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反逆奴隷の炎使い ~それでも俺はエルフの森を焼き続ける~  作者: 結城 からく


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40/50

第40話 元奴隷は夜の村を奔走する

 村は滅茶苦茶に破壊されていた。

 畑も荒らされて、死体が転がっている。

 どれも知っている顔だ。


「……ッ」


 その光景に怒りが沸き上がる。

 しかし、それを精神力で抑え込んだ。

 心の奥底に封じておく。


 冷静さを欠くのは、連中の思う壺だ。

 戦士集団は、わざと俺のいる間を狙って殺戮を行っている。

 その狙いは不明だが、何らかの目的がある。


 この虐殺も、きっと俺を陥れるための罠だ。

 それにはまってしまえば、すべてが終わりとなる。

 だから冷静にならなければ。


 この衝動を解放するのは、もう少し後だ。

 村の皆を救い、虐殺を行う外道共を血祭りに上げる時でいい。

 まだその時ではない。


 俺は村の中を小走りで移動した。

 生命感知で最寄りの反応のもとへと向かう。


 そこには逃げる村人と、それを追う数人の戦士の姿があった。

 彼らの鎧や武器は血で染まっており、直前まで何をしていたかがよく分かる。

 戦士達はこちらを見ると、村人への接近を止める。

 そして、いきなり逃げようとした。


 先ほどと同じ反応だ。

 炎の使徒には敵わないと理解している。

 奴らの間では共通認識なのだろう。

 おそらくはガルスの指示である。

 同じ使徒として、力量の差を弁えているのだ。


 だが、今回は逃がさない。

 俺は腕を構えて炎の矢を飛ばす。

 それが戦士の背中に命中し、貫通してその前の戦士の腹にまで穴を開けた。

 矢を受けた二人の戦士は、受け身も取れずに地面を転がった。

 そして体内から燃え始める。


 俺は両手を後ろに向け、そこから熱風を噴射した。

 勢いを利用して残る戦士達に追い縋ると、高熱の炎を放って焼き殺していく。

 ほぼ全面への放射だ。

 回避不可能な攻撃である。

 相手がいくら技量が高かろうと関係ない。

 同じ使徒の力でなければ対処できない攻撃だった。


 戦士達は一瞬で黒焦げになっていく。

 彼らは苦しむ間もなく死んでいった。

 本当は存分に苦痛を与えたかったが、今は時間がない。

 嬲るだけの余裕があれば、他の皆を救わなければいけなかった。


「…………」


 俺は無言で後ろを向く。


 一人の戦士が、村人達に迫ろうとしていた。

 たまたま炎の範囲外にいた者だ。

 或いは勘が良かったのかもしれない。


 その戦士は、村人を捕まえるつもりだった。

 おそらく人質にしたいのだろう。

 そうすることで、俺を従わせる気なのだ。

 魂胆は分かっている。

 外道がすることなど、簡単に予想ができた。


「させるかよ」


 俺は指先から小型の炎の矢を放つ。

 それを熱風で加速させた。

 矢は戦士の首へとめり込む。


 迸る血飛沫。

 戦士は村人の目前で倒れて息絶えた。

 痙攣する手が、武器を取り落とす。


 俺は村人に近付く。

 そして淡々と指示をした。


「俺の家に行ってくれ。リータが匿ってくれるはずだ」


「わ、分かった!」


 村人は頷いてすぐに逃げ出す。

 俺の家までの方角に敵はいない。

 無事に辿り着けるはずだ。

 この調子で他の者も救っていこうと思う。

 一人でも多くの命を助けるのだ。


 俺はその場から移動した。

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