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反逆奴隷の炎使い ~それでも俺はエルフの森を焼き続ける~  作者: 結城 からく


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第47話 元奴隷は力を託される

「ああ、が、ぁっ……はっははは、はははは……」


 燃え上がるガルスは、狂ったように笑う。

 その状態で周囲を徘徊し始めた。

 黒く焦げながら、彼は歩み続ける。


 そんな彼の片腕がぼとりと落ちた。

 焼けて千切れてしまったのだ。


「ぎぃ……っ」


 ガルスが小さく呻き声を上げる。

 彼の全身から雷が迸り、炎が相殺されて掻き消された。


 黒煙を漂わせるガルスは掠れた呼吸を繰り返す。

 彼はこちらを向こうとして、膝を地面についた。

 そのまま仰向けに倒れる。


 手足は痙攣していた。

 ガルスは断続的に血を吐き出す。


「畜生、が……まだまだ……殺し、足りねぇ……ってのに……」


 ガルスは悔しそうに言う。

 彼は、自らの無力さを呪っていた。

 かつて肉処理場で殺されそうになった時の俺そのものだ。

 死にゆく中で、ひたすら力を求めていた。


「本当に、やってくれた、ぜ……まさか負けるとは、なァ……」


「使徒との戦闘経験の差だ。俺は風の使徒と戦ったばかりだった」


 俺はガルスに告げる。

 実際、それが地味ながらも決定的な差だった。

 単純な戦闘経験では、俺が明らかに負けていた。


 しかし、ガルスは使徒と戦ったことがなかった。

 対する俺は格上に近い風の使徒を殺し、その力を奪っている。

 これが大きかった。

 結果的に、ガルスは俺の力を何度も見誤った。

 他の使徒の可能性について、測り切れなかったのだ。


 もっとも、今回の勝利は半ば幸運が招いたものに近い。

 ガルスが罠のある位置に立っていなければ、こうして奴を燃やすことができなかった。

 さらに言うなら、最も油断したあの瞬間しか効かなかった。

 様々な要因が絡んだことで、俺は逆転することができた。


 ガルスは強く咳き込む。

 彼は空を仰ぎながら唸る。


「もう駄目、だ……立てねぇ。何も見えねぇ……」


「騙されて近付くと思うか?」


「は、ははっ……慎重な奴、だ……な」


 ガルスは弱々しく笑う。

 とても演技とは思えない。

 彼の内包する使徒の力は、どんどん衰えていた。

 そこから再起する気配は感じられなかった。


「これから、お前さん、は……何をする、んだ……?」


 ガルスは唐突に質問を投げかけてくる。

 何か目的があるとは思えない。

 おそらく興味が湧いただけだろう。


 俺は少し考えてから答える。


「エルフ一強の支配をぶっ壊して、ヒューマンの尊厳を取り戻す。過去にはそういう時代があったらしい」


「そいつは、面白そう、だな……はっはは。頑張り、な……応援してる、ぜ」


 ガルスの反応を見た俺は眉を寄せる。

 彼は力を抜き切って笑っていた。

 俺は口端の血を拭う。


「意外だな。否定してくるかと思ったが」


「く、はっはははっ……死に際まで、見苦しいことは、しねぇよ……」


 ひとしきり笑ったところで、ガルスが首を回してこちらを見た。

 実際にはもう何も見えてないだろうに、濁った双眸は俺をしっかりと捉えている。

 ガルスは噛み締めるように告げる。


「俺が大事に、育ててきた力だ……絶対に、負けるなよ」


「――分かっている」


「なら、よかった」


 ガルスが激しく吐血し、その弾みで腹が割れる。

 血はほとんど出てこない。

 既に流れ過ぎていたのだ。

 体外に流すだけの量が残っていなかった。


「……そろそろ、お別れだな……先に、待ってる、ぜ……」


 ガルスは呟くようにして言う。

 言い終えた彼は、微かな呼吸音だけを鳴らす。

 それもやがて聞こえなくなる。


 ――雷の使徒ガルスは、眠るように焼け死んだ。

あと数話で本作は完結となります。

同時に新作を始める予定です。

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