第48話 元奴隷は隠れ村へと戻る
横たわるガルスの死体が再び燃え始めた。
真っ赤な炎に包まれて、やがて灰だけが残される。
さすがにここから蘇ることはないだろう。
いくら強力な使徒だとしても、それは不可能なはずである。
地面に積もる灰を眺めていると、体内に宿る使徒の力が増大するのを感じた。
ガルスを殺したことで、彼の能力を吸収したのだろう。
同時に新たな力が入り込んできたのも知覚する。
手に入れたからには使わない手はない。
その力を腕に集め、前方へと解き放ってみた。
すると赤い雷が飛んだ。
やはり雷の能力だ。
緑髪との戦いで確信していたが、使徒を殺すことで相手の力を奪うことができるらしい。
ただし、色味が違う。
ガルスの放つ雷は青白かった。
俺の場合は赤色だ。
これは俺が炎の使徒だからだろう。
元の能力が作用して、効果が微妙に変わっているのだ。
振り返れば、風の力の時もそうだった。
炎の力が混ざった結果、対象を燃やす熱風になっていた。
今回の雷も、炎の性質を強く帯びたものになったようだ。
これで俺は、三つの能力を得たことになる。
言うまでもなく強力だ。
戦いにおける応用の幅も広がった。
ただし、このままでは駄目だ。
風もまだ使いこなせているとは言えない状態である。
雷も合わせて、扱い方を練習しなければならないだろう。
(そうだ、皆は……)
俺は生命感知を発動し、隠れ村に意識を向ける。
村の中の戦士は全滅していた。
ほとんどの村人は俺の家に集合している。
リータが用心棒になって固まっていた。
新たに誰かが死んだような気配はない。
救助した人々に関しては、無事に救えたようである。
しかし、手放しに喜ぶことはできなかった。
今回の騒動でたくさんの犠牲が出ている。
俺が守り切れなかった人々だ。
どれだけ後悔しても決して戻ってこない。
彼らの死を心に刻み、これからも歩み続けねばならない。
悲しみに暮れるのは仕方ないが、止まることは許されなかった。
俺は女神と契約を交わした炎の使徒だ。
与えられた力を活かして、世界を動かしていく。
俺は重たい身体を引きずるようにして隠れ村の方角へと向かう。
気を抜くと倒れそうだった。
だけど、皆が心配して待っている。
彼らの方が不安を抱いているだろう。
俺の口から、事態の解決を報告しないといけない。
色々と話し合うことだってある。
明日からまたいつも通りに過ごすのは不可能だった。
(変わらなければ……きっかけは最悪だが、俺も学ばないといけない)
何もかもが上手くいくことなんてない。
その中で妥協しながら、守るべきものを守るのが俺の役目だ。
過ちを糧に成長し、選択を間違えないようにしなければ。
決意を胸に、俺は隠れ村への帰路を歩いた。




