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ロリコンな保護者兼お師匠様に溺愛される  作者:
十歳編~波乱の幕開け~
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第六話 お願いは受け付けません

 


「は、初めまして……! 今日からこちらで働かせていただきます、ララです……! よ、よろしくお願いします!」

「初めまして! アイです! 本日より、こちらでお仕事をさせていただきます!」



 今日からエヴェリーテの世話係を任ぜられた二人の白の妖精が案内役の妖精に連れられて来た。書類で見た通りの二人。ララは緊張し過ぎてかちこち、アイは活発な女の子そのもの。可愛い少女の妖精にほっこりしたいエヴェリーテだが……一人、招いた覚えのない人がいた。昨日の訪問者も何故かいた。流麗な銀の髪と瞳。ちらっとウェルギリウスを見上げると、嫌そうな感情を隠そうともせず、ありありと顔に出ていた。

 ――今すぐ帰れ、と。



「ではバージル様! 後はお願いします! 私はこれにて失礼します」

「あぁ。ついでに、そこの粗大ゴミを持って行ってくれ」

「え」

「粗大ゴミ!? 扱いが酷くないか!?」



 異議を唱える男を意にも介さず、しっしっと追い払うウェルギリウス。どうしようと二人を交互に見やる案内役の妖精は、軈て、判断が面倒になったのか、満面の笑みでまたのご利用を! ――と言い残し去った。



「逃げたわね……。ねえ、この人誰? 最初はウェルギリウスが呼んだんでしょ?」

「知るか。面倒だから帰れ」

「帰らん! ってか、昨日、王宮に戻されたせいであの後大変だったんだぞ! 宰相には見つかってお小言を頂くし、王妃には何処に行っていたと詰め寄られるし」

「知らん。間の読めんお前が悪い」

「横暴……!」

「……」



 何処の誰だか知らない男性に同情の念を抱いた。遊びに来てみれば強制送還され、改めて訪れても粗大ゴミ扱い。年齢不詳の男性に助け船を出した。



「中に入ってもらいましょ。妖精さんも困ってるし」

「そうだな。ああ、お前は帰れよゲオルグ」

「おれだけ仲間外れにするな! おれも入る」



 ――結局、雑な扱いをされる訪問者ゲオルグも招き入れ、応接室へ通した。各自好きな場所に座れと促され、大理石製のテーブルを囲うソファーにそれぞれ座った。エヴェリーテは保護者の隣に(一応)座ろうとしたら、当たり前の様に膝に座らされた。嫌がって暴れても無意味、デザートの時間にイチゴパフェを食べさせてやると誘惑されて陥落。大人しく腰を抱かれる。



「まずは妖精コンビ。お前達の仕事についてだが」

「は、はい! お話は、ティポさんから伺っております。そちらのお嬢様のお世話をするようにと言われています」

「そうだ。俺一人でも十分だが、他に話相手がいてもいいと判断した。二人とも白になって日は浅いと聞くが、魔術は使えるのか?」



 ウェルギリウスの問い。ララは治癒魔術を得意とするが、攻撃呪文(アサルトスペル)の類は壊滅的。アイは逆に攻撃呪文が得意で白魔術全般を苦手とするらしい。ふむ、と考え込んだ後――ウェルギリウスは、二人にエヴェリーテの魔術の勉強を見るよう告げた。



「出来るな?」

「は、はい! 頑張ります!」

「頑張ります!」

「お前が教える……否、何でもない」



 ギロリと目だけで人一人射殺する勢いの睨みを受けてゲオルグは黙った。怪訝に感じたエヴェリーテがウェルギリウスを見上げたら、不機嫌極まりない表情をしていた。が、一瞬で普通の面持ちに戻した。

「さて、エヴェリーテ」膝から下ろすと早速魔術を教えてもらえと告げられた。昨日の適当な教え方と違って、丁寧に教えてくれるだろうとも付け加えて。

 むすっとした顔をするなり、そうねと言い残しエヴェリーテは二人の妖精を連れて部屋を出て行った。エヴェリーテを見送るとゲオルグへ意識を変えた。



「はあ……で、何しに来た」

「あからさまに面倒くさそうにするなよ……。あの少女、エヴェリーテと言ったか? お前とはどんな関係なんだ? 親子にしては全然似てない」

「当たり前だ。エヴェリーテは俺の可愛い嫁だ」

「このロリコンめ!!」



 ウェルギリウスの幼女趣味は知っていた。知っていたが、幼女を嫁にするまでとは……。

 ゲオルグは内心呆れつつ、本題に入った。



「お前にあんな幼妻がいるとは思わなんだ。実は、二つ、頼み事がある。一つは、我が娘ベアトリクスの家庭教師を」

「知るか」

「うん。即答されると思った。……でだ。二つ目は、今出来たんだが……」



 これを言えば目の前の男は切れるだろう。だが、どうしても必要なのだ。



「先程の幼女を――我が息子パーシアスの婚約……」



 婚約者にしたい。

 最後の文字を言い切る前に、怒りが頂点に達したウェルギリウスが詠唱も無しに雷の魔術を使用。ゲオルグの後方の壁は破壊。自身の屋敷だから、極力威力の弱い類を選んだのだろうがこの男にかかれば、どんな初級魔術でも高威力の魔術に変化する。ぱらぱらと石の欠片が落ちる。爆発音を聞き駆け付けたエヴェリーテが大慌てで戻って来た。後ろにはアイとララを連れて。



「どうしたの!? 敵!?」

「そうだよ。俺の大事なエヴェリーテをこいつのクソ餓鬼パーシアスの婚約者にしろと言ってきてな」

「っ」



 パーシアス……。

 前世のエヴェリーテの幼馴染にして、メインキャラクター。ゲーム通りでいくなら、前世と同じ名前のパーシアスの傍にいたいイーリスの我儘とウェルギリウスの強行によって婚約が成立する。だが、今生は天寿まっとうを目指すエヴェリーテには不要。故に、きっぱりと断った。いい子だ、と頭を撫でられても嬉しくない。あの、と控え目に声を出したアイがゲオルグに目をやった。



「王様とバージル様は……お知り合いなのですか……?」

「うむ。おれが赤子の頃からの知り合いだ。こいつにおしめを変えられたのが一番の屈辱だ」

「文句はお前の母親に言いな。大方、子供の良さを伝えて妻を娶れと言いたかったんだろうが……生憎と俺の守備範囲は十二歳以下なんでな」

「ドヤ顔で言うな!」

「……王様?」



 エヴェリーテは、じーっとゲオルグを凝視した。視線に気付いたゲオルグは、咳払いを一つして、改めて自己紹介をした。



「ゲオルグ=フォルテ=ヴォルティス。ヴォルティス王国の国王を務めている。説明が遅くなってしまい、申し訳ない」

「……王様にすごく無礼な振る舞いをしてたって事?」

「ああ、気にしないでくれ。今はお忍びだし、そいつに国王面したいとも思わんから。ウェルギリウス、頼む。実は、王家は今ある問題を抱えていて」

「知るか帰れ出来れば死ね」

「帰らないし死なないし! 人の話は最後まで聞いてくれ頼むから!」

「話くらいは聞いてあげなさいよ。困ってるみたいだし。それに、一応公爵なんでしょう?」

「何時でも返上しても構わんが」

「返上されても困る! 兎に角! 聞いてくれ!」



 ゲオルグによると、息子パーシアスと双子の弟セストは今年で十歳を迎える。大臣達からは、そろそろ婚約者を決めなければとせっつかれている。ヴォルティス王国は、実力で王を選ぶ。王位継承権を持つ二人の内、どちらが次期国王になっても良いように二人の伴侶はそれ相応の身分と実力が求められる。しかし、ここで困った事があった。王位継承権を持つ王子には、代々公爵家の令嬢を婚約者として宛がう。今度、貴族の令嬢と王子等を集めた小さな茶会を催すのだとか。そこに、エヴェリーテも参加してほしいとゲオルグは頼んだ。今にも魔術をぶっぱなしそうな保護者に。



「あの」



 恐る恐るエヴェリーテが挙手した。



「どうして、私もなのですか?」



 昨日見掛けたばかりのエヴェリーテに参加を促すのは、勿論理由がある。ウェルギリウス本人は嫁発言したが、他の人が見たらウェルギリウスの娘と思う。ゲオルグのある特殊な目が、小さな体に秘められている潜在能力に目を付けた。もしも、王子どちらかの婚約者、引いては未来の王妃となってくれれば心強い。何より、大陸最高峰の魔術師の明確な後ろ楯も得られる。

 等と口にすれば、さっきから人を瞳で射殺せんばかりの眼力で睨んでくるロリコンに殺されかねないので、上手い誤魔化しをした。納得したエヴェリーテは、ウェルギリウスを見上げた。



「公爵の地位を賜っているなら協力しなさいよ。私は大丈夫だから」

「……」



 第一王子パーシアスは、イーリスの前世の幼馴染みのパーシアス。イーリスの転生者であるエヴェリーテは、記憶を持っていても、中身は別人。そして、王子が前世の記憶を取り戻すのは物語終盤だとエヴェリーテは知っている。もう一度、大丈夫だと念を押したエヴェリーテに折れたウェルギリウスは了承した。心底安堵したゲオルグはほっと息を吐いた。



「助かったよ、エヴェリーテ嬢。君の助けがなければウェルギリウスを説得出来なかった」

「頼み事は受けてやったんだ。とっとと死ね」

「死なん! そして、まだ帰らんぞ! 昨日の恨みをまだ晴らせてない!」

「あ?」



 面倒臭そうに片眉を上げたウェルギリウスにびしっと指を指した。人に指を向けると教わってないのかと嫌味を言われて引っ込めたが。



「ウェルギリウス! おれとけっ――」



 最後まで言わせず、王城へ強制送還した。多分、決闘と言いたかったのであろう。また城の者達に小言を言われるのであろうがウェルギリウスには知った事じゃない。



「王様を粗雑に扱って大丈夫なの?」

「さあな。敵に回るなら全力で相手をするまでだ。俺にとっても良い退屈凌ぎになる」

「バージル様を相手にして、敵う相手はいらっしゃいませんよ。国にしても同じです」

「はい。バージル様は第七超度(ズィーベン)を上回る人外にして、大陸最高峰の魔術師です。例え、王国がバージル様を敵に回しても心配無用ですよ」

「……」



 妖精二人のウェルギリウスに対する圧倒的信頼は何処から来るのだろうか。エヴェリーテにしたら、凄そうに見えても中身はロリコン。今も人の頭を撫で撫でしているだけ。



「それはそうと。屋敷の案内がまだだったな」

「あ、ごめん、私してない」

「気にするな。ララ、アイ。来い」

「「はい!」」



 エヴェリーテを抱き上げ、今日から働く妖精二人に屋敷の案内をしたのであった。





 ーおまけ 王城内ー


 ウェルギリウスによって、王城へ強制送還された王ゲオルグは、気付けば玉座の広間にいた。

 執務を抜け出した王を探し回っていた兵達は、突然戻った王に言葉を失うも……。我に帰った王国の宰相が「陛下ああああ!!」と怒号を放った。



「貴方はまたウェルギリウスの所へ……!」

「聞いてくれハリー!! 奴め、一度ならず二度までもおれを強制送還したんだぞ!? 少しは、人の話を聞いてくれても良いと思わないか!?」

「こっちが言いたいですよ!!」



 普段から、ゲオルグの奔放さに翻弄される宰相ハリー。ウェルギリウス相手に振り回されるゲオルグに振り回されるこっちの身にもなってください! と何百回目か数えてないお願いを言い放ったのであった。





読んでいただきありがとうございました!

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