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ロリコンな保護者兼お師匠様に溺愛される  作者:
十歳編~波乱の幕開け~
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第八話 良い夢を見ろ

 


 モヨリの森から屋敷へ瞬間移動(テレポート)で戻った一行。

 最初は三人だったのに、一人と三匹が増えて賑やかな帰還となった。

 早速錬金術を教えてと強請るエヴェリーテの可愛らしさに精神がぐらつきながらも、錬金釜を置いているアトリエに移動しようと動き始めた時だった。

 ララが「あ、王様が来ていますよ」と声を発した。

 げっ、とこれ以上にない位顔を歪ませたウェルギリウスがまた瞬間移動を使用としたが、先にゲオルグに気付かれてしまった。



「遅いぞウェルギリウス! 明日についてはな……ん!?」



 ゲオルグの銀瞳がエヴェリーテの足下にいる水色のスライムー改め、ぷにぷに三匹を凝視した。



「……何故、スライムを連れている?」

「あ、初めまして! 今日からウェルギリウス殿に弟子入りしました、ぷにぷに三兄弟の長男ぷに太郎と申します!」

「次男のぷに次郎です!」

「三男のぷに三郎です!」

「「「よろしくお願いしまーす!!」」」

「…………」



 ぷにぷに?

 三兄弟?

 弟子入り? ウェルギリウスに?


 一体、何処へ行っていたのか。何がどうなってスライムが人に弟子入りしたのか。後、ぷにぷにとは何だ?


 聞きたい事、言いたい事は山程あるのに目を点にして固まったゲオルグ。はあ……と最悪だと頭を抱えるウェルギリウスにまあまあと同情するエヴェリーテ。アイとララは何故か距離を取っている。



「あの、王様?」

「……エヴェリーテ嬢。彼等はスライムではないのか?」

「え? あ、はい。スライムです。でも、正式名はぷにぷに、だそうです」

「そう……なの……か。で……何故、スライム……ぷにぷにがウェルギリウスの弟子に?」

「あー……深い事情がありまして……」



 斯々然々と事情をエヴェリーテから聞かされたゲオルグはうんうんと頷き。そうか、と納得した。きらきらと円らな瞳を向けるぷにぷに。そのぷにっとした感触を味わってみたいという幼い頃からの夢が叶いそうだと軽い現実逃避をしかけたゲオルグだが、ふと、明後日の方角を向いて目を合わせようとしないウェルギリウスを呼んだ。嫌々ながらこっちを向いたウェルギリウスにゲオルグは……



「……ぶふっ!!」

「……」



 我慢ならずに吹き出してしまった。

 あちゃー、と今度はエヴェリーテが頭を抱えた。

 ゲオルグも我慢したかったが限度がある。



「お、お前っ、お前がぷにぷにの師匠っ……ぷくくっ……!!」

「…………」

「ぶわはははははっ!!」



 ついに堪えきれず盛大に笑い出したゲオルグを無表情のウェルギリウスが首根っこを掴んだ。幾筋もの青筋を立てたウェルギリウスが距離を取ったララとアイに命じた。



「ヒーリングポット程度なら造れるな?」

「は、はい!」

「出来ます!」

「初日に屋敷を案内した際に、アトリエの場所も教えただろう?そこに錬金釜がある。エヴェリーテにヒーリングポットの造り方を教えろ。エヴェリーテ、少し留守にするが夕飯は先に食べたきゃ食べろ。夜には帰る」

「う、うん。……程々にね」



 何が、とは言わない。迫力ある表情に迫られたララとアイは若干半泣き。エヴェリーテも完全に頭にきているウェルギリウスがゲオルグを殺さないか心配したいが、仮にも一国の王を殺しはしないだろうと無理矢理自分を納得させ、ばいばいと見送った。



「あのー、何かお師匠様を怒らせる事をしてしまったのでしょうか?」



 ぷに次郎が不安げにエヴェリーテに訊ねた。



「……ううん。次郎さん達は挨拶をしただけだもの。何も悪くないよ。王様が……自滅しただけ」



 誰だって笑うとは思う。

 “人外”の魔術師と恐れられる男に最弱の魔物ぷにぷにが弟子入りしたなどと聞いて、笑わずにはいられない。しかし、何事にも時と場所を選ばないとならない。ウェルギリウス本人の前で爆笑したゲオルグが悪い。エヴェリーテの言う通り、彼は自分で自分の身を滅ぼした。

 今頃、何処へ連れて行かれたか知れないゲオルグに哀れみの念を抱いたエヴェリーテは、気を取り直してヒーリングポットの製作に励もうとララとアイを呼び寄せた。




 ◆◇◆◇◆◇

 ◆◇◆◇◆◇



 今日一日は随分と濃い日となった。

 初めて素材採取地に赴けば、スライムの正式名がぷにぷにと判明したり、そのぷにぷにがウェルギリウスに弟子入りしたり、ララとアイ、何故かぷにぷに三兄弟も加わってヒーリングポット造りに励み。錬金釜の使用方法と作製方法を同時に教わりつつ、初めての錬金術も成功に終わった。夜に戻ると姿を消したウェルギリウスも夕飯前に戻った。ララの作った夕飯を四人と三匹で完食した。

 食事中、ぷにぷには普段何を食べるのか気になったエヴェリーテがぷに太郎に訊ねた。曰く、何でも食べる雑食なのだとか。

 食後、お風呂もアイに洗ってもらい、後は寝るだけだが変に目が覚めて眠れないのでバルコニーに出たエヴェリーテは、嘗てイーリスだった頃の記憶を思い出していた。

 イーリスが生まれ育った村には、名前のない天空城が浮かんでいた。だが、ヴォルティス王国に天空城はない。あの天空城がどうなっているのかが無性に気になった。知ってそうな人はお風呂に入っている最中。部屋に戻ったら聞いてみようとエヴェリーテがバルコニーから部屋に戻るとその人はいた。

 風呂上がり特有の熱気。濡れた髪から滴る雫。シャツは着ているだけでボタンを一つもつけてない。なので、上半身がほぼ剥き出し。ちら見の方が色気がすごいと言うがその通りだ。男の色香をこれでもかと醸し出すウェルギリウスに顔全体を真っ赤に染めたエヴェリーテが叫んだ。



「ボタン! 閉めなさいよ! 見てるこっちがお腹冷える!」

「俺の勝手だろ」



 お腹の心配等本当はしていないが、あまりにも目に毒な光景から少しでも逸らしたくて……。無駄に終わったが。

 こうなったら実力行使しかないと践んだエヴェリーテがボタンをつけようと手を伸ばすと、逆に体を抱き上げられベッドに押し倒された。

 じたばたと暴れるのも体力の無駄と今までの経験から心得ているエヴェリーテ。むすっとした面持ちでウェルギリウスを見上げた。



「機嫌悪くない?」

「そうでもないぞ。あいつで発散してきた。今頃、城の連中に見張られて溜まった書類仕事でもさせられているんじゃないか」

「……」



 具体的に何をしたか、までは怖くて聞けない。ただ、仕事を放り出して遊びに来るゲオルグもゲオルグだ。くくく、と面白可笑しく笑うウェルギリウスの唇がエヴェリーテの額にそっと触れた。



「茶会は明日だ。ララに教わった通りにすれば、問題はない。俺も極力、側にいるようにしよう」

「そうしてくれると助かるわ。ねえ、一応、ウェルギリウスの娘って事になってるのよね?」

「まあな」

「ってことは、ウェルギリウスをお父さんって呼ばないとならないわね。……お父様の方がいい?」

「自分で決めろ。ただ……」

「んっ」



 額から頬、頬から鼻頭にキスを落とされ、最後には唇にキスをされた。

 半開きの唇に舌を差し入れた。まだ慣れず、奥に引っ込んだエヴェリーテの舌を無理矢理絡め、魔力を少量ずつ流し込んでいく。一度に大量の魔力を流すとエヴェリーテの体内が魔力量に耐えきれず暴発してしまう恐れがある。数回に分けて魔力供給を行うのにもきちんと理由がある。決して、趣味のキスをしたいがためだけじゃない。こくり、こくりと魔力を飲み込むエヴェリーテが愛しい。



「ん……んん……」

「んう……ふ……」



 今日最後の魔力供給を終えたウェルギリウスは、とろんとした顔で自分を見上げるエヴェリーテの唇に触れるだけのキスを送った。十歳のくせにすっかりと女の顔をするエヴェリーテに……この男が欲情しない訳ない。が、そこまですると嫌われるのは自覚している。



「娘にここまでする父親はいないな……」

「……もっと言うなら……十歳の女の子に手を出す男も……普通いないわよ」

「だろうな。俺はしたいからするんだ」



 エヴェリーテの横に寝転がり、小さな体を腕の中に閉じ込めた。



「さて、寝るか」

「……誰かさんのせいで寝れないわよ」

「くく……怒るな。眠らせてやる。良い夢を見ろ……」



 額にキスを落とした。

 それを通して、催眠魔術を施されたエヴェリーテは瞼を閉じて十秒も掛からず夢の世界へ旅立った。

 小さな手は、しっかりと保護者の服を握っていた。






 ーおまけ 同居人ー


 アイとララは同じ部屋、同じベッドで寝ていた。ウェルギリウスは別々の部屋を提案したが、元々二人は友達同士なのもあり相部屋を希望した。

 妖精は歳を取っても容姿は変わらない。ずっと、可愛らしい姿のままなのだ。互いの手を握って眠るアイとララが幸せな夢を見ていると願わずにはいられない。


 また、今日からウェルギリウスに弟子入りしたぷにぷに三兄弟の部屋。空いている客室を適当に使えと言われ、その中でも程よい広さの部屋を使わせてもらっている。三兄弟寄り添うように眠る姿は、遠目から見るとビッグスライムと間違われるだろう。幼馴染みのぷに子の夢を見ているらしく、三兄弟共寝言でぷに子の名を呟いてた。



 


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