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世界観

 誰もが前世の記憶を持つ世界・・・セカンド・アース。


だから誰もが知っている。

この世界は地球ではないと。

そっくり同じ大陸の形、島の形。同じ環境、同じ動植物。


・・・それでも違う。


そもそもの地球の人間は、前世の記憶など持っていないのだから。


何故こんな世界があるのか誰も知らない。


“神のみぞ知る”と言ったのは、自分の前世はソクラテスだと自称する哲学者だった。

“人間には限界があるが、限界があるなりに知の境界を徹底的に見極め、人間として分をわきまえつつ最大限善く生きようと努める”のだそうだ。

要するに、何だかわからないけれどここで生きているからには生きる努力をしようということではないだろうか。


もちろん、それ以外なす(すべ)はなかった。


この世界の人間は当たり前に生まれて、13歳の誕生日に前世の記憶を取り戻す。


・・・前世の記憶というものは、実にやっかいなモノだ。

考えてみてもらいたい。

13歳の子供に、例えば、ある日突然80歳で死んだ前世の記憶が(よみがえ)るのだ・・・。

人間80年も生きていれば、平凡な一般人だったとしても大声で言えないあれやこれやの記憶はあるだろう。80年ではなく30年だとしても、似たようなものである。


しかも中には平凡な一般人ではなかった者もいる。


歴史に名を残すような有名人。


あるいは・・・犯罪者。


自分の前世は選べないのである。

敬虔(けいけん)なカトリック信者の家庭で育った子供の前世が、お寺の住職だったという事だって有り得るのだ。

そんな場合のショックは想像するに余りある。


故に、この世界では、子供は13歳になるまでに徹底的な教育を受ける。


“前世と現世は違う”のだと。


でなければこの世界の人間は生きていけない。


法律の上でもそれは徹底されていた。

この世界では、人は13歳で成人とみなされる。前世で子供の内に死んだ者でも例外は無い。


前世の記憶を背負った瞬間から、人は大人になる。

大人としての態度と責任を求められる。


法律は謳う。人は、前世で持っていたあらゆるモノを継承できないと。

身分も、財産も・・・功績も、罪も。

全てを捨てて1個人として生き直せと。

人間関係の強要も行ってはならない。

いくら前世で近しい家族でも現世では他人だ。夫婦であったとしても、それを理由に嫌がる相手に関係を迫る事は、してはならないのだ。


ありとあらゆる法律や一般常識が前世を理由とした犯罪を禁止していたが・・・それでも悲劇は起こる。


法律上何も引き継げなくとも、否が応でも引き継いでしまうのだ・・・記憶と、感情を。


前世で無残に殺された者が、その犯人の生まれ変わりを目の前にして復讐をせずにいられることは・・・少なかった。


この世界で一番死亡率が高い年齢は、13歳だ。

自殺も他殺も群を抜いている。



・・・この世界は、(いびつ)なのだ。



悲劇と、喜劇を含んで、ゆっくりと回る。

前世を引き摺るなと説きながら、多かれ少なかれ引き摺らないではいられぬ過去を持って誰もが生きている。



これから始まるのは、この歪な世界で懸命に生きる、普通ではない前世を背負った少女のお話・・・

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