第2話 模擬戦①
ミーア王国関所
「ここまでありがとうございました。あとでここに来てください。」
少女は俺とヤミにお礼を言うと一枚の紙を渡してきた。
「私はここで・・・」
少女は俺たちに一礼すると嵐のように去っていった。
「「・・・・・・」」
俺とヤミはそれに目をビー玉のようにしてそれを見ていた。
「とっ・・・とりあえずはギルドに行くか。」
「そう、じゃな。」
「おーい!!ナチュラルに入ろうとするな!!」
俺とヤミが街のなかに入ろうとすると厳つい男の門番に腕をつかまれて役所へとつれていかれた。
「おまえら、ギルドカードは?」
「「ない!!」」
役所につくなりいきなりカール(男の名前)にそう聞かれたのでないと言って事情を説明した。
「とりあえずは通行許可書をとってくるからそれを持ってギルドに行け。」
カールはそう言うと奥に通行許可書二枚を取りに行った。
「名前と年齢を書け。」
俺とヤミはカールに言われた通りに名前と年齢を書いた。
「ギルドへの行き方はここに書いてある。」
カールはギルドの行き方が書かれてる部分を指差すとそう言った。
「どうも・・・」
「どうもじゃ・・・」
俺とヤミはカールにお礼を言うとギルドへと向かった。
しばらくして・・・
「ここか・・・」
「たしかに・・・デカイのうι」
俺とヤミはギルドの大きさに圧倒されていた。
「どうも~冒険者登録をしに来たのですが。」
「はーい、今行きます。」
俺が冒険者登録をしたいと言うと奥の部屋から慌てて黒髪の大和撫子がやってきた。
「ここに名前を書いてください。」
俺とヤミは名前を書く欄に名前を書くと隣の小さい皿に血を一滴垂らした。
「しばらくお待ちください。」
手続きを終えるとまた、部屋の奥に行った。
「リュウさんとヤミさんですね、登録完了です。」
「ところでなんでこんなに冒険者が少ないんです?」
俺とヤミはギルドカードを受けとるとギルド内に冒険者が少ないことを疑問に思い、受け付け女にたずねた。
「それはですね・・・「てめぇみてぇな貧弱野郎が多いからだよ!!」・・・」
受け付け女が説明をしようとしたらごっついおっさんが割り込んできて俺を指差して笑ってきた。
「・・・」
「お主め・・・黙っておれば!!妾が噛み殺してくれるわ!!」
俺が黙っているとかわりにヤミがキレて今にも噛みつきそうになっていた。
「・・・やめろ。ヤミ、ここで騒ぎを起こすのは不味い。」
俺はこの場を丸く納めるためにやんわりとヤミにそう言った。
「おいこの腰抜けが!!」
・・・気分がかわったこのおっさんを殺す。
「・・・黙れ。くそが」
俺が挑発をすると・・・
「このクソガキガァァァ!!」
案の定キレて刀を抜きやがった。
「刀を抜いたからには死ぬ覚悟は出来てるよな?」
俺は振りかざしてきた刀を受け止めるとそう言って男の腹に一発蹴りを入れて転ばした。
そして・・・刀を弾き飛ばして俺は愛刀『紅桜』を抜いて男の顔面の隣に突き刺した。
男はだらしなく泡を吹きながら気絶した。
俺はそれを確認すると『紅桜』を鞘に納めた。
「フォッフォッフォ!!今のは中々な腕前よ。」
俺とヤミの視界に突然おっさんが入り込んできた。
「ギルドマスター?どうしてここに・・・」
ギッ・・・ギルドマスター!?このおっさんが?
「ん?ああ、そこの少年を水晶で見てて直々に試してみたくなったのだよ。」
おっさんはどこから出したのか水晶を出してきて見せた。
「・・・これは魔法水晶ですか。」
受け付け女は魔法水晶を手に持つと始めて魔法水晶を持ちました!!と言ってやや興奮ぎみだった。
「・・・!(なんだよ。このステータスは!!)」
俺はギルドマスターのおっさんがどのくらいの実力なのかステータスを見て驚いた。
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ジニアス=ジョン
男
Lv 測定不能
能力値 測定不能
ーーーーーーーー
・・・結局、わかったのは名前だけか。
「フォッフォッフォ!!儂のステータスを測るのはS級の冒険者でも不可能じゃて」
俺が『観察眼』を使ったのがばれていたのか。
なんだ、この全身から嫌な汗が吹き出す感じは・・・
「フォッフォッフォ!!警戒しなさんな。」
「・・・っ!!妾が相手をしてやるわ!!」
ヤミがやせ我慢をしてそう言った。
「やめろ。今の俺たちじゃ勝てない」
俺はそれを右手で制すると静かにそう告げた。
「フォッフォッフォ!!今のとは面白いわ。」
ギルドマスターは高笑いすると奥へと消えていった。
「あっ、待ってくださいよ~」
受け付け女は水晶を忘れてますよ~と言うと慌てて追いかけた。
「「・・・」」
俺とヤミはそれに唖然としていた。
「・・・とりあえず、王宮に向かうか?」
「そうじゃな。」
☆☆☆
「なんか急に緊張してきたな・・・」
「そうじゃな・・・」
俺とヤミは王宮に入るなり緊張してきた。
「お前がリュウだな?」
「・・・そうだが。」
「ついてこい・・・」
俺とヤミは鎧を着た兵士のあとに続いていった。
「ここにミーア国王がいる。粗相だけはするなよ?」
兵士はそう言うと扉を開けた。
「お初目にかかります。国王様」
俺が国王にそう言って跪くとヤミも慌てて跪いた。
「貴殿が勇者リュウ殿だな?」
「私が勇者であるかはわかりませんがリュウであることは間違いありません。」
「そう畏まるでない。貴殿が勇者なのであるからな」
国王はそう言うと頭をあげさせた。
「国王、私から提案が・・・」
兵士はそう言って国王の耳元でなにかこそこそと話していた。
「フムフム・・・なるほどのう,よいではないか!!」
「「・・・・・・?」」
俺とヤミはなにがなんだかわからず首を傾げた。
「勇者(仮)殿、こらから模擬戦をしますのでついてきてください。」
「・・・はぁー!?」
ちょっ・・・まじか!!
などという俺の心の叫びと裏腹に兵士が円形闘技場の前へと連れていった。
「つきました。私は準備があるので・・・」
そう言うと兵士は闘技場の中へと入っていった。
「妾は観戦させてもらうとするよ。」
ヤミも観戦を楽しみにしてるよと言って闘技場の中へと入っていった。
「はぁ・・・仕方ないか。」
やれやれと溜め息を付くと俺は闘技場の中へと入った。
☆☆☆
「・・・準備はできてますね?勇者(仮)殿」
兵士は手に握られた90cm位の柄に刃身60cmで菖蒲造り・・・所謂薙刀を構えるとそう言った。
「ああ・・・(殺す気か?俺のことを)」
俺は警戒を怠ることなく構えた。
「いきます!!」
「・・・!(早い!!)」
俺は兵士のあまりの速さに驚きを隠せなかった。
「さすがですね。今までこの『狼牙』の速さを交わせたのは先代国王とお爺様だけです。」
兵士は俺が交わせたことに感心して次の構えをしていた。
「ならば・・・これを、『狼牙突き』!!」
「天墮家武闘術壱乃型・・・『龍拳』!!」
兵士の狼のごとき速く鋭い突き技と俺の武闘術がお互いにぶつかり合い周りのギャラリーどもはおぉ!!という歓声をあげた。
「やるな。名前は?」
俺は強敵との戦いでは相手の名前を聞くという天墮家の古いしきたりに則って兵士の名前を聞いた。
「アネモネ・・・ミーア王国護衛兵隊隊長だ。」
なるほど・・・護衛兵隊隊長か。通りで強いわけだ!!
「護衛兵隊隊長相手ならこれかな。天墮家武闘術弐乃型・・・『龍対拳』!!」
俺は拳をぐっと強く握ると対をなす龍のようなパンチを繰り出した。
模擬戦②に続く