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幻獣に注意せよ!  作者: 羽根 守
第1話 入学式には幻獣に注意せよ!
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第1話 入学式には幻獣に注意せよ! その4

 幻獣さんはヒトと見分けが付かないぐらい人間になっている。

 始めて幻獣さんを見たのは、幻獣界の代表、アル・カウンという幻獣をテレビで見た時だ。

 見た目は普通の青年であって、幻獣も人間と変わらないと思った。

 ただ、その普通の青年が年取った政治家と握手していたのはあまりにも違和感があって今でも記憶にある。

 幻獣さんはヒトと同じ姿をしている。それを強く実感したのはこの海原舞と会った時だった。

 

 空木学園内へと入ってきたオレたち、靴からスリッパを履き替えて、1年2組の教室へと向かう。

 舞はオレの後を物静かに付いている。

 物静かであまり喋らない、物事に関心のないコなんだろう。

「ねえ、海原さん」

「舞でいい」

「じゃあ、舞さん。ホントに幻獣なの?」

「うん、幻獣」

「何の幻獣」

「リヴァイアサン」

「リヴァイアか。リヴァイアっていったけ」

「サンが足りない。リヴァイア“サン”」

「リヴァイアサンね。リヴァイアサン……」

 ――って、リヴァイアサン!?

「リヴァイアサンって! 大海竜の幻獣!!」

「うん、それ」

 ネームバリューのデカイ幻獣とまた遭遇か!!

「ホントに、リヴァイアサンのリヴァイアサン!?」

 あまりの興奮でオレの言動がおかしくなっている。

「うん」

「そうなんだ。へぇー」

 オレは興味深く、舞の身体を見る。

 舞は身体の線が細く、リヴァイアサンの人間化と言われても納得できる。ただ、大海を泳ぐ大海竜というよりも、市民プールで泳ぐ女のコみたいな感じだ。

 けれど、このコには威厳と言うものがある。ヒト型に変身していても幻獣の威厳がジンジンと伝わってくる。

「あまりジロジロ見ない」

 視線をずらして、もじもじする。

「あ、ゴメンゴメン」

「人間って、そんなに幻獣に興味あるの?」

「多分、オレだけじゃないかな。幻獣って聞いたら、みんな怖がると思うし」

「やっぱり、そうだよね」

 舞は目を下にする。

「でも、幻獣は人間と同じ姿をしているから本来の力とか使えないはずだろう」

「そだね、使えない」

「なら、大丈夫。銃を持っている人間が友だちになろうと言っても信じられないけど、何も持っていないのなら大丈夫だろう」

「大丈夫?」

「そう大丈夫だ」

 そんなことを話していると、1年2組の教室へと着いた。

「ここだな。1年2組は」

 舞はオレの横を通る。

「ありがとう。感謝感謝」

「ああ」

「もう一つ道を尋ねたい。プールは何処?」

「プール!?」

 オープンキャンパスでプールっぽい建物のイラストの入った地図を見たことあるが、さすがに場所までは。

「知らないのか」

「記憶にあるだけで、道までは」

「記憶にあるのなら行けるはずだ。連れてけ」

 舞は強引に催促する。

「わかったわかった。行くよ行くよ」

 オレと舞はせっかく1年2組の教室まで来たが、プールへと向かって、回れ右をするのであった。


 プールのある建物の前にたどり着く。

 空木学園のプールは屋内であり、年がら年中利用することができる。

 さすがに今日は入学式であって静かである。

「中、見せてもらえるかな」

「さすがにダメだろう」

「そうか」

 舞は残念がる。

「舞はプールで泳ぎたいのか?」

「プールで泳ぎたいというか、世界を泳ぎたい」

「世界?」

「わたしが人間界へと来たのは、あらゆる海と川、湖を泳ぐため」

 全世界に川と湖はいくつあるんだろうか。

 一日一箇所泳いだとしても、寿命が尽きそうだ。

 いや、その小柄な身体で海を渡り切れるのだろうか?

「幾らなんでもそれはムリだろう?」

「ムリじゃない」

「いや、ムリだよ。幻獣のままの姿ならまだしも、ヒト型になっている幻獣さんなら途中で溺れるにきまっている」

「わたしには裏ワザがあるから大丈夫」

「どんな裏ワザだ?」

「それは……言えない」

「言えない裏ワザは裏ワザじゃないぞ」

「そうだね。裏ワザじゃない」

 いったい何を隠しているのだろうか、舞は。

 まさか、ペットボトルが浮き輪代わりになるとかそういう裏ワザを?

 いやいや、そんなショッパイレベルのものが裏技になるはずが……。

「枕野相治。喉渇いた。飲み物ない?」

「やっぱり、ペットボトルかよ!!」

「何言ってる。わたしは水飲み場が何処にあるか聞きたいのだけど」

 ホント、何言ってたんだろう、オレ。

 ……ボケを求めているのか。

「多分、水はこの近くにあると思う」

「わかった。探してみる」

 そういうと、舞はプールの建物の前から立ち去る。

「わたしが水を飲むとこ、見ないで」

 変なところを恥ずかしがっている。

 幻獣さんはホントに不思議な生き物である。


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