通行人Aさん
掲載日:2018/11/16
大粒の涙を遠慮なく零せる
弱いところをこれでもかと見せる
人目を気にせず手を握る、抱きしめられてキスをする
素直で秘密なんてなくてあなたに全てを預けている
と、潤んだ真っ赤な目が囁いている。
そう、これらは全ては武器になるのだ。
みんなが味方、男女問わず、これが主演女優なのだ。
その点私は主演女優ではない。通行人Aである。
ただ歩いているだけ、私は私だ。
あなたが酷いことばで私をぶって、
遠ざかっても
私はその背中に飛びつきはしない。
泣くのは自分の部屋、扉をしっかり閉めてから。
嗚咽をしながら涙と鼻水をハンカチで拭う。
あの子は、あなたの手で涙を拭うのだろうか。
私にはできない。
かわいくないね。
あの子にはできる。
みんなだいすきだね。
私は私を可哀想だと思う。
鏡に映るぐしゃぐしゃな顔を殴りたくなる。
だれもみていないね。通行人Aさん。




