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セカンド・アース  作者: 九重


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ゴールデンウィーク 7

覇月(おとうと)に何をする!!」


飛び出してきた仲西がその背に覇月を庇う。

荒岡もその2人の前に飛び出し、剣を抜いて桃と対峙した。


緊迫した空気がその場に流れる。


その様子を見た明哉たちが桃を守ろうとして飛び出そうとするが、桃は片手を上げて、それを制した。


「この状況を見て、第一声が“それ”なのですか?」


冷たい目で桃は、仲西を見据える。


驚いたように仲西は動きを止めた。荒岡も、ハッ!として桃に対する構えを解く。2人は、この状況をもう一度ゆっくりと見直した。


1年の本拠地に何故か居る覇月。

へたり込んでいるその足元には、覇月愛用の”剣”がころがっている。


冷静に現況を見てとれば、“覇月が戦闘中の1年の本拠地に潜り込み、桃に斬りかかった”のだということは、一目瞭然の事実だった。

そして、あえなく返り討ちにあったのだということも。


覇月の性格と桃の性格を考えても、誰が悪いかなどは自明の理であろう。


仲西は、グッと息をのむ。


「しかし!覇月は、まだ中学生で・・・」


「既に成人しています。」


セカンド・アースの成人年齢は13歳であった。

桃は、仲西兄弟を見下げ果てる。


「私は言いましたよね?間違いは間違いとして教えてあげた方が良いと。その時貴方は、彼が自分の“兄”だから注意し難いと答えました。あの時は“兄”で、今は“弟”・・・自分の都合に合わせて、“兄”としたり“弟”としたりするのは止めなさい!そんな風に接しているから、こんな“我儘な子供”になるんです!!」


ぐうの音も出ない仲西だった。



「陛下!!あなたは、また!!」



そこに、遅れて来た剛が飛び出してくる。


「桃!すまない!!」


その場の様子を見てとるなり、剛は桃に向かって頭を下げた。


「剛のせいじゃないわ。」


「公が謝る必要はない!!」


期せずして、桃と仲西の声は、重なった。

思わず顔を見合わせてしまう。


キレイな碧の瞳が桃を見て、静かに伏せられた。



「・・・すまなかった。」



仲西はそのまま頭を下げた。


「度重なる無礼をお詫びします。」


神妙な顔をした荒岡も謝罪する。



「権!公瑾(こうきん)!張公まで!!なんでお前たちが謝るんだ!?」



その様子を見た覇月が怒鳴った。

未だ涙目の少年は、冷たく桃に睨まれて思わずお尻を押さえる。・・・そんな自分に気づいて、ギュッ!と唇を噛んだ。



「長沙恒王さま。」



ゆっくりと剛は、覇月に近づくと、黙って手を差し伸べた。

少しためらって後に、覇月はその手を取って立ち上がる。


張昭は孫策に招かれて呉の重臣となった人物だった。

孫策の張昭への信頼は厚く、死に瀕して弟を頼むと言い残したほどだ。

覇月と剛は、先日再会し、前世と同じように親交を温め直したのだった。


覇月は、そのまま桃を睨んでいたが・・・剛に促され、意を決したように、桃の前に歩いていく。


桃の正面に立って、ブルブルと拳を震わすほどに握り締め、そのまま・・・潔く頭を下げた!


「?!」


「!!覇月・・・」



「俺が!悪かった!!!」



それは、謝ると言うよりも、まるで、怒鳴りつけているかのようだった。


・・・それでも、謝罪は謝罪だ。


仲西は驚いてポカンと口を開ける。


・・・覇月が他人に対して謝っている姿など、ここ1年間見た事がなかった。


「俺は!!・・・俺は、安定していないのだ!!昨日も張公にそう指摘されたし、自分でもそういう自覚がある。」


覇月は、桃に向かってそう怒鳴ると、自嘲するかのように口元に皮肉な笑みを浮かべた。

それは、可愛い中学生には酷く不似合いな笑みだった。


「俺は、昨年記憶を取り戻してから、ずっと怒りに駆られている。・・何故、権や公瑾より遅れて生まれてしまったのか!?何故、こんな体なのか!?考えれば考える程腹の立つことばかりで・・・だが、それをお前にぶつけるのは間違っていた!それは、謝る。」


偉そうなセリフは、それでも(まご)う方なき謝罪だ。


桃は、その姿に苦笑した。


遅れて生まれた孫策は、焦っていたのだろう。


「桃、長沙恒王さまを許してさしあげてくれ。」


おそらくその気持ちが一番よくわかるであろう剛が口添えしてくる。



「・・・謝罪を受け入れます。」



桃は静かにそう言った。

目に見えて周囲がホッとする。


「ありがとう。」


剛の礼に、桃はニッコリ笑って、気にしないでと返した。

仲間に対して気を許した、たいへん可愛い笑みだった。



・・・何故か、その桃の笑顔を見て、覇月が動きを止める。

覇月の頬は、みるみる赤くなった。



「気に入った!」



突然、覇月が叫ぶ!


「え?」


「兄上?」


「今の笑顔が気に入った!俺を打ち負かすほどの武の持ち主なのも良い!“桃”といったな?・・・お前、権は止めて、俺の妻にならないか?」


(え?いや?!ちょっと!!)


止めるも何も、仲西とはそんな仲では決してない!

それに、この我儘中学生の妻になる気なんか毛頭なかった。

呆気にとられて返事のできない桃に、更に覇月はたたみかける。


「よく見れば、可愛いじゃないか?“桃”お前は、権の妻には勿体ない!俺の妻になれ!!2歳年上くらい俺は気にしないぞ!」


いいな?!と上機嫌で覇月が覗きこんでくる。


(良いわけあるか!!)


桃は、心の中で怒鳴る!!


「なっ!?」

「兄上!!」

伯符(はくふ)!!?」(伯符とは、孫策の字である。)


2年陣営の叫びと・・・


「このっ!!」

「子供と思い、甘く見ていれば!!」

「殺す!絶対、殺す!!」


1年の殺気に満ちた怒声。



その場はあっという間に、大騒乱になった。



(本当に!!困った子!!!)



心の内で桃は、叫び声を上げた。

すみません。少々短いです.


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