プロローグ
よろしくお願いします。
・・・作者の三国志の知識は、NHKの人形劇+αぐらいです。暖かい目で見てください。
柔らかな布団を幾重にかけても死に逝く体は、もはやぬくもりを得ることはできない。
徐々に熱を失う己の身は、暖かさはもちろんのこと冷たささえも感じられなかった。
(どうして私は、こんなところで息絶えようとしている?)
繰り返し頭に浮かぶのは同じ疑問だ。
何故、こんな柔らかな布団の中で自分は死のうとしているのだろう?
風雨の入らぬ屋内の・・・奥の奥。
窓も無いその部屋の空気は静かに凝っている。
厳重に守られたこの場所で、愛する者に見守られて自分は死に逝く。
何故だ!?・・・と思った。
こんなはずでは、無い!
自分は、こんな穏やかな死を迎えるはずではなかった!!
・・・自分の死に場所は、戦場のはずだ。
猛き軍馬に跨り、雨霰と降り注ぐ敵の弩の矢に射られ、ハリネズミのようになって死に逝くはずではなかったのか?
あるいは、幾人もの血糊に濡れた鉾で体を貫かれるか・・・
もしくは、美しく弧を描く青竜刀に首と胴とを切り離され刀の錆となる運命を予見していたはずだ。
切断された頭部でも己の目は蒼天を睨むだろう。
雨天でも・・・曇天でもかまいはしない。
吹き渡る風に寒さを感じることもできず、目を見開いたまま息絶えるのだ。
大地に頽れた胴は、軍馬に踏み拉かれ、ぐしゃぐしゃに潰れて地に還る。
・・・それが自分の最期のはずだった。
間違ってもこんな当たり前の人間のような最期を迎えるはずではない!!
それは、憤怒のごとき悲哀だった。
数えきれない後悔の最たる悔いに苛まされて・・・前世の自分は、息を引き取った。




