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セカンド・アース  作者: 九重


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オリエンテーション合宿 7

少し短めですが、きりがいいので上げてしまいます。

桃の言葉に明哉以外の者たちが、わからずに首を傾げる。

どうみても戦いの優劣はついて、利長たちの勝利は確実なように見えた。


「そろそろですね・・・」


「そうだな。」


明哉の言葉に桃は頷く。


「私が・・・呂布なら、隙を見て・・・逃げ出す。」


「え?」


桃が逃げると言った途端だった。


串田が、利長と隼が一旦間合いをとった隙を見て・・・赤兎馬を駆って逃げ出した!


「なっ?」


慌てて利長と隼が追いかける。


だが・・・赤兎馬は早かった。


「・・・赤兎馬に2人の馬が追いつけるわけがない。この競技に制限時間があるのかどうかわからないが・・・どうあっても勝負がつかないと判断されればその時点で競技の終了が宣言されるだろう。」


「そうなれば3人共に優勝でしょうか?何はともあれこの段階で串田の負けはなくなりましたね。」


桃の言葉を明哉が肯定する。


翼たちはあっけにとられた。


確かに教師は最初に、逃げるだけでも勝ちだとは言ったが・・・


「大丈夫だ。兄哥が簡単に諦めるものか。いくら赤兎馬だって2人で追い込めば・・・」


翼の言葉に・・・桃は頭を横に振った。


「それでは・・・呂布の思うつぼだ。」


「え?」


「そうですね。このまま引き分けに持ち込むのが最善の策でしょう。・・・下手に追い込めば、誘い込まれる。」


そう言って明哉が指差す先は、馬場に作られた小高い丘だった。


おりしも利長と隼は、それぞれ別方向から串田を追い込んでいるところだった。


挟撃する形で、串田を追っているように見えるが・・・間違いなく3騎は、明哉の指差した丘に向かっていた。


「!!」


明哉の・・・孔明の言ったとおりになる展開に、翼たちは声も無い。


「丘の頂上にいるモノに迫って行く時、反対側から近づいてくるものの姿は見えない。」


「ギリギリのタイミングで身を(かわ)せば・・・」


まるで予言をしているかのようだった。


言葉どおり小高い丘の頂上に追い詰められた串田に対し、前後から利長と隼が迫る!


「いけない!兄哥!!」


流石に、これから起こる事態を察した翼が叫ぶ!!


・・・しかし丘は遠く・・・何もかもが遅すぎた。


見る見る近づいて・・・あと一歩で襲いかかるというタイミングで・・・赤兎馬が地面を蹴った!!


赤い馬体が空を駆ける!!


赤兎馬と串田は信じられぬような距離を跳び・・・無事に丘の下に着地した。


「?!」


(たま)らなかったのは利長と隼だ。


突如消えた目標と、目の前に現れた味方の姿に思いっきり手綱を引き、馬を急停止させる。


馬は・・・棒立ちになった。


なんとかしがみついた利長は落馬せずに済んだが・・・隼はこらえきれずに落馬する。


馬を宥めながら、呆然とその様子を見ていた利長の背後に・・・いつの間にか串田が回り込んでいた。


「兄哥!!」


素早く近づいた串田は、軽くトンと槍の穂先で利長の肩を突く。


驚き振り返った利長は自分の肩に真っ赤な染料が付いているのを見つけた。


・・・まるで、血のようだった。



「競技終了!優勝5組串田!」



体育教師の声が高らかに宣言する。


・・・2位と3位は、隼の落馬の責任が利長にあったかどうかを協議した結果、その前の串田が逃げたことも含め仕方のないことだったとして・・・2位を利長、3位を隼とすることと決まった。

翼は、明らかに串田が利長と隼の落馬を狙ったのだと抗議したが、追いかけていたのは利長と隼の方だったので、この抗議は受け入れられなかった。


順位を告げられても・・・利長と隼は、まだ呆然としていた。



「・・・悪かったな。」



そんな2人に串田が声をかける。


「どうしても勝ちたかったからな。手段を選んでいられなかった。」


利長は・・・ハッとした。


「いや・・・俺たちが甘かった。負けは負けだ。戦場ならば殺されていた。文句は言えない。」


「バカを言え、戦場だったらお前たちが、あんな手ぬるい戦い方をするわけがないだろう?落馬させずに突くことに、こだわってくれたから俺だって(かわ)せたんだ。戦場なら挟み撃ちをされた時点で俺は殺されていたさ。」


冷静に分析する串田に・・・やっぱり負けだなと利長は思う。


利長も隼も、桃のために勝とうとして焦り過ぎていたのだとようやく分かった。


利長は串田に手を差し出す。


「今度は、轡を並べて戦いたいものだ。」


「まったくだ。お前らみたいな手ごわい相手を敵に回すのは勘弁して欲しい。」


串田は、利長の手をがっちり握り返した。


「まだ、明後日の模擬戦が残っているぞ。まあ、勝つのは俺たちだがな。」


隼もそう言って、串田に手を差し出す。


握り返してきた串田にちょっと笑って、俺にも妹がいるんだと話した。

串田は目を見開いて・・・笑って自分の弟妹の自慢話を始める。

負けずに隼が妹の話をして・・・話題は利長の兄弟にも及ぶ。

利長が自分には姉がいるだけだと話すと、なんだ弟かと笑い合う。


3人は、すっかり仲の良い友人同士のように馬上で笑い合っていた。




「まあ、仕方ありませんね。それでも彼らは2位と3位です。上出来でしょう。」


遠目にその様子を見ながら明哉が分析する。

翼は、まだ不満そうだった。




個人戦が全て終わり、点数は・・・


1組  1,034点

2組  1,015点

3組  1,008点

4組  1,015点

5組  1,028点


となっていた。


1位の1組と最下位の3組の差は26点。

まだまだ最終競技の模擬戦の結果次第では、どこが優勝するかわからない点差だった。



「勝負は、団体戦です。」



どこか嬉しそうに、明哉は言った。

次回、まさかの大穴、許褚さま登場!

許褚さまファンの方お待たせしました。(いるんかそんな奴?!)

来い!万馬券!!(・・・・・・)

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