第3話「いいかげんにしなさい!」
「お、坊主、うちの新入生か?」
ベンチに腰かかけてニコニコ顔の綾部はそう手招きをしながら声をかけた。
栗色に近い茶髪の男子、陸軍少年学校新入生の松岡大吉は少し首を傾けながら綾部にガンを飛ばした。
「あ? 誰だ? 坊主って」
綾部は一瞬だけ目を細めた。そして、ヘラヘラした顔に戻った後、手を叩きながら爆笑する。
ひと通り笑いの発作が収まると、未だ笑いを堪えて耐えているのだろう、苦しそうな表情で大吉を見上げた。
「すまん、ごめん、笑いすぎた……いや、その反応がかわいくてかわいくて」
そう言ってペコリと頭を下げた。
謝っているが、既に口元が緩みだしている。
「なんだ、てめえ! 喧嘩売ってんのか、コラァ!」
大吉は精一杯凄んでいる。
そんな恫喝にはまったく動じない綾部。
むしろ笑いを堪えるのが精一杯という顔のままペコリペコリと頭を下げた。
「いや、違うんだ、喧嘩は売ってない、ははっ……いや、もうツボなんだよ、その態度とかその目つきとか、うははっ……ごめんごめん」
と言って綾部は胸の前で両手を合わせた。
『許してちょうだい』のポーズだ、だが笑いを我慢できず、すぐに吹き出してゲラゲラ笑い出してしまった。
大吉はこめかみに血管を浮かせながら怒りの表情を見せる。
初めが肝心。
それが彼が十五年生きてきた中で学んだ処方箋。
こういう反抗的な態度が彼にとっては自然な対応だった。
ある意味綾部の方が大人気ない対応と言えるだろう。
十五の男子に対していい大人が挑発しているのだから。
「くそがっ」
とは言ったものの何もできる立場ではない。
大吉にしてもムカつくからと行って「はい帰ります」なんて言える状態ではない。
彼は彼なりの事情がある。
どうしても、この学校で三年間を過ごさなくてはいけない。
このちょっとした騒ぎに学校に関係ない通行人もじろじろ見だした。他の新入生達は大部分がひそひそ話すか見て見ぬ振りするような状態である。
誰も関わり合いたくない。
学業についての成績優秀者が選定されて来た学校である。
あまりこういう『不良』的な学生に免疫がある子は少ない。
「くそっ、見世物じゃねえんだ!」
大吉が、周りの新入生を威嚇する。
「いやー、いいねえ、面白い」
ますますうれしそうな綾部。
その時だった、その遠巻きに見ている新入生を掻き分けて一人の女子が彼の横に立っていた。
風子だ。
「ピーピー、ピーピー、うるさい」
はっきりとし、そして低い声で彼女は言った。
「なんだとっ!」
大吉はぐいっと風子に近寄り、睨みつけた……と、言うよりも見上げるような状態だ。いかんせん、風子の方が背が高い。彼は小柄で一六〇㎝ぐらいなのだが、彼女は五、六㎝高い。そして、綾部の方をキッと睨んだ。
「綾部軍曹も、子供に喧嘩吹っかけるとか、子供じゃないんですから、やめてください」
「あー、そだね、ごめん」
素直な綾部はペコリと風子に謝った。
「お前、生意気」
声を震わせて怒りをあらわにする大吉。
「や、か、ま、し、い」
風子は淡々と威圧する。
「くそがっ! てめーには関係ねーだろ」
「あんたね、その人にからかわれてるだけって分かんないの? ガ、キ……見てて恥ずかしいの、この空間にいることが耐え切れない」
「うるせえ! てめえ痛い目みたいのか」
風子は呆れた顔で、ため息をついた。
「ほんと、男って最低、子供、こんなのといっしょに学校生活を送らないといけないなんて、不憫、ほんと不憫すぎる……」
「っだと、こらぁ!」
その光景を見ていると、誰もが大吉の悲しい姿に同情する。
完全に口では負けているのだ。
だが、彼も不良のはしくれである。
周りに見られている中で、完全に馬鹿にされていることは認識していた。
見栄も恥ずかしさも悔しさも、そんな感情が彼の中で渦巻いて、頭に血が上ってしまった。
だから、普段は女子に対して絶対にしないこと――暴力――を選んだ。
彼が左手を伸ばして風子の肩に触れ、掴む。
そして右手を振り上げた。
風子もまさか女子に手を挙げるとは思っていなかったから、ゾクッとして血の気が引いた。
中学校でも不良たちに一目――どちらかというと、惚れられていた――置かれていたから、決して手を挙げられることはなかった。
振り上げられた右手に目がいった瞬間、彼女は怯えの表情に変わる。
が、その右手を打ち付けるような音はなかなか響かない。
「まあまあ」
大吉にしてみれば何が起こったかわからなかったのだろう。
目の前の「まあまあ」言う男子をキョトンとして見ている。
なぜなら、風子を掴んでいた左手を不思議なほど自然に外されたのだ。そして、振り上げた右手がくるりと後ろに回転させられ、拳は太ももの位置に固定された。
次郎だった。
彼は一瞬にして大吉の間合いに入った。
古武術特有の上下運動の無い間合いのつめ方だ。
大吉からすると彼が一瞬にして短い距離を飛び込んできたように見えた。
さすがに大吉も度肝を抜かれ、動揺してしまい間が抜ける。
次郎はその瞬間を狙った。
大吉の右腕を絡み取るようにして、力の入らない方向にスルッと円の力を加えて、それを無力化した。
「この女の子に関わっちゃだめだ」
真顔の次郎。
「な、な……」
「俺も痛い目見たから、それにあんな大人を相手にしちゃいけない」
「うるせえ!」
次郎は一七〇㎝半ばあるぐらいの背格好なので、兄と弟の喧嘩のように見えなくも無い。
大吉はその背の低さでだいぶ損をしている。
どんっ。
彼は次郎に体をぶつけるようにして間合いを詰め、息がかかる距離でガンをとばした。
それに対し、次郎は笑ってごまかすようにして両手を肩の位置に開いて『何もしない』という合図をした。
「落ち着こう、ね、えっと、俺、上田次郎」
困った顔をして笑いかける次郎。
それを見て益々イライラして声を荒げる大吉。
そりゃそうだ、馬鹿にされているとしか思えない。
「うるせえ! 馬鹿野郎、俺は松岡大吉だ! 地元の中学じゃ、番張っていて、市内の他の奴らも俺に……」
次郎が間に入ったため、文字通り間が抜けてしまった風子は、未だピーピー言っている格好悪い男子を呆れ顔で見ている。
「えっと大吉君、この女子は、まじ性格悪いから、関わったらすごく面倒になるから、うん」
「はあ!?」
今度は風子が声を荒らげる番だった。
すごく騒がしい。
この三人ともに手も届くような位置で座って観戦――本当にプロレスでも見ているような態度――している綾部軍曹はすごく楽しそうだ。
風子はちらっと彼の態度と表情を見て、今度はジト目で、この大人を見る。
まったくどいつもこいつも男子という生き物はお子様過ぎて疲れる。
そう思った。
「あ」
次郎の困った顔の笑顔が凍りついた。
「ああ?」
その変化に自然と呼応して脅すように怒鳴る大吉。
次郎が引きつった顔で『後ろ、後ろ』と指を刺す。
それに大吉が気づき後ろを振り向こうとした時だった。
「いいかげんにしなさい!」
キリッとして、そしてハスキーな声が響く。
「だ! こらっ!」
大吉は威圧に対して、反射的に動く癖がついている。
すばやく体をくるっと回し体を一八〇度回転させた。
後ろに立ていた長身の日之出中尉の胸が目の前に現れ気負される。それも一瞬のことで、大吉は負けてたまるかと、逆に一歩詰めよろうと足を踏み出した。
が、それは結局できなかった。
バランスを崩したからだ。
何かに躓いた。
足。
一瞬だった、ニヤける綾部が、サッと足を伸ばし彼の足をひっかけたのだ。誰にも気づかないぐらいその動作は一瞬のことだった。
そして何食わぬ顔のまま、楽しそうに目の前のショーを観戦し続ける。
「うわあああ」
大吉は情けない声を出した。
転ぶのが怖かった訳ではない。
今の体勢に対して叫ぶしかなかった。
顔がとても柔らかいものの間にうずもれていた。
「で、何?」
その光景を見ている他の新入生も凍るような冷たい声が大吉の頭上から降ってくる。
「え、あ、いや」
彼は耳まで顔を真っ赤にしている。
早く顔をどけなければいけないと頭では分かっている。わかっているが、パニック状態のため、そこから動こうにもどうすることもできない。
彼はつま先を伸ばしたままなんとか倒れないようと、日之出に寄りかかっていた。
結果、彼女の胸に顔を挟み込むような形でしがみ付いてしまった。
日之出がため息をつく。
怒ると言うよりも呆れた顔をしていた。
彼女はばたばたする大吉の頭を持ったまま、ひざをつくようにして姿勢を低くした。
彼も同様にひざをついて、やっと体のバランスを取り戻す。そして彼女からなんとか離れることができた。
さっきまでも威勢はどこに行ってしまったのか、赤面し呆けた顔をしている。
「いい?」
「え?」
いい、と聞いた日之出は笑顔だった。
「口を閉じる」
「は、はい」
まだ顔が赤い大吉は素直に頷く。
「歯を食いしばる」
「え?」
小気味のいい音だった。
見事な平手打ちが炸裂し、彼の顔に手のひらの型が作られた。
うわぁ……痛そう。
そこにいた新入生や綾部軍曹、みんなが声を出さずに呟いた。
「これは暴力じゃない、報いを与えただけ」
と、日之出がぶたれた頬を抑えたままの大吉を見下ろして言い放った。
そして少し体を屈めて耳元に口を近づける。
――えっち。
と囁いた。
蒸気が吹き出るぐらいに赤面した大吉が崩れ落ちる。そして頭を抱えて四つん這いになり、いわゆる反省のポーズをとっていた。
彼はピュア過ぎた。そして、大人のお姉さんに弱かった。
大吉撃沈。
そんな大吉を尻目に、彼女は次の標的に向かう。ベンチに座っている男の前に仁王立ちになり、それを見下ろした。
この男、まじめに仕事をする気概はあるのかと言う目。
綾部はその目を見て、遊びすぎた、あちゃー、こりゃだめだと観念した。
「綾部軍曹。この騒ぎについて説明」
二回目ともなると、さすがに怒り心頭。彼女の目は充血し、唇が痙攣している。
「いやー、つい、活きのいい坊主を見ると」
「ああ?」
「可愛くて、からかいたくて」
ゴン。
座っている綾部が背筋を伸ばし縮こまる。思いっきり打ち付けるようにして彼女の左手がベンチに置かれたからだ。
「いいかげんにしろ」
「す、すんませんっしたっ」
その後、彼は新入生を目の前にして、彼女から説教を受けることになる。
羨ましそうに見る数人の男子と、恐怖を感じている数人の男女、そして関わりたくないような顔をする女子の目が痛い。
大吉なんかは、その後姿を呆けた顔で見つめ「モチモチ……いい……」なんて呟いている。
だいぶ後遺症が残ってしまったようだ。
説教は十分ほど続き、その間に本日到着予定である最後新入生がやってきた。
長身眼鏡の彼は無言でその光景を見た後、何事もなかったかのように新入生の列に入る。
彼は宮城京と名乗った。
プンスカしていた日之出もさっきの十分間で綾部に出し尽くしたのだろう。
さっきまで尖りに尖っていた険のある声も取れ、穏やかなハスキーボイスで点呼をとっていた。そして、全員がそろったのを確認して、駐車場の方へ誘導する。
先頭の日之出達が駅の外に出た時だった。
まぶしい日差しが彼女たちを包む。
北陸にしては珍しく晴天の今日。
春だというのに日差しがまぶしい。
次郎は手をかざして、日光を遮ぎった。
「晶ー、遅ーい、こっち、こっちー」
軍用トラックの前で日之出と同じ中尉の階級章をつけた女性将校が、右手を高く上げてぶんぶん振っている。
晶とは、日之出中尉の名前である。
「真田中尉ー、遅くなりました、すんませーん」
その真田中尉にヘラヘラしている綾部が手を振り返した。
カツ、カツ、カツ。
晶は普段よりも靴音を響かせながら早歩きで進む。
もちろん不機嫌な顔をして。
途中、手をひらひら振っている綾部の手を蝿叩きのようにして叩き落した。それからずんずんと彼女に近づいていく。
そして、至近距離で止まった。
すぅ。
晶が息を短く吸った。
そして振り下ろされるチョップ。
次の瞬間頭を抑えながら真田は後退りした。
「鈴! 新兵が来ているんだから! 最初ぐらいは陸軍軍人らしくしないか!」
鈴とは、真田の名前である。
「痛ったぁ……晶の意地悪、オニ」
涙目で鈴が抗議する。
この二人は陸軍士官候補生学校での同期、一般大学から入った鈴に対して、晶は軍隊の大学――統合士官学校――出身であるが、陸軍士官候補生学校で二人は意気投合し、こういう仲の良い関係になっている。
一般に統合士官学校出身の者はお硬く、一般大学出身者は柔らかいイメージが強い。
「今日ぐらいはぴしっとしてよ」
口を尖らす晶。
それは喧嘩しているような雰囲気ではない、お約束の漫才を見ているような光景だった。
軍用トラックの周りがほんわかした空気に包まれる。
さっきまで威勢のいい事を言っていた大吉なんかは尻尾を振る犬みたいな目で日之出を見ている。同様に次郎も少し緩んだ顔をしていた。
そんな男子の姿を尻目に風子は心から呆れた表情で、声を出さず『お子様』と呟いていていた。
どいつもこいつもいつまでたっても年上のお姉さんから離れることができない男子達に対してため息をつきたい気分だった。
ふと、変な気分になる風子。
一瞬、クラッとした。
すごい違和感。
なぜなら、今からいくところは軍隊なはずなのに、何かが違うからだ。
――この雰囲気……本当に軍隊? 違わない?
と疑ってしまう。
風子のイメージは映画とかで見たことがある軍隊だった。
――行くであります!
――そうであります!
――了解であります!
ビシィィィッ!
という感じだ。
想像していた環境とのギャップが激しぎて、少し混乱していた。
――軍隊でしょ……軍人でしょ……もっとこう、ビシッバシッで一切余裕のない緊張感がないといけないんじゃない。
そう勝手に思いこんでいた。
もちろん映画、テレビと本から取り入れた知識で作りあげた勝手なイメージというのは本人も重々承知している。
でも、それにしても違いすぎませんか、と。
だから、呆れる。そしてイライラするのだ。
不真面目そうな軍人たちとほんわかする雰囲気に包まれたこの場が。
私たち軍人になるのよね。
ちゃんとした軍人にしてくれるのよね。
と、風子は思うと同時に、自分の適応力の凄さに驚いた。なんだか、入る前から軍人というのに染まってきているではないかと。
彼女はなんとも調子がずれる不安を胸に、軍用トラックの後ろの荷台に近づいていった。
新入生達はそのまま軍用トラックの荷台に乗せられ、学校に向かっていた。
トラックの荷台は、両サイド向かい合うように座席――木製のベンチのようなもの――があり、周りは布幌布に囲まれている状態だ。
後ろがポッカリ開いているのでそこから、遠のいていく風景を見ることができる。
風子が外を見ていると、生まれ育った舞鶴よりもずいぶんと都会な金沢の風景が流れていった。なんにしても、都会に住めるというのは、うれしいことだと思った。
香林坊とか金沢の繁華街でぶらぶらと歩きたいところも事前に調べている。
そうだ、これだ。
この町には私の高校生活の楽しみが詰まっている。
今日から三年間、この金沢の風景に詰まっていた。
憧れの都会。
その希望が流れていく。
あれ? どうして?
時間が経っていくと『あこがれ』が流れて行ってしまった。
気づけば田んぼ。
川。
田んぼ。
のどかな風景が続く。
ま、バスに乗れば行ける距離だから、と風子は自分に言い聞かせる。
そうでもしないと、とてもじゃないが、こんな動物園みたいな軍人や同級生がいるような学校で三年間も過ごせるとは思えなかったからだ。
不安になる彼女は、隣の緑に視線を動かした。
彼女は目を伏せながら、隣を気にしているようだった。ちらっちらっと隣の男子――上田次郎――を見ている。
「どうしたの?」
そう風子が尋ねるが、緑は言葉を濁して返事をするぐらいだった。
風子が訝しげに緑の方を観察していると、その理由が判明した。
次郎が緑の肩に寄りかかっているのだ。
風子は「乙女の柔肌にその汚い頭を乗せるとはっ」と激高しそうになるが、緑がじっと耐えてる姿を見て、言うのをやめた。
また、こんなところで騒ぎを起したくない。
これ以上、あの日之出中尉を怒らせると、大変な事になることは想像できた。だから、なるべく穏便に済まそうと思ったのだ。
とりあえず状況を再確認。
次郎が寝ている、無意識に頭を緑の肩に乗せている。そして緑は起きている。
風子はチーンと頭の中で音がしたと思った。
アイデアが浮かんだのだ。
そう、寝てるのを起せばいい。なーんだ単純じゃないかと。
さっそく緑に「頭が乗ってきている肩で頭を突いて起こそうよ」と耳打ちする。
手で肩を叩いたほうがいいんじゃないだろうかと思うが、女子が男子の体に触れるなんて恥ずかしくてできないと思う風子なのである。
さっき、十分次郎と触れ合ったばかりであるが……。
緑はコクリとうなずき肩を揺らす。
すると、眠りこけた次郎の頭はその揺らしにより肩から抜けて、そのまま横に倒れるようにして緑のひざの上に頭が乗りそうになった。
これはいけない、乙女の一大事。
「あちょー!」
風子の気合一閃。次郎の脳天にチョップ。
はっと目を覚ます次郎。
何が起こったのかよくわからないが、頭が痛いのでそこをさする。きょろきょろするが、緑も風子もそっぽを向き、完全に無視した。
次郎は一瞬だけ考えるが、何事もなかったかのように眠る。
今度は右隣の眼鏡をかけたクールそうな学生――宮城――にもたれ掛った。
そんな風景で小一時間
トラックは揺れる。
クッションも何もない、板だけでできている荷台の座席。そのせいで、少年少女達のお尻は痛くなっていた。
こんなトラックに乗るのは初めてだから。
得体の知れな不安があふれそうになる。
そして、不安を抱えながらも、なんとなく、何をやっても、なんとでもなる予感がしていた。
よくよく考えるとお堅い世界だろう思っていたのに、思ったよりも楽しそうな世界じゃないかと。
あんな変な大人達がいる学校。
けっこう楽しめるかもしれない。風子はそう思いなおした。そして、自分の心境の変化にびっくりしていた。
ずっと後ろ向きだったあの町、あの中学校から離れただけで、こんなに前向きになれるとは思っていなかったからだ。
新しい生活。
少しだけドキドキしていた。