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ロリコンな保護者兼お師匠様に溺愛される  作者:
十歳編~波乱の幕開け~
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第九話 早々に帰りたい

 


 茶会当日――



「どう……かな? 変じゃないよね?」

「はい! ばっちりです!」



 エヴェリーテの青みがかった銀髪に似合う白のドレスを着させ、頭には白いリボンを結んだ。以前、赤いリボンを買った店にまた赴き購入したリボンだ。不安げに保護者を見上げると抱き上げられ、額に唇が触れた。



「似合ってるよ。エヴェリーテ」

「う……あ……ありがとう」



 今までに見た覚えがないくらい優しい笑みを浮かべられて、顔に体温が集中してしまう。因みに、ウェルギリウスの服装も本日はよそ行き仕様となっており、ヴォルティス王国の最高級木地を使って作らせた黒いスーツ姿です。



「留守は頼んだぞ」

「はい! お任せ下さい!」

「ララさんとアイさんとお屋敷の事は、我らぷにぷに三兄弟に!」

「いってらっしゃいませ! お嬢様! お師匠様!」


「……ああ……」

「あはは……」



 妖精二人とぷにぷに三兄弟に見送られ、瞬間移動(テレポート)で王都のソゥ・オノール城の門前へ飛んだ。初めて目の前で見る城のスケールに圧倒されるエヴェリーテの頭をポンポン撫でてやり、中へ入ろうとすると見張りの騎士に声を掛けられた。



「ウェルギリウス殿ではありませんか!」

「え? その子……隠し子ですか?」



 両者異なる対応に面倒臭そうに溜め息を吐いたウェルギリウス。騎士二人とウェルギリウスを見比べ、知り合い? と訊いた。



「あの阿呆を迎えに偶に来る」

「阿呆って……一応あの方、この国の国王なのであまり雑に扱わないで下さいね。昨日はなんか、宰相を筆頭に臣下達に見張られて書類仕事をしていたみたいで、寝てないんだよー! と愚痴を零しに来る程なんですから」

「まあ、あの人の場合、自業自得な気がするけど……」

「だな」



 信用があるのか、ないのか、今一よく分からない。



「それより、今日登城したのって例の、王子達のあれを決めるやつですか?」

「そうだ。面倒なもんに引っ張り込まれた」

「やっぱり! お嬢様のお名前は?」

「あう……えーと、エヴェリーテ=ナノ=セルディオスです」



 本当なら、ちゃんと地面に立ってララから教わった挨拶をしないといけないが、ウェルギリウスに抱っこをされたままなので頭だけを下げた。騎士二人も咎める事もなく、大陸最高峰の魔術師に子供がいた事実にただただ驚くばかり。

「登城手続きは不要ですので、どうぞ中に。茶会の場所はこの先を進んである上の中庭で御座います」と騎士に場所を教えてもらい、中へ入っていく。エヴェリーテがバイバイと手を振ると騎士二人も返してくれた。



「あの人達、名前はなんて言うの?」

「知らん」

「知らんって……聞いてないの?」

「一々、覚えてられるか」

「もう」



 今度、会う機会があれば聞こう。

 門番が言っていた上の中庭らしき場所に着いた。地面全体が芝生で覆われた広い場所。周囲には、色鮮やかな季節の花が咲き誇っている。茶会には既に到着している招待客がいるようで、皆顔見知りや初めて会う人に自己紹介を行っていた。

 あの集団の中に入らなければいけないのかと、胃が重くなったエヴェリーテを下ろしたウェルギリウス。ポンポンと頭を撫でられると不思議と気分が軽くなった。隣を見上げれば、堂々としていろと促された。



「貴族令嬢なんざ、威張ってなんぼだ。下を向いてたらあっという間に食われちまぜ」

「う、うん。頑張る」

「最後までいるつもりはない。適当なとこで帰って、デザートでも食べるか?」

「うーん……胃が無事だったら」



 素敵な提案を是非と喜びたいのにエヴェリーテの胃が保つか微妙な所なのだ。

 ウェルギリウスに差し出された手を握り締め、いざ、茶会の場へ足を踏み入れた。

 談笑していた貴族達が会話を止め、大変珍しい人物に皆視線を集中させた。公爵の地位を賜りながらも、決して表舞台に出てこない王国最強にして、北の大陸最高峰の“人外”の魔術師ーウェルギリウス=アルシュタート=セルディオスが幼い女の子を連れている。青みがかった銀髪に、くりくりとした大きな青い瞳。大人になれば、可憐な女性になると思われる美少女。ウェルギリウスの性癖を知っている一部の貴族からは、少女に対して同情にも似た眼差しを向けた。無論、びんびんそれを感じ取るエヴェリーテにしたら居心地が悪くて最悪だ。見た目からして似てないので親子と思われていないのだろう。母親に似ていると思われないのも、保護者の男が幼女が好きなロリコンだからだ。

 白いクロスが掛けられたテーブルにある、オレンジジュースをエヴェリーテに渡したウェルギリウスも同じのを取った。



「ありがとう」

「あぁ。……はあ、もう帰っていいか」

「来たばかりじゃない」

「鬱陶しい視線を貰って居心地が良いなんていう奴、いると思うか?」

「それは……そうだけど」

「帰るか」

「え」



 オレンジジュースを一気に飲み干したウェルギリウスが転送方陣を展開しようとした直後――一人の男性が声を掛けた。



「まあまあ、セルディオス公。そう急がずに。茶会は始まってもいないのですよ」



 不機嫌なウェルギリウスに話し掛けた男性にエヴェリーテは心の中で拍手を送った。紅色の髪をオールバックにしたダンディな雰囲気を醸し出す中年の男性。髪の毛と同じ色をした瞳がエヴェリーテを視界に納めた。



「初めまして。私はシリウス=スカーレットと申します。スカーレット公爵家の当主を務めております」

「……って事は、公爵様?」

「はい。貴女様のお名前をお教え願えませんか?」

「は、はい! エヴェリーテ=ナノ=セルディオスです。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません!」



 慌ててララに教わったお辞儀と挨拶をしたエヴェリーテ。軽快に笑うお陰で不安が少し払拭された。



「お気になさらず。公爵と言えど、セルディオス公と比べると天と地の差があります。まだまだ若輩者の私に、是非ともご指導の方を」

「知るかよ。とっとと失せろ」



 しっしっと手で追い払われてもシリウスは嫌な表情を一つも浮かべず、逆にどんどん迫ってくる。



「まあまあ。時に、セルディオス公。貴方にこんな可愛らしい令嬢がいたとは知りませんでしたぞ。奥方は?」

「いる訳ないだろ。この子は俺のだ」

「予想通りと言うか……。大人の女性の魅力をもっと知るべきです」

「余計なお世話だ。今はエヴェリーテで満足してるんだよ俺は」

「……」



(違う所行こ……)



 このまま一緒にいたら、聞かない方がいい話まで聞かされる羽目になりそうだと判断した。こっそりとウェルギリウスの側を離れようとするも首根っこを捕まれ、体が宙に浮いた。



「ちょこまか動くな。此処にいろ」

「なら変な話しないでよ!」

「お前が可愛いって話をしてるんだ」

「どこがよ」

「まあまあ。陛下にどの様な思惑があるにせよ、今日は最後までいてくださいよ? セルディオス公」

「さあな。俺の気分次第だ」



 王様が開催し、招待した茶会を途中で抜け出す等普通なら有り得ない。だが、この男はその有り得ない事を平然とやってのける。エヴェリーテを下ろすとまた頭を撫でた。



「気分が悪くなったらすぐに言え。いいな?」

「うん」


「――お、いたいた。ウェルギリウス。待たせたな」



 招待客の挨拶回りをしていた王ゲオルグは、先程からずっと探していた相手を漸く見つけたと歩み寄ってきた。彼の足下には、エヴェリーテと同い年位の瓜二つの少年が二人いた。


 遂に対面してしまった――……。



「さあ、パーシアス。セスト」



 前世のエヴェリーテの幼馴染みパーシアスの転生者と彼女を葬った“聖なる女神”イーサの護衛の転生者。ゲームのメインキャラクターの双子の兄弟。



「ヴォルティス王国第一王子パーシアス=ベル=ヴォルティスです。この度はお初にお目にかかり光栄です。セルディオス公爵。エヴェリーテ嬢」

「ヴォルティス王国第二王子セスト=モネ=ヴォルティスです。お会いできて光栄です。セルディオス公爵。エヴェリーテ嬢」



 王子二人の挨拶には、最上級の挨拶で返したエヴェリーテはちらりとウェルギリウスを見た。ふっと、微笑を浮かべられた。可笑しな所はなかったらしい。ララとのレッスンが無駄にならずに済んで内心ホッとする。

 エヴェリーテは、改めて王子二人の容姿を確認する。

 父親譲りの流麗な銀の髪。双子なだけあって瓜二つなのだが、パーシアスはアメジストの瞳でセストはゲオルグと同じ銀の瞳。瞳の色が二人を見分ける印のようだ。

 エヴェリーテが微笑み返すと二人がほんのりと頬を赤らめて視線を逸らした。



(……もしかして、気持ち悪かった?)



 ウェルギリウス好みの容姿と言えど、そこそこ美少女の容姿をしているのに。

 ちょっぴりとショックを受けたエヴェリーテ。



「来てくれて良かった。エヴェリーテ嬢も楽しんでいってくれ」



 気を取り直す様に、はい! とゲオルグに賛同しようとしたエヴェリーテを邪魔するかのようにウェルギリウスが「飽きた」と発した。



「もういいだろ。お前や王子達との顔合わせも済んだんだ。帰るぞ」

「我儘言うな子供か! 来たばかりだろ!」

「鬱陶しい視線に晒されて気分が良い奴がいるってか?」



 ウェルギリウスの言う通り、こうしてゲオルグと会話するだけで他の貴族からの不躾な視線がウェルギリウスやエヴェリーテに集中する。

 滅多に表に出て来ない男とそんな男に連れられた少女に注目しないのが無理な話。ギロリと一睨みしただけで周囲の者達がひっと短く悲鳴を上げた。パーシアスとセストも、初めて見るウェルギリウスの苛立ちに顔を青くする。



「子供達まで脅えてるじゃないか。エヴェリーテ嬢もいるんだ。今日は、彼女の為と思って我慢しろ」

「……はあ……分かったよ」



 これ以上我を通せば、次また何かに招待された際エヴェリーテが肩身の狭い思いをする。遠回しに非難されて漸く殺気を消したウェルギリウスがエヴェリーテを心配げに見下ろした。



「悪い……」

「ううん。気にしてないよ。はい、これ飲んで落ち着いて」

 


差し出したのはオレンジジュースの入ったグラス。糖分を取れば落ち着くよとエヴェリーテの助言と共に受け取り、また一気に飲み干した。空のグラスをテーブルに置いてエヴェリーテの髪をリボンが乱れないように撫でた。



「ありがとう」

「うん!」

「……」



 ウェルギリウスとの付き合いが長いゲオルグでも、あまりにも穏やかに微笑む姿など一度も目にした事がなかった。簡単にそれをさせる少女にほんの少しだけ恐怖と共にある感情を抱いた。



「「……」」



 パーシアスとセスト。二人の王子もまた、心底信頼し切った青い瞳をウェルギリウスに向ける少女にある感情を抱いた。

 ――独占欲という……初めての欲を




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