6月2日早朝2
明智光秀(以下光秀):「……なんで私は信長様に刃を向けてしまったのだろうか……。」
斎藤利三(以下利三):「(この人。まだ吹っ切れてないのかな……。)殿。まだ勝利を修めることは出来たわけではありませぬぞ。」
光秀:「……なんかお前。あの時変なことを言われたような……。」
利三:「何をでございますか?」
光秀:「……決断の時は今ですぞ……?とか言ってなかったか……。」
利三:「それが何か?」
光秀:「……何の決断を下すことになったのか?が定かで無いのであるが……。」
利三:「憎き信長と言う重しを取り除くことが出来、殿も安堵されたのでありましょう。ところで殿。まだ勝利を修めることが出来たわけではありませぬぞ。」
光秀:「一番安全であったハズの。我らが居る京の都目掛け、これまで味方であった信長様の家臣が殺到することになったのであるからな……。」
利三:「……殿。」
光秀:「……なんだ。」
利三:「我らと目と鼻の先にある二条城に信忠がいます。」
光秀:「それがどうしたのだ。」
利三:「織田家の家督は今、信忠に継いでいます。」
光秀:「それがどうした。」
利三:「もし今、信長に続き信忠も居なくなってしまった場合。織田家は誰がまとめることになりますか?」
光秀:「……並びからすると信雄様、信孝様の順になるが……。」
利三:「ただ生まれた順は……。」
光秀:「信孝様のほうが早かった……。」
利三:「今信長に続き信忠にもしものことがあったとしたならば……。」
光秀:「信長様のもと。一枚岩となっている家臣団が自らの存在価値を担保する傘を求め、信長様の遺児を担ぎ上げることになる。」
利三:「その家臣団を分断するのに足枷となる信忠が今。我が軍の目の前に。ほぼ丸腰の状態にあります。」
光秀:「まずここを叩くことが……我らが生き残るために必要な一手となる……。そういう事なのであるな……。」
利三:「左様。」
何やら利三の意のまま。信長を討ってしまった光秀は、意を決し。信忠の籠る二条城へと兵を進めるのでありました。その頃、二条城の信忠は……。