表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリコンな保護者兼お師匠様に溺愛される  作者:
十歳編~波乱の幕開け~
3/34

第二話 キャラ情報の整理

 


 朝食は豪華な食事内容に驚きつつも、確りと完食したエヴェリーテは、本日二度目の口付けを受けてぐったりとしていた。美味しそうに朝食を食べる姿が可愛くて我慢できなくなって手を出したと平然と言ってのけるこのロリコンを誰か始末してください。切実に。命の危険が無くても、違う意味での危険がある。涙目な青い瞳に睨まれても、ウェルギリウスには子猫に睨まれているのも同等。腕の中でぐったりとするエヴェリーテの頬を撫でる。



「さて。食事も終わった。これからの事を話そうか」



 あのキスのせいで体力は全てウェルギリウスに吸収されたが、重要な事なのでエヴェリーテは座り直した。……膝の上だが。



「中身が違えど、お前はイーリスの転生者。記憶は持っているんだろう?」

「……うん」

「まず、イーリスがあの駄犬に殺されてから、今は五百年が経っている。嘗て存在したカボロの村はもう存在しない。あの馬鹿が全員殺したからな」

「……」



 物語通りだ。

 イーリスは五百年に一度生まれる“終焉の魔王”の転生者。北の大陸ボルフィードを統治するヴォルティス王国騎士団団長にして、“聖なる女神”イーサの護衛がいち速く感付き、カボロの村毎イーリスを葬った。ウェルギリウスは、何千年も前から生き続ける謎の不老体質者。五百年後――つまり、エヴェリーテが生きている時代は、再び“終焉の魔王”の転生者が目覚める“降臨の日”が訪れる。



「あの馬鹿も恐らく転生している。“降臨の日”が近付けば、またお前の存在を感じ取って殺しに来るだろうな」

「今回は死なない」

「ほう? 何故言い切れる?」

「――貴方がいる。貴方が守ってくれるでしょ?」



 自分好みの少女の姿に転生させたのだ。守ってくれなければ困る。真っ直ぐに見つめられ、逸らす事もせず、ウェルギリウスもまたエヴェリーテを見つめる。ふっと、柔らかく微笑すれば額にキスを落とした。



「あぁ。守ってやるよ。保護者の責任として」

「じゃあ、保護者なら子供に手を出すのは止めて」

「ふっ。俺に手を出されなくなったら、困るのはお前だ」

「どういう意味?」



 子供の内から、あんな濃厚なキスの体験はいらない。



「最初に言っただろう。お前の体は俺が用意した。言っておくがこの体は、姿形こそ人間だが人間じゃない。俺が造った人工生命体(ホムンクルス)だ」

「ホムン……クルス……」



 そうだった、とエヴェリーテは思い出した。

 イーリスの肉体は、ウェルギリウスが創造した人工生命体。普通の人間と何ら変わらないが、一つ困った事があった。それは、魔力の供給。錬金術によって誕生した肉体は、常に一定量の魔力を保持しなければならない。その為には、魔石から魔力を供給するか、他者の魔力を奪わなければならない。ウェルギリウスのキスは、彼自身の楽しみでもあるが魔力供給の意味もあった。

 すっかりと抜けていた情報に頭が痛くなる。毎日数回、体から力が抜けるあのキスを受けないとならないから。がっくり項垂れるエヴェリーテの頭を可愛い可愛いと撫でていると、膝から下ろした。



「俺は今から出掛ける。お前は留守番な」

「私も外に出たい」

「明日出してやる。屋敷の中は自由に出歩いて構わないし、庭にも出たければ出ろ。ただ、外には出るな。分かったな?」

「……はい」



 有無を言わせない威圧感たっぷりの視線を貰い、頷くしかないエヴェリーテは素直に従った。いい子だ、と頭の天辺にキスを落とすとウェルギリウスはいつの間にか消えた。

 はあ、と溜め息を吐いて部屋を出た。

 次に行ったのは、自分が目覚めた部屋。部屋に入り、何か書くものを探すと簡単に見つかった。



「とりあえず、覚えてる情報を書いていこっと」



 先ず、ゲームの舞台となるのは魔術大国ヴォルティス王国。数多くの魔術師を有する四大陸中、最も軍事力が強い国だ。主な理由はあのロリコンだが。

 攻略対象は四人。全員が昔話に関係する人物の転生者。

 一人は、ヴォルティス王国第一王子パーシアス=ベル=ヴォルティス。前世は、イーリスの幼馴染みのパーシアスにして、名無しの昔話に出てくる正義の魔法使いの転生者。

 二人目は、ヴォルティス王国第二王子セスト=モネ=ヴォルティス。前世は、終焉の魔王の転生者のイーリスを見つけ出し、村毎彼女を消滅させた“聖なる女神”イーサの護衛の転生者。

 三人目は、代々国の宰相を務めるラピスラズリ公爵家の嫡男ヴィクトル=ハイン=ラピスラズリ。前世は、光の魔術の使い手で正義の魔法使いの友人だった。

 四人目は、王国一の大商会の会長の息子アスラ=モル=ローリング。前世は、“聖なる女神”イーサの弟で魔王と魔法使いの最終決戦では、魔法使いを庇って死亡している。

 ……で、隠れ攻略対象のウェルギリウス=アルシュタート=セルディオス。彼には前世もない。何故なら、五千年前を舞台にする昔話から生きている謎の不老体質者。ゲームでもそうだが、彼の詳しい過去はあまり語られていない。ただ、殺されたイーリスを次の“降臨の日”で“終焉の魔王”へ覚醒させ、世界を混沌に陥れようとするも、前世の記憶と力を取り戻した主人公とメインキャラクター達によって、最後は倒され消滅する。……攻略対象じゃなかったらだけど。


 そして、肝心の主人公の名前はプリムローズ=イブ=ルージュリアン。平民出身でありながら、高魔力保持者と見抜かれ貴族の家に養子として迎えられ、魔力持ちの貴族の子ならば、誰もが通わなければならないヴォルティス魔術学院に通い、そこでメインキャラクター達と出会い、愛を育む。また、プリムローズこそ“聖なる女神”イーサの生まれ変わりである。



「そこに登場するのがウェルギリウスの養女であり、悪役令嬢のエヴェリーテ。今生の私。基本破滅フラグしかないじゃない……」



 主人公とメインキャラクターがトゥルーエンドを迎えても、バッドエンドを迎えても、どっちもバッドな末路しかない典型的な悪役だ。



「はあ……。それにしても、広い屋敷の割に誰もいないのね」



 使用人の一人や二人いても可笑しくないのに気配がない。朝食の準備もウェルギリウスがしたのか? 無駄に長生きしているのだから、料理位は出来る筈。彼が戻ったら聞こうとエヴェリーテはノートを閉じ、表紙に『乙女の秘密』と書いてベッドの下に隠した。前世の弟がよくエロ本をベッドの下に隠していたのを思い出す。




 ◆◇◆◇◆◇◆

 ◆◇◆◇◆◇◆



 約2

二時間後位にウェルギリウスは戻った。庭の薔薇園で日向ぼっこをしていたエヴェリーテは姿が見えたので一応出迎えた。会うなり抱っこをされた。



「寂しくなかったか?」

「いいえ。でも、このお屋敷庭に出て分かったけどかなり大きいよね。使用人とかいないの?」

「いないな。だが、そうだな。俺がいない間の世話係がいるな。明日にでも手配しよう」



 食事の準備や屋敷の掃除は? と訊くと妖精と呼ばれる住民に頼む時があるとか。今朝のはやはり、ウェルギリウス本人が準備した。

 額にキスをして、屋敷に戻るかと思いきや薔薇園の真ん中にあるベンチに腰を下ろしたウェルギリウスはエヴェリーテを膝の上に乗せた。



「昼食は何が食べたい」

「うーん……お任せでいいわ。好き嫌いしないから。こんな大きい屋敷に住んでるって事は、もしかして貴族なの?」

「一応、公爵って立場だな」



 これもゲーム通り。王国が彼に公爵という爵位を与えたのは、下手に野放しにすると危険だと判断したため。ある程度の我が儘は許すが有事の際は王国に力を貸す。代々の国王は皆、ウェルギリウスと良好な関係を築けているので彼がその約束を無視した事はない。



「そうだ。さっきの使用人って、妖精さんでもいいのかな」

「好き好きだ。何なら、妖精の里に行くか? 働き者しかいないからな妖精は。気の合う奴を自分で見つけるのも良いだろうよ」

「うん!」



 ゲームの世界に妖精の存在はあったがスチルもなければ、立ち絵もない。文章で出てくるだけだったので内心聞いて会いたくなった。花のような笑顔を浮かべたエヴェリーテの愛らしさに負けたウェルギリウスが本日三度目の魔力供給兼趣味のキスをしたのは言うまでもない。




 


読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ