったと思ってました。でもずっと誰かと楽しく話がしたいとも思ってたんです」


誰にだって相反する感情など存在する。俺は正直にありのままの気持ちを隠さずに言う。


「白崎さんは綺麗だよ。品定め上等じゃんか。満場一致でS評価確定だね」


涙をこらえている様子の白崎さんは涙ぐんだ声で言う。

「桐谷君ならどんな評価を付けますか?」


俺は笑っていう。

「トリプルSは確定だな」


「……そんな評価あるんですか?」

白崎さんは涙を滲ませながら笑った。

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