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ロリコンな保護者兼お師匠様に溺愛される  作者:
十歳編~波乱の幕開け~
22/34

第二十一話 ゲテモノ注意


最後の方にタイトル通りのゲテモノ表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。

 


「よし!完璧だ!」



 両腕を組んで自信満々に言い放ったゲオルグの足下には、庶民の服装をしたエヴェリーテとセストがいた。ゲオルグ本人も庶民の格好をしている。

 ぷに子探しの為にフィオーレ街へ向かおうとしたエヴェリーテとセストに、城にいる筈のゲオルグが事情は全て聞いていたと二人に姿を変える魔術を施した。今の二人は何処からどう見ても庶民にしか見えない。セストは、銀髪が黒髪になっていた。エヴェリーテはも同じ。術を施した本人も二人の父親の振りをするべく、髪の色を黒に変えた。



「あのう、王様、お仕事の方は……」

「なに、心配いらん。優秀な宰相がどうにかしてくれるさ」

「(お気の毒に……ハリー宰相)」



 セストは、今頃必死になって王を探しているであろうハリーに強く同情した。

 ゲオルグがまたウェルギリウスの屋敷を尋ねたのは、息子のセストの様子を見に来ただけ。一目見たら帰るつもりだったらしいが、ぷにぷに三兄弟の探しぷにであるぷに子の情報を得られると聞き、協力したくなったのだとか。ウェルギリウスがいない今、駄目だと理解しながらエヴェリーテとセストが頼れる大人はゲオルグしかいない。セストはもう一度、心の中で、髪を掻き毟って「どこ行ったあのおっさんんんん!!」と叫んでいるであろうハリーに同情した。


 ウェルギリウス程でなくても、ゲオルグも空間魔術を行使出来る一流の魔術師。セルディオス邸からフィオーレ街へ空間を繋げるのは造作もない。ただ、道のど真ん中に出ると目立つので路地裏に繋げた。ぷにぷに三兄弟の見送りを受けて路地裏に足を踏み入れた三人。ゲオルグは空間を閉じると二人を見下ろした。



「まずは、そのぷに子さんを連れていたという貴族を見たフルーツショップへ行こう」

「はい。父上」

「うむ。だが、セスト。今のおれは国王ではなく、ただの庶民。お前やエヴェリーテ嬢も庶民の子供だ。呉々も、貴族だと気付かれないように」

「はい。父上も、国王だと気付かれないようにしてくださいね」

「心配するな。子供の頃、よく魔術で姿を変えて平民界へ遊びに行っていたから、庶民の作法はよく知っている」



 次期国王候補である王子に言う台詞ではないのに、豪快に笑って自慢するゲオルグ。二人からは何とも言えない雰囲気が漂っているとは知らず、行くぞとフルーツショップを目指した。

 アイの言った通り、屋根に大きなリンゴの看板があった。とても分かりやすい目印のフルーツショップの中へ入った。平民界で特に品揃えの良い店で連日客が絶えない人気な店だ。三人が入った先には、五人のお客さんがいた。



「いらっしゃいませ」



 女性店員が二人の子供を連れたゲオルグに気付く。エヴェリーテは棚に並んでいる果物の中で特に自分が好きな果物があるのを発見。苺である。昨日も一昨日も食べたが毎日食べても飽きない大好きな苺がそこにある。買いたいのにお金を持ってない。買い物に行く時はいつもウェルギリウスが一緒なのでエヴェリーテはお金を持っていない。また、持たされていない。ウェルギリウスが絶対に一緒だから必要なかった。屋敷に戻ったらお願いしようと決めると誰かの手が棚にある苺を取った。



(あ……)



 しょんぼりとするエヴェリーテにセストが名前を呼び、あれとある場所を指差された。



「これをくれ」

「はい。1140コニーとなります」



 苺を購入したのはゲオルグだった。エヴェリーテが苺を欲しがっているとセストに教えられて購入したのだ。苺は他の果物と比べると高級な部類に入る。その為、普通の平民では中々購入出来ない。苺を紙袋に包む男性店員にゲオルグが世間話としてスライムの話題を出した(ぷにぷにが正式名称であると知るのはぷにぷに三兄弟と関わっているエヴェリーテ達だけであり、世間の常識ではスライムと呼ばれている)



「最近、モヨリの森で変わったスライムを見たという噂を聞くんだが知っているか?」

「おっ、ひょっとしてそいつはレディ・スライムの事か?」



 レディ・スライム?

 聞きなれない名詞に二人は顔を見合わせ、庶民に扮しているゲオルグの足下の側まで行った。



「ねえねえ!そのレディ・スライムってなに?」



 無邪気な子供を装ってセストが店員に訊ねた。



「ああ、何でもスライムにも性別があるらしいんだが、メスのスライムというのが極少数しかいないみたいで、滅多に姿を現さないんだがそのレディ・スライムを捕まえたとスライムコレクターが自慢げに見せびらかしていたんだと」

「ほう。そのスライムコレクターというのは?」

組合(ギルド)に所属している魔術師だよ。どこの組合か知らないが、巷じゃスライムコレクターとして有名な男でね。様々なスライムを捕まえてはコレクションにしていると聞く」


「あの」とエヴェリーテがひょっこりと顔を出して男性店員と目を合わせる。


「スライムは魔物なんですよね?危なくはないのですか?」

「まあ、所詮は最弱の魔物だからね。それに、普段はちゃんと結界を貼った部屋に閉じ込めているから大丈夫だっていう噂だよ」

「そうなんですね」



 包装し終わった苺を受け取ったエヴェリーテ達は店を出た。得られた情報は中々に貴重だった。スライムコレクターなる男性魔術師を探すのが先決だが。



「そのスライムコレクターが所属している組合がどこの組合か調べる必要がありますね」

「うむ。だが、組合は大・中・小、規模もさることながら数も多い。一人の魔術師を探し出すのには時間がかかるな」

「組合にスライムコレクターって人がいますかって聞くのは……」

「「駄目」」

「ですよね……」



 ゲオルグとセスト、二人同時に却下され、駄目元の意見だったとしても地味に落ち込むエヴェリーテ。他に案はないかと、フルーツショップの前にいては店の迷惑になるので適当に街を歩く。



「歩いている最中にそのスライムコレクターって人が見つかれば良いのですが……」

「それは難しいでしょう。そもそも、スライムコレクターがどの様な風貌の男性かも知りませんよぼく達」

「ですよね」

「ふむ……一先ず、屋敷に戻るか」



 ゲオルグの帰宅案にこれ以上の良案を提示出来ない二人も頷いた。

 時だった。

 三人の前を歩く男性二人組の会話が耳に入った。



「おい、聞いたか」

「ああ、アックスの奴、レディ・スライムを見つけたと興奮してやがったから、もしかしたらと思ったが」

「あいつの性癖は俺に理解出来んわ」

「安心しろオレもだ。だが、スライムのあのぷにぷに感は確かに極上だ。女を抱くよりぷにぷにで発散するのも……」


「「「……」」」



 子供が聞いてはいけない会話を街中で平然と続ける二人組。顔を真っ赤にする子供達の耳を塞いでやりたいがゲオルグの腕は二本しかない。また、会話の内容が非常に気になる。二人も顔を真っ赤にしながらもしっかりと会話を聞いている。



「でもよ、俺アックスから聞いたんだがそのスライム喋るらしいぜ」

「スライムが?嘘だろ」

「本当だって。しかも、そのスライム自分はスライムじゃなくてぷにぷにって言うんだ」

「ぷにぷに?聞いたことないぞ」

「だろ?レディ・スライムってだけで珍しいのに更に言葉を話せるときた。アックスが周りに見せびらかす為に鎖で縛って、レディ・スライムを連れ回してるんだ」

「マジかよ。どうしようもないなあいつ」

「だな。ただ、ペステ街にあるアックスの家には、干からびたスライムが転がってるって話もある」

「スライムが?何をしてるんだ」

「さあな。あの変態の事なんざ、知らねえよ」



 二人組の男性が酒場へ入って行ったのを見届け、ちゃっかりと会話を盗み聞きしていた三人は顔を見合わせた。エヴェリーテとセストの顔はまだ赤いが真剣な顔付きとなっている。



「かなり重要な話を聞けましたね」

「うん。スライムコレクターの名前も住んでいる場所も分かったね。ペステ街って何処にあるか知ってますか?」

「ぼくは知りません。父上は?」

「平民界にある街だ。だが、平民界で一番治安が悪い街だ。エヴェリーテ嬢とセストは屋敷に戻りなさい。おれが様子を見よう」

「わ、私も行きたいです!」

「駄目だ。エヴェリーテ嬢。君に魔術師として、一流の才能があるのはあの時の魔力検査でよく知っている。だが、まだ子供なんだ。それに聞いたが、二人ともまだウェルギリウスに魔術を教えてもらっていないのだろう?」



 一年は魔術師の土台作りしかしないと宣言されたので魔術はまだ習っていない。ある一つの魔術を除いて。



「いえ、父上。ぼくとエヴェリーテ嬢は、もしもの為にある魔術を修得しています。それに、いざとなったら父上を盾にしますから大丈夫です!」

「うむ。お前、おれの扱いが段々ウェルギリウスに似てきたな。分かった。但し、危ないと思ったらすぐに逃げろ」

「「はい!」」



 三人は再び路地裏に入った。ゲオルグが路地裏とペステ街の空間を繋いだ。現れた空間に足を一歩踏み入れ、路地裏からペステ街と移動した。フィオーレ街と違い、建物も古く汚れ、周囲の道にはゴミが至る所に落ちていた。人通りも少ない。



「フィオーレ街と全然違いますね……」

「うん……」

「ペステ街は、平民界の貧民界と呼ばれている程治安も悪ければ衛生面も悪い。王国としても、対策を取りたいが上手く出来ないのが現状だ」



 一部の富裕層だけが贅沢三昧な生活が出来、残りの半分以上の人々が日々の食事すらままならない生活を送っている。平民界でもその差は激しい。フィオーレ街は、いわば平民界でも富裕層に入る人達の街だ。

 成るべく、目立たない為にゲオルグは姿を消す魔術を使用した。

 アックスというスライムコレクターの家探しが始まった――。





 ◆◇◆◇◆◇

 ◆◇◆◇◆◇



「おい、エヴェリーテは何処へ行った?」



 用事を終えて屋敷に戻ったウェルギリウスは、ただいまのキスがしたい愛しい少女の姿が屋敷の何処にもないので厨房で昼食の仕込みをしているララとアイを尋ねた。煮込み作業をしていたアイが説明をした。

 状況を聞いたウェルギリウスは深い溜め息を吐いた後、厨房を出た。向かうはエヴェリーテがいる所――ではなく、自室。ベッドに寝転がり、雨が降る外を窓越から見つめた。ゲオルグがいるなら、余程じゃない限り安全だろうと。



「はあ……」



 また、溜め息を吐き、青い瞳を閉じた。

 エヴェリーテが戻ったら、ただいまのキスとお帰りのキスをしようと決めた。

 まさか今頃、エヴェリーテ達が悪夢の光景を目の当たりにしているとは露程も知らずに。





 ◆◇◆◇◆◇

 ◆◇◆◇◆◇



 アックスの家探しが開始して約二十分後――


 あの男性二人組の言っていた通りの光景があった。ある一軒の家の周囲に干からびたスライムが多数放置されている。姿を消したまま近寄り、干からびたスライムを覗いた。

 生気がなく、あのぷにぷにとした弾力も瑞々しさもない。ただの干からびた物体と化している。ツンツンとセストが突いても微動だにしない。



「恐らく、死んでる」

「そんな……」



 スライムは魔物。魔物は退治しないと理解はしている。だが、干からびたスライムの惨状にエヴェリーテは口元を手で覆った。ぷにぷに三兄弟が探しているぷに子も同じになるのでは?と不安が襲う。



「家に入りますか?」

「そうだな。罠がないか調べてか――」



 ら、と続けたかった言葉は、家の扉が乱暴に開かれた事によって不可能となった。姿は見えなくても声は聞こえるので口を閉じた。家の中から現れたのは、人相の悪い黒髪の男と男に鷲掴みにされている水色のスライムと赤色のスライム。酒を飲んでいたのか、男からは強いアルコールの臭いがプンプンする。

 水色のスライムを見て三人は確信した。

 長い睫毛に紅い口紅を塗った水色のスライムはスライムではなく、ぷにぷに三兄弟が探し続けていたぷに子。

 アックスと思しき男は赤色のスライムを地面に放るとぷに子らしき水色のスライムを両手で抱き上げた。



「ああ~綺麗だなあレディ・スライム。今までのスライムと全然違うぜえ」

「ああんっ、旦那様ったら、他のぷにぷにとわたしくしを一緒にしないでくださいませ」

「おお、悪い悪い。そうだったなあ、ひく、お前はぷにぷにって名前だったな。ひく」



(これは……エヴェリーテ嬢とセストはやはり連れて来るべきではなかったか?)



 命の危険ではなく、別物の危険が迫っている気がしてならないゲオルグの予感は当たった。エヴェリーテとセストを別の場所に移動させようと動きかけた直後、下品な効果音が発せられた。エヴェリーテとセストの真っ青になった驚愕の表情にゲオルグが振り返ると。ぷに子に熱いキスを交わすアックスがそこにいる。



「「「……」」」



 男女のキスならば、赤面して視線を泳がせる場面。

 男は人間、女がスライムだととんでもないゲテモノに変化した。

 咄嗟に二人を抱き締め視線を遮り、耳を閉じろと小さな声で言いつけた。ゲオルグの指示通り、手で耳を閉じた二人だが見てしまった光景は中々頭から消えてくれない。



(ん……?)



 ゲオルグとて、ゲテモノ光景は見たくないがある異変に気付く。下品なキスをされるぷに子の球体が見る見る打ちに萎んでいく。

 まさかと思ったゲオルグの予想は当たった。



「ぷはあ~!ああ!スライムジュースはレディ・スライムに限るぜ!」



(スライムジュースって何だ!?)





読んでいただきありがとうございました!


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